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ちょっとしたことをビジネスにつなげるということが苦手な印刷業だが、大規模な設備導入をしてのビジネスよりは遥かにリスクが少なく、効果は大きい。
印刷技術が新規ビジネスにつながるというと、プリント基板技術への応用展開や有機ELの製造技術的なものを連想しがちだが、今ある技術でもクライアントの考えていることを理解し、適切なサジェスチョンを行い、一緒に汗をかくことで別次元のビジネスに発展するものである。
2月4日午後の基調講演はそんな内容を揃えてみた。
技術的な知識を紹介するのではなく、どういうようにビジネス化することまで意識したつもりである。
スピーカーとして登壇いただく羽金先生(独立行政法人国立病院機構栃木病院臨床研究部長)は、独学でカラーマネージメント技術を研究され、印刷会社にも無いような積分球の測定装置まで自作して、色を数値化しようと努力されていたのである。カラープリンタの色が合わないということで、誤差表(この色ならコレくらいにプリントされるという経験則の値)まで用意して印刷していたくらいだ。そこに印刷関連技術や分光撮影&レタッチ技術を応用することで、驚くほど簡単に色が合うことを示し、今まで疑問に思っていたことが、印刷関係者と接することで一挙に解決したという実例をドキュメンタリータッチで紹介したい。
モニターキャリブレーションやプリンタのちょっとした設定で見違えるようになるのは、普段の仕事(印刷業)でもそうなのだから、素人の方には大きな驚きのハズである。先生はとうとう多色印刷によるメタメリズムの軽減にも興味を持ってしまい、現在では多色広色域印刷で胆道閉鎖症チェックの用のカラーガイドを作成したいと強く希望されている。このように生まれたビジネスは価格競争等には無縁で、特に少子化時代には「これで新生児の命が救える」という黄門様の印籠に異を唱える人などいない。カラーガイド等の対価は現代の印刷基準からすれば天国のような価格である。
「どのようにデマンドが生まれ」「どのように対処したからビジネス化した」というのは、印刷業にとって、特に色品質をビジネスの柱にしている印刷業にとっては考えさせられる内容である。
難しい話は抜きにして、印刷会社に最適<やるべき<必修のクロスメディアがデジタルサイネージだと思う。電子POPと考えればビジネス領域だって印刷業界だ。動画だって4コマ漫画的なモノの方が、デジタルサイネージらしくて良い?場合だって多い。
広告収入の落ちているTVCMコンテンツ制作会社はもちろんデジタルサイネージコンテンツを狙いに来ることは間違いが無い。しかし、マスメディアを対象としているTVメディアに比べてデジタルサイネージの裾野は、比較できないくらいに広く且つ厚い。そんな市場には地域密着型のコンテンツ制作会社が相当数必要だ。そんな会社に一番近いのが印刷会社だ。こう考えるのがモデレーターである郡司の意見だが、まずはデジタルサイネージとは何なのか?その最前線を市場分析やビデオで短時間に理解できるはずだ。2009年一番ホットなのはデジタルサイネージに間違いは無い。
蛇足だが、動画と静止画の戦いは印刷業に限ったことではない。最近のCF(コマーシャルフィルム)は有名なスチール写真家が撮影することが急速に高まっている。理由は簡単でライティングのレベルが遥かに高く、女性タレントの顔が断然美人に撮れるからなのだ。
一概に一緒には語れないが、印刷業が黙っていることはないと思うのだ。しっかりしたコンテンツ作成は印刷業ならではのものである。電子POPであるデジタルサイネージ1兆円市場のかなりの割合は印刷業が取れると考えるのだが、いかがなものだろうか?AdobeソフトだってCS4からはDTPコンテンツからFlash吐出しが可能だ。「簡単にワンソースマルチユースできるものではない」というのは真実だが、「簡単にやってもビジネスになる」もまた真実なのである。本セッションではまずはデジタルサイネージのナンタルカを理解いただき、モデレーターである郡司が「デジタル印刷との相互強調効果」等の印刷業ならではのちょっとしたアイディアを紹介する。
ちょっとしたことをビジネスにつなげるということが苦手な印刷業だが、大規模な設備導入をしてのビジネスよりは遥かにリスクが少なく、効果は大きい。少なくとも2009年、2010年はこれで行くに限るのではないかと考える。。。