本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
[若手印刷人 リレーエッセイ] 最近、CSR活動を企業の経営理念に取り入れられることが多く見られる。我々若手印刷人の中でも、各団体において研修の内容にCSR概念を加え各企業に落とし込もうという動きになってきている。
中小企業においてはCSR活動を抜きにしては、企業自体の存続に大きく左右されてくるのではないかと思われる。CSRとはCorporate Social Responsibility(企業の社会的責任)であるが、私が考えるCとはcommunityもしくはcommunicationなのではないかと思われる。私も2人の子供の親ではあるが、親として子供とのcommunicationはどうかと考えるとかなり乏しい状況にあると思わざるを得ない。
会社の代表者の立場上、色々な役割が多くなかなか子供との時間が作れないのは事実である。また立場を変えると会社の中では、社長としてはどうだろうか。社員とのcommunicationは十分だろうか。さらには顧客とのcommunicationは十分だろうか。会社のご近所や地域の企業としての役割は果たしているのであろうか。
昨年、県の中小企業が集まって活動をしている団体のイベントで物販をする場面に参加することができた。普段は印刷会社からの依頼が大半で製本加工をして納めている毎日であったが、この時は我々が企画した商品の販売を自ら消費者に提供することができた。今までは、印刷会社や企画したデザイナーの方々が製品の良し悪しを判断され我々は両者の評価が企業としての評価となっていた。しかし、我々の製作した商品は末端の地域の皆様が手にされ使用していただいているということに気がつくことができた。我々のお客様は、印刷会社やデザイナーの方々ではなく、我々の隣や周りに生活しておられる我々と同じ立場の消費者の方々であった。企業はその周りの使う人々の立場にたった商品作りに取り組まねばならない。遅ればせながらも、今取り組もうとしている我々にとっての中小企業が求められているCSR企業とは、各企業のcommunity においてどれだけcommunicationをとることができる企業であるかということではないだろうか。
私が5年前に代表に就任して以来いろいろな業務上のトラブルがたびたび起きている。
これもCSR企業には程遠いからではないかと思われる。私のcommunity においてcommunicationの乏しいのが原因なのではないだろうか。電話においての伝言の行き違い、仕様書においての表記忘れや確認不足、未熟な経験者による不注意からの製品不良、様々なトラブルが次から次へと起きてくる。これもCSR活動が確立されていれば何も問題なく地域から、また消費者から愛される企業になるのではないだろうか。
昨年は電子書籍出版元年とも言われ、今までの紙媒体の情報産業から電子情報産業へと大きく移ろうとしている。このことは、ただアナログ社会からデジタル社会への移行ではなく、community におけるcommunicationからの離脱に繋がっていくのではないだろうか。やはり企業の社会的責任は、地域社会人としての責任ある感情や思い・情報をcommunityに向けて伝えていくことではないだろうか。
我々は地域やさらには、経済人としての責任と誇りを持ち、見聞を広げ模範となる人として周りの方々を幸せにしていく人材に育っていくべきではないだろうか。それが我々中小企業の成し遂げることができる究極のCSR企業の姿なのではないか。
最後になるが、今エッセイに寄稿できるのも今までに寄稿された皆様のcommunication活動の結果によるものである。数年前はオンリーワン企業を目指してがんばろうとも言われていたが、CSR企業を目指すのであれば地域との協働・共存を目指していかねばならない。我々は地域や仲間達から「生かされている」「一人では生きていくことはできない」ではないだろうか。周りの仲間とともに手を取り、皆の幸せのために働いていく。私はひとりの社会人として責任ある行動とともに更なる成長を続けていきたい。