JAGAT Japan Association of Graphic arts Technology


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森裕司のInDesign未来塾 -9-

掲載日: 2011年05月11日

InDesignで実現する美しい文字組み


●写植からDTPへ
手作業で版下を作っていた頃は、印刷までの各工程にそれぞれ専門の作業者がおり、長年の経験によって高品質な製品を作ってきた。文字組みであれば、写植オペレーターがデザイナーの指示をもとに、文字を美しく組んでくれていたはずだ。その後、パソコンを使っての制作に移行していくことに伴い、これまで専門の作業者が行っていた工程をデザイナーが担うことになっていった。いわゆるDTP化だ。文字組みもアプリケーションを使って行うため、デザイナーが行うことになり、ちょっと「???」と首をかしげたくなるような文字組みの印刷物があふれたのは記憶に新しい。もちろんアプリケーション側の問題やフォントの種類が少なかったことも原因のひとつだが、文字組みをきちんと勉強せずにアプリケーションの設定そのままで組んだことも大きな要因といえる。そして、時代と共にアプリケーションも進化していき、DTP化への移行当初のような低品質の文字組みは減った。

●美しく”組む”ためのスキル
とは言っても、写植時代の品質に戻ったとは言い難い印刷物もまだまだ多いのも事実。いくらアプリケーションが進化したかと言っても、思い通りに組むにはそれなりのスキルが必要だからだ。今回は、InDesignに搭載された文字を美しく“組む”ためのさまざまな機能を紹介していきたい。QuarkXPressやIllustratorでは、手間のかかっていた文字の調整も、InDesignではかなり高度にコントロールできる。それなりのスキルは必要となってくるが、ぜひ色々と試して実行してほしい。

●文字組みに影響を与えるさまざまな機能
20110508-3.gifInDesignの文字組みというと、『文字組みアキ量設定』が注目されがちだが、実は文字組みに影響を与える機能は色々とある。『禁則処理設定』はもちろん、『ぶら下がり方法』や『禁則調整方式』、『コンポーザー』等があり、これらそれぞれの機能がどのように設定されているかも、大きく影響しているのだ。まず、これらの機能がそれぞれ文字組みにどのような影響を与えるかを理解した上で、『文字組みアキ量設定』を設定していくとよい。
では、それぞれの機能を見ていこう。まず、『禁則処理』と『ぶら下がり方法』。これらは、とくに悩むことなく設定できるはずだ。ハウスルールに沿って設定してほしい。ただし、ぶら下がりをする際には、「標準」と「強制」の2種類があるので注意しよう。行末の句読点を強制的にぶら下げたい場合は「強制」、収まる場合にはぶら下げ処理しないのが「標準」だ。
意外に知られていないのが『禁則調整方式』だ。設定は4つあり、禁則処理によって文字を追い込むのか追い出すのかを設定する。どの設定を選択しているかで文字組みも変わるので、好みに応じて設定して欲しい。デフォルトでは「追い込み優先」が指定されているが、筆者は「調整量を優先」をよく使用している。
そして最後に『コンポーザー』だ。日本語用のコンポーザーは2つあり、デフォルトでは<Adobe日本語段落コンポーザー>が選択されている。段落単位で文字間のばらつきが少なくなるよう調整してくれる設定だが、修正した個所よりも前の行の改行位置が変わるケースもあるため、印刷会社によっては使用を禁止している会社もある。筆者の場合、動作を理解したうえで使用している仕事もあるが、一般的には<Adobe日本語単数行コンポーザー>を選択しておくとよいだろう。

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●「文字組みアキ量設定」とは

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どのように文字組みをするかにおいて重要なのが『文字組みアキ量設定』だ。一般的に、句読点や括弧といった約物をどのように組むかを設定するもので、文字と文字が並んだ際の“アキ量”を指定することで設定する。しかし、文字と文字の並びの組み合わせは天文学的な数字となるため、実際には文字をいくつかのグループ(文字クラス)に分けて、アキ量を指定する(それでも組み合わせはかなりの数になるが……)。また、<アキ量>は<最小><最適><最大>のそれぞれを設定するが、均等配置でない場合には「最適」に指定した値で文字組みがなされる。つまり、箱組の場合にのみ、各行の半端なアキを「最小」から「最大」の間で調整するわけだ。さらに、どのアキ量から優先的に適用するかの「優先度」も設定できる。まずは、この設定の考え方を理解してほしい。
考え方を理解すれば、どのように設定すればよいかが見えてくると思う。とはいえ、実際に設定を行うためにダイアログを表示させると戸惑うかもしれない。これは、設定項目が非常に多いためで、『文字組みアキ量設定』を難しく感じさせる一因となっている。しかし、実際にはすべての項目を設定する必要はなく、変更したい箇所のみを設定すればよいので、それほど多くの項目を設定するわけではない。見た目の複雑さに惑わされず、ぜひさわってもらいたい設定なのだ。初めは少しずつ設定変更しながら、どのように文字組みが変化するかをテストしていくとよいだろう。
また、最近はWebサイトなどでご自分が設定された『文字組みアキ量設定』を配布されている方もいる。こういった設定をありがたく使わせていただき、自分の求める文字組みと異なる部分のみに手を加えていくのもよいだろう。まずは、設定をいじってみること、これが大切だ。
いずれにせよ、InDesignの文字組みは高度にコントロールが可能だ。望む文字組みを実現するためには、ある程度のスキルが必要になるため、今後は誰もが簡単な手順で望む組版ができるよう進化していってほしいと願う。

    (2011年4月号 プリバリ印より)
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