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電子書籍における本格的な外字・異体字対応がスタート

掲載日: 2011年05月03日

電子書籍における本格的な外字・異体字対応のための共有基盤構築への動きがスタートした

■印刷と電子書籍における外字・異体字への対応の違い

最終的に印刷物として出版される通常の書籍であれば、外字・異体字への対応が問題となることはほとんどない。

通常の書籍出版で使用したい文字がない場合、どのように対処してきたか。「無い文字は外字として作れば良い」「印刷会社に頼めば、すぐに外字を作ってくれる」「印刷物になってしまえば、外字かどうか判らない」。
また、いったん作成された外字はその会社内では再利用が可能であるが、社外に持ち出してデータ交換をおこなう必要はない。
つまり、外字は最も簡単で低コストな解決策であったと言える。

電子書籍出版において、外字は簡単に解決することはできない問題となる。
タブレットPCや電子書籍リーダー、スマートフォン、WindowsやMacといったOSを搭載する通常のPCなど、さまざまな表示デバイスやバージョンによって利用できる字種や字形が異なる場合がある。

デバイス限定のコンテンツ、たとえばiPhone、iPad専用のコンテンツであれば、使用できる字種は明確であり、簡単にテストすることもできる。将来、OSがバージョンアップしたとしても、それほど大きな違いはないだろう。かと言って、さまざまなデバイスのさまざまなOS向けに専用コンテンツを作成することは、ビジネスとして無理があるだろう。

コンテンツの一元化を考えると、表示できない文字は外字とならざるを得ない。しかし、いたずらに外字を増やすことは、コスト面、パフォーマンス面でもマイナスであり、電子書籍本来のメリットである検索性も損なうこととなる。データ交換をおこなうとしても、文字ではなく単なるグラフィックスとして扱わざるを得ない。

結果的に、外字は電子書籍コンテンツの充実・普及を妨げるような大きな問題となってしまう。

■外字利用のための共有基盤構築への動き

これまでにも、文字集合の拡張とコード化(JISコード)や国際的な標準化活動(Unicode)、フォントメーカーによる文字セットの拡張がおこなわれてきた。さらに、いくつかのプロジェクトでは、古典や学術的な側面からも検討を加え文字集合拡張のための取り組みもおこなわれてきた。

しかし、これらは各々の目的に応じて文字集合を整備することを目指しており、共通して利用するための基盤を整備することを目的にはしていなかった。つまり、これまで外字を総合的に管理しようとする試みは、ほとんどおこなわれてはいない。

凸版印刷は、自社で生産した出版物における字種ごとの利用頻度調査や前述のような文字集合拡張のためのプロジェクトへのヒアリング調査、フォントメーカーなどが参加する専門家委員会などを踏まえて、外字利用のための共有基盤構築に向けた提言をおこなっている。

外字利用のための共有基盤構築は、国内における文字コードの歴史上、全く初めての取り組みと言える。

■関連セミナー:5/11(水)電子書籍時代の外字・異体字を考える

(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸)

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