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広告市場の最新動向

掲載日: 2011年06月11日

市場縮小は一段落、メディアの使われ方が変わっていく


2010年の国内広告市場は1.3%減の5.8兆円
電通の「日本の広告費」によると、2010年の国内広告費は前年比1.3%減の5兆8427億円だった。2008年から3年連続の減少だが、下げ幅は1.3%とほぼ前年並みに落ち着いた。2010年は3月から回復の兆しが見え、年後半は顕著な回復傾向にあった。
内訳は、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌といったマス4媒体が6年連続減で下げ止まらず2.8兆円である。しかしテレビはスポット広告の活況で6年ぶりのプラスに転じた。
新聞は5.1%減で6396億円になった。2000年の1兆2474億円の半分程度まで縮小している。雑誌は9.9%減の2733億円となった。パソコン誌やテレビ番組誌、都市型情報誌が低調という。
前年より伸びたのは男性コミック誌、ヤングアダルト誌、育児誌で、付録付き雑誌も引き続き好調だ。団塊ジュニアの主婦を狙った「MART」は「MART族」という言葉を生むほどヒットしたほか、「VOGUE girl」などの初心者モードカテゴリーが好調だった。

成長性を回復したネット、折込は下げ止まり感
テレビに次ぐ第2の広告メディアのインターネットは2009年に1.2%増と失速していたが、2010年は9.6%増で7747億円で、この6年で205.1%と2倍強に拡大した。2010年は特にテレビとの連動型広告が多く、テレビとインターネットの両方を押し上げる一要因になったようだ。PC広告とモバイル広告では、小額から出稿可能で費用対効果のわかりやすいモバイル広告の伸びが高い。
折込広告は4年連続の減少で5279億円だが、3.0%減と下げ止まりの兆しが見えてきた。出稿主別には小売業が下げ止まってきたほか、エコカー減税と補助金の恩恵を受けた自動車が2桁増で、塾・習い事関係からの出稿も好調だった。

現在はメディアの使われ方が変わる過渡期
DMは2.9%減の4075億円だ。企業が蓄積したデータをシニア層、有料顧客などの囲い込みに使う動きが活発化している。反面、簡単な事務連絡や若者向けをネット移行する動きもある。
フリーペーパー・マガジンは8.4%減の2640億円だった。休廃刊の増加、発行頻度の減少などが影響した。屋外・交通広告は、それぞれ3.8%減の3095億円、6.0%減の1922億円だった。屋外広告は単価下落が激しいという。屋外看板は1年契約というよりインクジェットで作って月単位で貼り変えるような動きに変わっている。
交通広告は、雑誌の不振で電車の車内吊りが減る一方、トレインチャンネルは数カ月先まで埋まる人気だ。デジタルサイネージは普及しつつあるが屋外広告全体や交通広告全体を押し上げる規模はなく、歩行者に訴求が弱い面もあり、試行錯誤中と言える。

メディア多様化時代の折込チラシの生かし方例
用途や期待に応じてメディアの使い方や機能を変えることが必要だ。例えば主婦の悩みの1つは毎日の献立を考えることだ。(株)アットテーブルの主婦1万2000人アンケートの結果によると、メニューを考える際の参考は、最多が食材の使い残しや在庫、次にWeb上のレシピサイト、雑誌、家族の意見、そして折込チラシの順であるという。
新聞を購読している主婦の9割近くがチラシを見ているにも関わらず、チラシは主婦の献立の悩みを解決する存在ではないのである。そうすると、今後チラシを生かすには、メニューづくりの機能を載せて訴求することが考えられる。

プリンティング・マーケティング研究会2011年3月10日開催セミナー「広告市場と購買行動の最新行動2011」より。(研究調査部 藤井建人)

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