JAGAT Japan Association of Graphic arts Technology


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森裕司のInDesign未来塾 -10-

掲載日: 2011年06月16日

スクリプトを使って作業を効率化しよう

■InDesignの作業をより便利にするスクリプト
バージョンが進む度に新機能が追加され、かなり高機能なレイアウトソフトとなったInDesign。一昔前であれば非常に手間の掛かっていた作業も、随分と楽に出来るようになったと言える。通常業務であれば、InDesignの機能だけで特に支障はないという方も多いかもしれないが、制作するものによっては、まだまだ手間の掛かる作業が多いという方もいるだろう。そこで今回ご紹介したいのがスクリプトだ。
1105-1.gifスクリプトとは簡易プログラムのことで、ソースコードをコンピューターが理解出来る機械語に変換して実行させるプロセスを自動化して、簡単に実行出来るようにしたものだ。既に使用している方もいると思うが、スクリプトを使用することで劇的に作業を効率化出来る。
とは言ってもスクリプトを使いこなすためにはそれなりのスキルが必要となるので、二の足を踏んでいる方も多いだろう。かく言う筆者も、プログラムの知識はない。しかし、自分でスクリプトを書けなくても、現在では、様々なスクリプトが公開されている。プラグインと違って安価、あるいは無料で提供されているものが多いのもありがたい。これまで使ったことがないという方は、ぜひ使ってみることをお勧めする。
自分の作業に有益なスクリプトを見付ければ、これまでの作業がうそのように楽になるのは間違いない。
なお、スクリプト言語には様々なものがあるが、InDesignではJavaScript、Apple Script(Mac版のみ)、VBScript(Windows版のみ)に対応している。

■スクリプトでどんなことが出来るの?
スクリプトと一口に言っても、ちょっとしたことを実現するほんの数行程度のものから、作業のかなりの部分を自動化する何百行ものスクリプトまで、実に様々だ。一般的には、手作業で行う操作を楽にするためのものが多いが、作業時間を大幅に短縮出来るのがスクリプトの大きなメリットだ。特に面倒な繰り返し作業などに威力を発揮する。また、ヒューマンエラー、いわゆる人的ミスを減らすことが出来るのも大きな魅力だ。注意して作業しても、人間のやることにはミスがつきものだが、スクリプトは(プログラムに問題がなければ)指定した処理を間違いなくこなしてくれる。
スクリプトでは様々なことが実行出来るが、私の知る限りで過去に最も多く使用されたスクリプトは、InDesign 2.0の頃に市川せうぞー氏が作成された『Table Replace』というAppleScriptだ。これは表のテキストを差し替えるスクリプト。一度作成した表の体裁はそのままで、テキストのみを差し替えたいといったケースはよくある。しかし、以前のInDesignでは表中テキストの差し替えが出来ず、最初から表を作り直すか、あるいはセル単位でテキストをペーストしながら差し替えていく必要があった。
この作業を楽にしてくれたのが『Table Replace』だ。あらかじめ、差し替え用のテキストをクリップボードにコピーしておき、テキストを差し替えたい部分のセルを選択してスクリプトを実行するだけなので作業も非常に簡単。このスクリプトのおかげで非常に助かったといった話もよく聞かれた。InDesign CS3からは、表中テキストを差し替える機能が標準実装されたために、現在のバージョンでは使われなくなったが、非常にすばらしいスクリプトとしてInDesignユーザーの間では有名だった。もちろん他にも様々なことがスクリプトで可能だ。

■お勧めのスクリプトあれこれ
現在ではInDesignも7世代目ということもあって、実に様々なスクリプトが公開されている。その多くが無償あるいは非常に安価で提供されている。例えば、「選択中のテキストの半角約物だけを指定量カーニングさせる」「画像に対してキャプションを任意のアキでスナップさせる」「文字に囲み罫を設定する」「InDesignに配置された画像ファイルを、自動で入稿用に最適化する」「InDesignドキュメントのアイコンを作成バージョンのアイコンに戻し、ダブルクリックすると保存したバージョンで開く」などなど、実に多くの有益なスクリプトが公開されているのだ。
人によって求めるスクリプトは異なるだろうが、ぜひ自分の仕事に合ったスクリプトを見付けて使ってみて欲しい。これまでの仕事をより早く片付けられるのは間違いないはずだ。
なお、どのようなスクリプトがあるかは、私が運営する『InDesignの勉強部屋』のリンクページを見て欲しい。「InDesignのScriptを公開されているリンクです」という所に、スクリプトを公開されている方たちのページへのリンクが張ってある。ここからリンク先のページを見ていただき、ぜひダウンロードして使ってみて欲しい。きっとすばらしい出会いがあるはずだ。

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■スクリプトを勉強してみよう
今回は、公開されているスクリプトを使うことによって、仕事を効率的にこなすといった趣旨で原稿を書かせていただいたが、出来れば自分でスクリプトを書けるように勉強されることをお勧めする。スクリプトが書けるようになれば、これまで以上に仕事を早く済ますことが出来るだけでなく、対応の難しかった仕事を受注することが可能になるかもしれない。また、個人のスキルとしてのアピールポイントにもなるだろう。
私自身、スクリプトが書けないので偉そうなことは言えないが、スクリプト関連の本を読んだり、公開されているスクリプトの中身を見て勉強して欲しい。また、本を読むだけでなく、出来るだけスクリプトを書いてみて実行してみるのが上達の早道だとも聞く。少しずつでも取り組んでみると良いだろう。

(2011年5月号 プリバリ印より)

 

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