JAGAT Japan Association of Graphic arts Technology


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DTPエキスパートのための注目キーワード -10-

掲載日: 2011年07月10日

第10回目は「色の評価環境」についてワンポイント解説いたします。


標準印刷の認識が高まり、JapanColor、FOGRAなどの標準規格が認知されている。印刷物自体が標準色で再現しようとしても、それを評価する環境は適切に整っていなければ正しく色再現されない。モニター(自発光)による色再現でも、反射物である印刷物と比較して色校正などの目的に使用される。こうしたことを踏まえて評価環境条件は、カラーマネジメントには重要になる。


■液晶モニターの機能
CRTの色調整では、コントラストと輝度の調整から行っていた。液晶モニターでもコントラストと輝度の調整を行い、キャリブレーションを行って、その後キャラクタライゼーションといった色合わせを行っていく。液晶モニターのバックライトの光源は、主にLEDが使用されるようになってきている。LEDは少ない消費電力でも高輝度で、電源部分もコンパクトにでき、広い色再現領域が期待できる。
光源は、白色LED単体やRGB3色のLEDがあり、光の3原色であるRGB3原色では色味のコントロールができるが、それはメーカーのノウハウに担う部分が多い。こうしたモニタープルーフや画像のレタッチに使用する目的であれば、AdobeRGBの色再現領域をカバーし、画面の色ムラの補正、ハードウェアキャリブレーション対応などの機能を持ったものが望ましい。たとえ大型モデルであっても色ムラが大きかったり、視野角が狭かったりと色再領域が十分でなければ、作業上で支障が生じる。高画質/高精細による色再現性が求められる用途には医療の遠隔病理診断や、電子美術館やデジタルアーカイブなどが挙げられる。
輝度に関しては、印刷現場は明るい照明下であり、刷り上がった印刷物と比較することがある。こうした場合は輝度は200cd/m2(カンデラ/平方メートル)程度が望まれ、高輝度でのカラーマネジメント環境を求められる。

■評価環境と見え方
評価環境では、まず周囲の色が大きく影響するので、その色の見え方に関連する主な色知覚現象は、認識しておきたい。
・ベゾルド--ブリュッケ現象:輝度の強さで物理的(測色上)に同じ色でも、見かけの色が変化して見え、高輝度では青、黄領域、低輝度では緑領域が広がって見える傾向がある。
・色順応:色刺激の分光分布によって、網膜視細胞などの感度が先に見ていた色刺激に慣れてしまい、色の見え方が変化する。
・色対比:対象色の周囲にある色の刺激によって、対象色の見えが反対色方向に変化して見える。
・色恒常性:物理的な色刺激の状態よりも、物体に対する概念や固定色など物体に付随した色の特徴が優先して見える。
このような現象があるので光源は、色相の偏りの少ない無彩色であることが望ましい。
評価環境の照明光の分光特性も、分光分布はフラットなものが望まれる。その影響は、反射物の印刷物だけではなく、自発光のモニターにも及ぶ。照明光の分光分布の偏りで、分光分布の多くある色は、モニター内でのその色は明るく見え、反対にその分光分布が少ないとモニター内でのその色は暗く見える。
照明光の種類によっても色の見え方が異なる。例えば、「ある印刷物と色校正が、自社で見た時と客先で見たら違う色に見える」ということがある。分光測色計で測定すると、標準の光で測定した値(L*、a*、b*)は同じであったが、標準の光Aで測定した値(L*、a*、b*)は異なる。これは、この印刷物と色校正の分光反射率が異なると考えられ、原因としては色材の種類が異なることにある。2つの色が特定の光源下で同じ色に見えることを、条件等色(メタメリズム)という。
モニター校正は、印刷物(反射物)をディスプレイ(自発光)のデバイスで校正を行うわけだが、反射物同士での校正と比較すると現場やクライアントとの色の伝達がより効率的になり、色見本を見ながらモニター上で色修正をしたり、作業効率アップや品質向上が期待できる。

(教育サポート部)

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問 モニタと反射物の観察環境 
次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。
色の見えは、観察者や対象物が置かれている環境や照明、発光している光の特性などによって大きく変わる。そこで色を正しく判断するには、観察環境や条件の標準化が必要となる。
色を正しく判断できる環境として、最低限考慮すべき項目には以下のことがある。
1.周囲の色
2.照明光の特性(分光エネルギー分布)
3.照度
4.モニターの輝度
対象物の周囲に色によっては、対比、同化、順応などの現象が起きてしまい、正しく色を見ることができない。色を正しく評価、判断するには、周囲光は[1 : ①有彩色 ②無彩色 ③三原色 
④今様色]であることが望ましい。
照明光の分光特性は、エネルギーの過不足がなく、分光エネルギー分布がフラットなものが望ましい。照明光の分光特性が異なると、同じ印刷物でも色の見えが変わってしまい、[2: ①自発光のモニターでは色の見えは変わらない ②自発光のモニターでも色の見えが変わる ③自発光のモニタ-では印刷物と同一に色の見えが変わる]。
また、モニターの観察環境において、フラットな照明下に比べ赤い照明下では赤成分が多いものは[3 : ①明るく見える ②暗く見える ③変わらない]。赤のエネルギーが少ない照明下では、赤い部分は[4 : ①明るく見える ②暗く見える ③変わらない]。
例えば、標準光D50で2つのものが同じ色に見えても、D65では違って見えることもある。このように、分光反射率の異なる2つの色が特定の光源下で同じ色に見えることを、条件等色
[5 : ①メタファイル ②ギガメリズム ③メタボリック ④メタメリズム]という。
照度とモニターの輝度は、それぞれ別個に決めればよいというものではなく、両者の関係を考慮して設定しなければならない。
モニターと反射物の照度の適正値は、モニターの基準白色輝度、周囲の状況などにより変化すると考えられるので、以下の手順で設定することが望ましい。
1.モニターの設置、調整
2.反射物(サンプル:未印刷の用紙など)の設置
3.モニター側照度の調整
(モニターの基準白色は[6 : ①グレーに ②白に ③輝くように]認識され、シャドウ部の階調再現が確認できる照度に調整する。)
4.反射物側の照度の調整
(印刷用紙などの明るさ感がモニター基準白色の明るさ感と同じになる範囲に設定する。照度が高すぎると用紙の明るさ感が増し、モニターの再現範囲を超えてしまう)
色を正しく判断するには、作業する現場の背景や壁などの色の整備から行うことが理想的であるが、第1ステップとして、[7 : ①3波長蛍光灯とハロゲン電球の併用 ②自然光と蛍光灯の併用 ③照明光、照度 ④間接照明]によるモニター環境を整備することは比較的容易にできる。
モニターの観察環境の整備や標準化によって、色の伝達がより効率的になり、色見本を見ながらモニター上で色修正をしたり、現場やクライアント側にも同様の環境を構築することによって、作業効率アップや品質向上になる。

解答
1:② 2:② 3:① 4:② 5:④ 6:② 7:③ 

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