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人間にとって「成長」は 最高のエンターテインメント

掲載日: 2011年07月16日


右肩上がりが望めない時代を迎え、企業経営における人材育成の重要性はますます高まっています。社会環境や雇用環境だけでなく、個人の意識や価値観が大きく変化する時代にいかに人を育てていくか――人材育成に関する多数の著書を執筆し、自ら人事部のマネージャーを務める酒井穣さんに、「人材を育てるコツ」をお伺いしました。

『プリバリ印』2011年7月号

(インタビューより)
―― 印刷業界の現状について、酒井さんはどのようにご覧になっていますか。

酒井氏  自分自身が著者という立場ですし、実は父も出版業界の人間ということもあって本には思い入れがありますし、印刷も人並み以上に好きです。現状を見ていると、紙に何かを印刷するということ、その行為自体に危機感を持っているように思います。そうした危機感の根底には、例えばフィルムカメラが消えてデジタルに変わってしまったような大きな変化があって、その中でどうやって生き残っていけば良いかに 関心が集まり過ぎているのではないでしょうか。

ハーバード大学ビジネススクールのセオドア・レビット教授の言葉に「顧客はドリルが欲しいのではない。穴を開けたいのだ」というものがあります。もし自分がドリルの営業マンだとしたら、「うちのドリルはこんなに長持ちするよ」というのではなく、「壁に絵のある生活はこんなにすてきなんだ」ということを前面に押し出すべきなのです。要するに、お客様が買っているのは商品ではなく価値なのだという方向に考え方を転換していかなければならない。

仮に、冷蔵庫が消えていく運命にあるとしましょう。新しい冷蔵庫を開発しようと思っても、メーカーの開発者は従来の冷蔵庫のイメージからなかなか離れることは出来ません。冷蔵庫の価値がどこにあるかといえば、本質的には食べ物を保存することであり、冷たい飲み物が飲めるということです。しかし、保存機能だけであれば、食品の保存技術が発達していけば大型の冷蔵庫は必要なくなりますし、冷やす機能も自動販売機やコンビニで代替出来るかもしれません。

要するに、競合を考える際には機能ではなく価値で考えなくてはいけない。したがって、ドリルの競合はドリルでもネジでもなく、壁に穴を開けずに絵を掛けることの出来るフックであり、冷蔵庫の競合はレトルト食品や宅配、あるいは自販機やコンビニかもしれないわけです。 お客様にとっての価値は何かを真剣に考えることは、必ずや業界の枠を超えることにつながっていくはずです。

提供出来る機能ではなく、自分たちがどのような価値を生み出しているのかというところにフォーカスすれば、従来の競合ではない、新しい競合が現れてくるはずです。デジタル・フォトフレームが登場したことによってプリンターは売れなくなるかもしれませんが、一方でプリンターや印刷というものが従来の分野を超えて新しい世界に入っていく、新しい価値を見いだす可能性も生まれてくるわけです。

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本誌では、人間が成長するために必要な組織風土づくりや企業、業界が成長するための考え方など、6ページにわたるインタビューを掲載しています。是非チェックください!

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『プリバリ印』2011年7月号

特集: 印刷会社の新・人材育成術!

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印刷物をつくる人・つかう人の虎の巻 『プリバリ印』


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