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メンテナンスを通じたオペレーター育成

掲載日: 2011年08月03日

印刷機械のメンテナンスは品質を安定させるためには不可欠なことである。しかし・・・

印刷機械のメンテナンスは品質を安定させるためには不可欠なことである。しかし、実際には会社の規模の大小を問わず、そうした管理が行き届いている会社とそうでない会社の二極化が生じているとも言われている。経営者の立場からすると1枚でも多く刷って少しでも売り上げを伸ばすため、ついついメンテナンスまで手が届かないでいる傾向もある。

■重要なローラー調整
以前からも言われていることではあるが、いちばん安定している印刷機械で会社の基準濃度、基準品質を作り、この基準に油性インキもUVインキも合わせて置き、色校正用のカラー出力機もそれに合わせて調整すれば理想的だ。その基準に沿って各印刷機の定期的なメンテナンスをすれば品質も安定するだろう。
メンテナンスにもいろいろな項目がある、インキローラーは使っているとグレージングを起こしたり、ローラーの直系が細くなりローラー上でのインキの流れが片寄ったり、転移不良が起きたりしてくる。また、水元ローラーが水を弾いていてもそのままの状態でニップを緩くし、送りを多くしてなんとか刷っているケース多くある。そうなると、湿し水が多すぎてインキが乳化するので、浮き汚れや大幅なドライダウンが起こり安定した色が出せなくなる。場合によってはゴーストが出てる可能性もある。

最近では省電力で乾燥させるLED乾燥システムやハイブリッド乾燥システムを導入している会社もある。これに合わせて材料メーカーも改良した製品を提供している。しかし、印刷会社でこうしたシステムを導入しても最初はうまく稼動するが、数カ月経過すると乾燥不良などのトラブルが発生することがある。これはインキ・湿し水のローラー調整が不十分であることが起因していることが多い。
こうしたことを防ぐため、オペレーターはローラーのニップ調整やローラー交換を行う点検が必要になる。特に湿し水ローラーは乾いたウエスでよく拭いてから、専用クリーナー処理をして親水性を保つようにメンテナンスする必要がある。

■オペレーター育成には時間と適切な指導が必要
オペレーターは印刷物の網点をルーペでしっかり見ないといけない。通常、オペレーターは網点の形状、ドットゲイン、乳化の状態などをチェックする。しかし、新人のオペレーターがこうした網点の良し悪しを初めから判断できるものではない。日頃から管理職がサンプルをファイリングし、それを資料にして定期的な勉強会を開くことが必要だ。その中でトラブルの原因は何か、できるだけ多くの意見を出して原因・要因図を作る。それによってトラブルが起こらないようにするためには何をするかを知り、そこで得た知識を基に網点を見る習慣をつけ、印刷中の色の変化がわかるようになれば品質の安定につながる。時間はかかるかもしれないが、オペレーターを育てるには作業を通じて得た知識とスキルを積み重ねていくことがが大切だ。しかし、最近の機械はボタン押せば印刷できるという非常に便利なっているため、そうした積み重ねがなくても数年で機長にすることもある。それだとある一定の品質の印刷物しかできない。しかも、機械の仕組みをわからないまま作業しているため、トラブルが起こると対応できないことも多い。

最新の印刷機は高度にハイテク化された超精密機械だ。いろいろな装置が付いて、機械は安全性も重視されてカバーで覆われており、へたに触れないという現状もある。
メンテナンスは基本的には現場の機長がやることが多いが、ハイテク化された機械の全部を印刷会社でやるのも無理がある。そこで工場長などが現場でできる範囲とメーカーに任せる範囲を調整し役割を分担して、しっかりした指導の下で操作できる環境を作る必要がある。

  (JAGAT 伊藤禎昭)

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