JAGAT Japan Association of Graphic arts Technology


本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

印刷加工現場における利益確保の考え方(1)

掲載日: 2011年09月13日

刷版、印刷、加工現場では、日常的なコストダウンに取り組んでいる。コストダウンは、いろいろな切り口で考えられる。また、コストダウンを実行することはもちろん大切であるが、継続することも重要である。

更に、生産性向上を実践していく上で、経営者や管理者の考えにもぶれがなく、十分な社内浸透、教育が必要である。

■コスト削減、生産性向上の定義
受注単価が厳しい状況では、原価の見直しをするケースもある。コスト削減と生産性向上は、表裏一体であり、同時に実現することは容易ではない。ある会社では、コスト削減と生産性向上を「一定時間の生産量を増加させることで作業時間中のムダをなくし、技術を高め、作業ミスによるやり直しをなくすこと」と目標に掲げている。
技術力についてみると、印刷機オペレーターの技術レベルは以前と比較すると下降傾向にある。その要因の一つは、印刷機のコンピューターによる自動化にある。従来、人間が行っていた印刷作業までコンピューターが代行してしまう。その結果、トラブルが発生するとオペレーターが対応できないといった技術力低下の側面も生じる。
しかし、経営者や管理者はこうした技術力低下という変化に気づきづらく、対応としての教育には必ずしも十分に行われているとは言えない。印刷技術の根底にある原理原則を、オペレーターが身に着けることが技術力維持につながり、人材教育やコストダウン、生産性向上につながるのである。

■現場の活性化が基盤になる
長期に渡って同じ環境にいると現状に対応すべく順化(慣れ)が起こる。印刷現場においても同様であり、同じ方法、体質、考え方で長期間作業していると順化が起こる。よい方向で展開している場合には問題ないが、そこには新しいものが生まれてくるケースは少ない。現場の人間は、このような状況に陥りやすい。
ある工場では、事故が発生した時に印刷機オペレーターは原因をうまく説明できなかった。そのオペレーターは、高いモチベーションを持って仕事に取り組んでいなかった。管理者は、事故防止を徹底していたが、検証や評価はなかった。このような環境では、業務改善が進めづらい。
例えば、管理者がオペレーターにトラブル発生時の対処法やメンテナンス方法の課題を与え、チームを作りディスカッションさせる訓練を行うと、それまで説明できなかったことができるようなる。
現場には蓄積したノウハウはあるが、うまく表現、活用できないケースが多い。管理者は、いろいろな手法により現場の意見を出させ、同時にモチベーションを上げる施策を講じる必要がある。現場の意見を引き出し、モチベーションの向上こそ、利益確保のきっかけになる。

■目的の本質を理解することも重要
印刷会社は、5Sに取り組んでいることが多い。しかし、うまく機能しているか疑問である。職場の環境が悪ければ、管理者が何を言っても社員から信頼を得ることは難しい。まず、環境の改善から行わなければならない。
ISO関連など認証制度の取得に臨む場合について、社長から社員に取得の目的がうまく伝わらないこともある。社員が記録をとっていても、管理者から言われたからやっているということが多い。管理者に至っては、年1回の審査のために記録をとっているという。このような記録は、メンテナンスにおいて貴重な情報源になる。認証制度の内容を理解した上で、記録を活用することが、生産性を向上させ利益確保に繋がる。

(伊藤禎昭)

■関連情報
  印刷現場の改善と管理(入門編)
  枚葉オフセット印刷「上級印刷管理者講座」(大阪開催)

(C) Japan Association of Graphic Arts Technology