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できるだけ人手をかけずに電子書籍を制作する体制とは?
PAGE2011カンファレンスでは「電子書籍の未来とEPUBの活用」と題したセッションを開催した。凸版印刷の田原恭二氏に電子書籍の編集制作環境の現状と今後の課題について伺った。
■電子書籍の編集・制作環境
電子書籍のオリジナルは、基本的にInDesignで編集・制作した印刷用データである。
凸版印刷では、2005年頃よりInDesignに自社オリジナルのCTS組版とXML書出し機能をプラグインとして搭載し、使用している。この機能を活かしてInDesignからXMLを書出し、さらに変換ドライバーを通すという方法で電子書籍データを制作している。
つまり、できるだけ人手をかけずに電子書籍を制作したいということである。
ドライバー切り替えだけで各種フォーマットに対応することが可能である。同じフォーマットであっても、スマートフォンやタブレットでは解像度や外字環境、字下げ量も変わってくる。変換時にこれらの情報をパラメータとして付与し、自動変換する仕組みを構築している。
■電子書籍の制作ワークフロー
シャープのXMDFフォーマットのケースでは、以下のような手順となっている。
InDesignからXMDFへの変換は、マスター作成・コンテンツ変換という2段階で行う。
印刷用のInDesignデータには、イレギュラーケースがある。それをクリーンにするのがマスター作成である。
マスター作成では、印刷用のInDesignファイルから電子書籍用のInDesignファイルを作る。
これは見出し、これは段落、ここに画像が入るというような仕掛けをオペレーターが手動で施している。さらに、書誌情報の差し込み、デバイスごとの設定を行っている。
コンテンツ変換では、XMDFでどうしてもエラーになってしまう点やInDesign固有のものについて、前処理を行う。
例えば、2倍ダーシを1文字で長体にする、空白を入れて調整したルビを削除する、などがある。印刷用の高精細画像があれば、リサイズやJPEG変換も行う。そこから自動的にXMDFに変換する。
外字に関しては、デバイスの能力に依存する。例えば、携帯用のXMDFはシフトJISしか表示できないため、シフトJIS以外は全て外字に変換する必要がある。
XMDF、ドットブックについては、このような制作フローが確立している。
製造面、システム面の課題として、InDesignを使いこなせるオペレーターが少ないため、Wordレベルで対応可能にすることや、半手動のデータ加工をできるだけなくすことが挙げられる。
■EPUB3.0の対応
EPUB3.0は2011年5月の勧告と同時にサービスをスタートできるよう、急ピッチで開発を進めている。
標準的なフローとして、凸版オリジナルのXMLからEPUB3.0に変換する。リフロー系書籍やコミックのためのインフラを整備し、XMDFやドットブックと同等のことを実現する。
EPUB3.0ではUnicode6ベースとなり、フォント埋め込みも可能になるため、外字・異体字問題も楽になり、表現もリッチになる。例えば、見出しの書体を変えたいということも可能になる。
以前であれば、標準化された規格を使うだけで済んでいた。ところが、今は標準化に参加しながら裏で応用システムを作るという状況でないと間に合わない。
これは、EPUBのワーキングを通じて私が感じたことである。
2010年は電子書籍の第1ラウンドであった。第2ラウンドとして、「凸版印刷にしかできない言語表現とサービス」を追及していきたいと考えている。
そのためには考え方と道具を整備していかなければならない。
(まとめ:JAGAT 千葉 弘幸)
電子書籍時代のDTPワークフローを考える
『+DESIGNING』『eBookジャーナル』の実例とQuarkXPressの提案
2011年08月02日(火) 14:00 - 16:30
雑誌『+DESIGNING』『eBookジャーナル』2誌のワークフロー説明と、QuarkXPressを活用した紙と電子出版の融合への新しいアプローチ、さらにQuarkXPress9.1より実装されるeBookアプリ制作に対応したApp Studio書き出しや部分的なEPUB形式出力などの新機能紹介など。