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電子書籍化のメリット・特性として、「コンテンツのリッチ化」という面と、コミュニケーション性のある「ソーシャルリーディング」という面がある。これらに現在取り組んでいる二社の事例を紹介する。
オフィスエラン社は小松左京氏の「空中都市008」を「オーディオビジュアルノベル」化し、iPadアプリとしてリリースした。電子書籍は形態が多様化していくが、その一面として音や動きを取り入れたリッチコンテンツアプリ化がある。
オーディオビジュアルノベルとは何か?ということだが、「全く新しいマルチメディア小説の形式。カッコ書きの台詞でボイスを再生し、音楽とイラスト(さし絵)を物語の進行に合わせた演出に使用する」ということである。これにより、新しい読書スタイルの提案し、小説を読むのが苦手でも読みやすく楽しめるということである。
この形態の特徴としては、あくまで小説の読み味を残した、ほどよいマルチメディア化であり、読む人の想像力をサポートする声・音楽・さし絵の使い方を研究した結果のスタイルということである。
現在は電子デバイスの市場変化の真っ只中であり、新スタイルの楽しさや読みやすさが存在すべきとのことで、小説を読む楽しさを拡げるオーディオビジュアル述べるが、今後の新しい楽しみとなるとしている。
オフィスエラン社はこれまでもWindows向けDVDとしてもオーディオビジュアルノベルを推進しており、今後も様々なデバイスやグローバル化も検討しているとのことである。また、このジャンルの健全な育成(クオリティキープ、レーティング運用、参入企業育成など)を目的とした関連企業団体「オーディオビジュアルノベル協議会」も設置・運用しており、全国小中学校への体験キャラバン活動をはじめとした啓蒙活動を行っている。
電子書籍のもう一つの特徴である、ネットとの親和性の良さを生かしたサービスに、「ソーシャルリーディング」がある。この機能についていちはやく対応しているのが、スピニングワークス社の「Qlippy」というアプリである。
Qlippyとは何か?ということだが、これは電子書籍ならではの読書体験を提供することで「読書」のスタイルを変えるサービス。文章中のコメントやハイライトを共有できる。流通サービス、端末、ビューア、を限定せず、いつでも同じ読書を楽しめる。Webサイトで読書履歴やコメントを共有し、他のユーザと交流し、新しい書籍と出会える。
概要としては、電子書籍のソーシャル化に重点を置いており、「コメント、ハイライトの共有」「スクラップブック機能」「コミュニティ機能を持つWebサイト」などから成る。書籍の一部をクリップするとはいっても、書籍コンテンツそのものを扱うわけではなく、言わばニコニコ動画におけるコメントのようなものである。Qlippyは各デバイスや各サービスの持つような、依存したソーシャルリーディングではなく、オープンな環境を目指しているということである。そのために受け入れやすい機能の提供などを行うとしている。
これにより、書籍は一方通行から双方向のメディアへ変化し、これまでスポットライトの当たらなかった人たちに注目が集まるのではないかとしている。これからの課題としては、好きな端末、好きなビューアを使って購入した書籍を読むことができるようになり、電子書籍なりのメリットをアピールすることが必要となってくる。
(Jagat info)(クロスメディア研究会)