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印刷会社目線のデジタル印刷成功事例

掲載日: 2011年09月06日

出版印刷を長年手がけている錦明印刷のデジタル印刷ビジネスは商品開発である。言葉を変えれば顧客のためにソリューションを開発し、そのソリューションにあった顧客を捜すことに尽きる。

日本でもデジタル印刷は確実に伸びているのだが、その実態が共有されていないのが現実である。テキスト&グラフィックス研究会では成功事例を発掘し、業界に広めていくつもりなのだが、今回は出版印刷で有名な錦明印刷の事例を紹介したい。

錦明印刷はご存じのように大手出版社の文庫制作やカバー印刷、装丁を得意としている会社である。いわゆる老舗印刷会社の最右翼ともいう事業内容なのだが、二代目社長である現社長が錦明印刷に入社されたときに新事業ということでデジタル印刷をスタートさせたという経緯がある。

どこでもそうなのだが、デジタル印刷機は最盛期のオフ輪のように印刷機を回せばどんどん小判を生む夢のような機械ではない。設備を導入すれば即儲かるというのではなく、設備を導入し機械を上手く使えるようになっても、オフ輪などに比べて儲けは一桁小さく、且つ常に新しいソリューション開発をしていかないといけないビジネスである。オフ輪のようなビジネスの成功体験が一回でもある人にとっては馬鹿馬鹿しくてやっていられないということになってしまうのだが、この先「作れば売れるという高度成長時代」「むやみに高くても高級感さえあれば良かったバブル時代」のようなビジネスが二度とあるとは思えない。それもここ2・3年が勝負で、急激に多品種小ロット化が進むことは間違いがない。紙に印刷することを生業にするならデジタル印刷を避けて通るのは不可能である。

アナログ印刷にしてもヤレを最小に押さえ、稼働率を最大にしてコストダウンを計らねばやっていけない時代である。そんな時代、企画営業の出来る営業マン(営業部隊の中核になるべき人)が望まれると言われ、セミナーも随分行われている。しかし正直な話、アナログ印刷の場合はCTPでもデジタルのことが少し分かって、DTP用語も大体分かる程度で顧客との橋渡し役は務まってしまう。ところがデジタル印刷の場合は商品開発レベルから営業本人が率先しないと成功の確率は低い。

商品開発だけではなく、マーケティングの素養も不可欠である。デジタル印刷がデジタル印刷として効力を発揮するには普通のチラシとは異なる即時性やカスタマイズ、ローカライズ、パーソナライズが必要となる。そんな仕組みとフィットするフラッシュマーケティング的な素養やWebマーケティング的な考え方がデジタル印刷には必要となる。

こういうことが会社の中でもオーソライズされていることが大事で、そうでないところはオフ輪部隊がデジタル印刷のスタッフのところにやってきて「お前のボーナス代は誰が稼いでいると思っているんだ。自分で稼いでいるなんて思うなよ」なんてことになってしまうのである。

2011年9月27日のテキスト&グラフィックス研究会では「印刷会社目線から見たデジタル印刷成功事例」と題して錦明印刷での成功物語(実は苦労物語かもしれない?)をお聞きしたい。内容はWebをご覧いただければ良いが、塚田社長からは今までの経緯とデジタル印刷とは結局顧客の望むソリューションを用意しなくては駄目ということを具体的に解説いただく。

錦明印刷が今までにトライしてきた商品を数多く紹介するので、それをヒントに自社ならではの商品を作っていけば良い。(くれぐれも単なるまねだけでは成功にほど遠いことは付け加えておく) 林次長は前述した企画の出来る営業マンそのもので錦明印刷のデジタル印刷スタート時から苦労してきた方である。マーケティングが大事ということを身をもって実証いただけると思う。

デジタル印刷成功の秘訣を錦明印刷からのプレゼンとブライターレイターの山下氏を交えたディスカッションで明らかにしていくつもりだが、以下のポイントに迫れればと思っている。

1.Web to Print
2.Photobookの仕組み作り
3.小ロット印刷(例えば絶版本)
4.価格表(デジタル印刷ならではのきっちりした価格表=これは重要ポイント)
5.新商品力

性能重視的なメーカー目線ではない印刷会社目線のデジタル印刷をご紹介したいと思う。

(文責:JAGAT研究調査部部長 郡司秀明)

関連セミナー

ユーザー視点から見たデジタル印刷の成功事例 

2011年09月27日(火) 14:00-16:00 (受付は13:30より)

デジタル印刷に早くから取り組み豊富な経験を持つ錦明印刷より、実例を交えながらデジタル印刷の成功ポイントの話を伺うとともに、デジタル印刷ビジネス拡大をテーマにディスカッションを行う。

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