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DTPエキスパートに求められる対応力

掲載日: 2011年10月03日

DTPエキスパートは制作環境が変化し続けても、従来培った紙面データの知識をベースに、電子書籍への展開などに対応することが求められる。

DTPの導入から定着・展開、そしてIT化の流れの中で、DTPエキスパート及び認証試験の役割や位置付けも次第に変化してきた。DTPエキスパート認証試験は、「よい印刷物を作る」ことを目指し、印刷物の制作に関わる方(プランナー、デザイナー、エディター、印刷営業、プリンティングディレクター、プリプレス担当者、印刷発注担当者等)に対して、自分の職種に留まらずコミュニケーションを行い、パートナーとしてやり取りのできる資質を求めている。その対象者も印刷物制作の領域を超えた多くの方にも広がっている。印刷会社では2、3年目もしくは新人の方が、トータルでの知識の整理としてこの資格試験を利用している。

第36期DTPエキスパート模試問題の出題には、基本的な実践レベルの基本問題と、時代の流れに沿った新問題がある。基本問題には、「見積り」「文字組版」「知的財産権」「組版設計と画像データ処理の計算」があり、実践レベルは「PDF基本問題」「DTPサイトとCTPサイト」「RGBワークフロー」などが挙げられる。印刷データをもとにいろいろな情報メディアへ展開さられている現状を踏まえ、「デジタル印刷」「デジタルサイネージ」「電子書籍」の出題があり、入稿形態でも「CG」「デジタルカメラのデータ入稿」「RAWデータ入稿」が出題され、それに即したレタッチの問題もある。

デジタルカメラの撮影時に行うHDR(High Dynamic Range)の機能で、従来行っていたレタッチの作業は大幅に省略されている。また標準印刷の普及によって、カラーマネジメントの重要性が認識され、「標準印刷とカラーマネジメント」の出題に至る。その他、「電子媒体のフォーマット」「ワークフローの情報交換」「UVインキ」などが出題されている。

例えば、今後の注目の一つに電子書籍(書籍に限らずチラシ、カタログ、教材なども対象)がある。電子書籍リーダー(タブレットPC、スマートフォンなど)が電子書籍端末として増加するとともに、EPUB3リリースで日本語組版対応も実現に近づき、さらに普及していくことが想像できる。コンテンツの一元化を実現し、場合によっては従来DTPの工程で作成されている紙面データと電子書籍データを同時に作成することが求められる。さらにXHTMLやCSSをベースにテキスト系コンテンツを管理して、ページモデルだけではなくディスプレーやフォントのサイズに応じて見栄えが変化するリフロー形式の電子書籍対応も必要になる。

雑誌・書籍を制作する場合、従来のDTPの工程で印刷物をターゲットに編集・制作を行い、電子書籍版にデータを流用するスタイルが今のところ多く見られる。InDesignなどDTPアプリケーションの印刷用データからEPUB書き出しを行い、電子書籍用に編集・加工し、部分的に手作業で修正を行う。印刷用データありきのフローで当初対応すれば、商売の主軸が印刷物にあることを踏まえて、その運用が比較的容易で導入しやすい。ただし、同時に複数の電子書籍デバイスのフォーマットに変換する対応や外字対応など、解決すべき部分も多々ある。

DTPエキスパートは、このような制作環境の状況の変化の中でも従来培った紙面データの知識をベースとに電子書籍への展開が求められることが、容易に想像できる。出題傾向もこうした「電子書籍」関連の比重を高めていくことが予想される。

(資格制度事務局)

 


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