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第36期DTPエキスパート認証の課題試験について、合格発表を前に採点者のコメントを挙げ別の視点から考察した。
■第36期課題のまとめ
速報値であるが、第36期の課題(単独)の合否はおおよそ以下のとおりである。合格率は約75%でその内15%未提出なので、実質(提出分)の合格率は約90%弱である。ここ数年の合格率の数字と大きく変らない。今回作品で実際の仕事として自由課題Cという選択肢が増えたが全体の提出の約5%以下に留まった。提出物の内容は近年の動向と同じで特筆すべき点はなく、よく言えば出題内容がよく理解(実際には情報が十分にある)され、認知されてきた結果とも言える。
さて、合格である課題提出物であっても出題の意向を完全に理解したものは意外に多くはなく、その採点過程の中で、やはりいくつかの提出物ではまだまだ十分に出題の意図が伝わっていないものがある。ここでは、その採点作業途中の複数の採点者の意見コメントをあげ、本来の出題の意図、どんなことを求めているのかを理解するための参考にしていただければ幸いである。出来るだけ実際にある主なコメントをそのままに近い形挙げてみる。このコメントが一つ一つ直ぐに合否に直結するものではないが、別の側面から提出課題の実際の評価の実情が垣間見られると思われる。今回特に一つ一つについての解説、説明はあえて行わないが、採点者の声と捕らえてほしい。
■作品■
・CMYK+特色2色になっている。表組の罫線と文字が接触。
・校正もれ多数。本文とピクトグラムの間隔がバラバラ。図版に番号が無い所あり。
・ジャスティファイが出来ていない。英数の半全角が混在。句読点の不統一。
・フォントが全てアウトライン化されている。
・特種文字が表記出来ていない。若干空きスペースが目立つ。
・アイキャッチの可読性が著しく悪い。
・表組地図内のフォントサイズが小さい。表組内の校正漏れ。
・写真キャプションが写真に近すぎるため可読性を損なっている。
・画像解像度が非常識だが、適正画像には足りていて印刷は可能。
・画像の解像度が高すぎる(440MB以上)。
・キャッチの画像が低解像度72dpiになっている。特種文字が表示出来ていない。
・ロゴ変形あり。
・PDF/X-1aに準拠していない。透明・ぼかしの解像度が300dpi未満。
・分割/統合後の荒れが目立つ。後処理が適正であれば分割統合後の仕上がりの劣化は最小にできるが、
X-1a出稿必須の環境でこれだけ大きく透明効果を使うのは少々危険では。
・見開きになっていない。インデックスが無い。両柱、不要な柱がある。
・インデックスの文字化け。
・グリッド、ガイドの意識は十分感じ取れる。
・変形2段組みはユニーク。
・レイアウトがユニーク。
・メインの写真が右下にある珍しいデザイン。
■制作指示書■
・目次の順番が違う。
・原稿量の増減に対応困難。
・テキスト量増減対応がフォントスタイルの変更になっているが、このレイアウトなら別の手法がある。
・文字のサイズ指定、なぜ半端な数値に?一部級数で指定してあとでポイントに?
・レイアウト設計図、標準化、受注内容などがない。
・位置情報が不明。パーツの指定が大幅になく再現困難。
・パーツサイズからなんとかレイアウトが可能で似たモノが出来るレベル。
・位置指定が難しいが、テンプレートから推測できる。
・原稿量の増減への対応は、文字サイズや送りの調整だけではなく、レイアウトに多少の余裕を持たせる
ことが必要。
・テキストの増減など、シリーズ化の対応ができている。
・レイアウト、スタイル指定など、詳細に指示あり。
・テキスト量増減対応がシンプルで効率的。
■実際の受験者の合否のコメントは、大まかに分類されもっと全体像を表わすものとなっている。それらの根拠となる実際の採点作業は、提出物を事細かに複数人の目で評価、採点を行っている。上記に挙げたコメントが直ぐに合否に関わるものではないが採点作業の所見で少なからずとも一定の減点要素、加点要素になるので参考にしてもらえば幸いである。確かにこうしたコメントは、この課題作成だけに留まらず、こだわって言ってしまえば今世の中に出ている印刷物に対して言えることではないだろうか。デザインレイアウトから始まり組版、画像処理など読み手を考えていない事例が多くある。例えば、コンセプトにユニバーサルデザインや高齢者向け云々を訴求しながら、実際の印刷物は、細かい文字、小さい図版、派手な配色など情報量を優先したものあることが見受けられる。その個々の印刷物の目的(ここではコンセプトの意味)でも改めて考えてもらいたい。