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従来層とは異なる世代にリーチ、専門出版社ハーレクインの電子書籍 電子化へ踏み出す出版プレイヤー(2)

掲載日: 2011年10月14日

女性向けロマンス小説として有名なハーレクイン。これら小説・コミックを手掛けるハーレクイン社では、2005年から電子書籍をスタートさせている。


女性向けロマンス小説にジャンル・ターゲットを絞った専門出版社

ハーレクイン社は、女性向けロマンス小説・コミックを専門に出版・販売する出版社である。本社はカナダにあり、日本法人では、本社を中心に海外で出版されたロマンス小説の翻訳販売、小説を原作としたコミック事業などを手掛けている。

読者層は40代~50代女性が多い。シリーズものなど毎月数十冊のペースで刊行しており、熱心な読者は月に何冊も購入するという。同社で運営しているネットショップでも「ハーレクイン・ロマンス新刊全冊(毎月10点)セット」が人気商品だという。

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小説だけではなくコミック雑誌・単行本も刊行している。

電子化により若い女性層にもリーチ、デジタル版ではコミックが主流

同社では書店以外の販売チャネルを広げる目的で電子化にも早くから取り組んだ。小説版は2005年から、電子コミックは2007年からスタートした。

自社サイト内のストアに加えてYahoo!コミックやパピレス、App Storeなど複数の電子書籍ストアでも積極的に配信している。社内でデータ制作は行っておらず、InDesignデータをそのまま電子書籍取次に提供してXMDFや.bookなど対応するフォーマットに加工してもらう。売上げはコミックの比率が高く、特にパソコン版で売れている。小説はケータイ経由が多い。紙と電子のリリースはほぼ同じタイミングである。

電子書籍ストアでは、「ハーレクイン」というカテゴリを設け検索しやすいようにしたことや、月額セットなどの定期購読プランにより売上げを伸ばしている。また携帯配信や電子コミックを開始したことによって、従来よりも若い読者層の購読も増加した。

パピレスのWebサイト。「ハーレクイン」というカテゴリが用意されている。
パピレスのWebサイト。「ハーレクイン」というカテゴリが用意されている。

絶版本を電子書籍で復刊

ハーレクイン社では、新たな取り組みとして人気投票により絶版本を電子書籍で復刊するキャンペーンを実施している。同社では、基本的に重版を行わないため、読者から絶版本の復刊を期待する声も多くあった。

そこで、読者投票で人気があったものを電子版として復刊する取り組みを2009年6月からおこなっている。電子版であれば紙と比べてコストは格段に抑えられ、読者にとっては読み逃した本を購読することができる。このキャンペーンは好評で、現在は第28弾まで実施している。

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(クロスメディア研究会 中狭 亜矢)

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