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カラーマネージメントの取り組み方(3)
前回、標準印刷を通してカラーマネジメントの取り組み方を説明した。今回は、標準印刷の基準を表すICCプロフィルについて説明してみたい。
ICCプロファイルとは
身の回りには、○○のプロファイル、△△のプロファイルなどいろいろなプロファイルが存在している。もともとプロファイルの意味は、「横顔」「分析結果」「略歴」などの意味の英語である。印刷分野では、主にICCプロファイルがそのデバイス(入出力器)もしくはその仕様(Japan Colorなどの標準印刷やAdobeRGB)が表現する色再現域を表すものである。
例えばJapan Color2010は、どれくらいの色再現領域があるのかだとか、この液晶モニターの発色の色再現はどの程度なのか、その出力物や出力デバイスの色再現能力を表す。よくある間違いに、そのプロファイルを入手もしくは相手方に提供さえすればカラーマネジメントができてしまうという誤解である。ICCプロファイル自体あくまでそのデバイスの能力を表すテーブルであり、それを反映させる仕組みなりシステムが必ず必要となる。
色空間上(L*a*b*空間)では、そのプロファイルが、再現色領域(ガモット)として立体で表示される。その立体の形状、大きさが、その色再現領域を表し、例えば、2つの異なった色空間を同じ大きさに合わせることが、カラーマッチング(ガモットマッピング)である。マッピングもL*a*b*で、どの軸の方向を優先して合わせるかによって、変換方式の知覚、相対、彩度優先があり、その目的用途に応じて使い分けされる。
その作成方法は?
例えば、印刷機(もしくはプリンター)のプロファィルを作成するには、まずターゲットとなるチャートを一定条件(例えば標準印刷に沿った条件)で刷る。この時の印刷機は、管理された安定状態(標準状態)であることが前提となる。こうした条件下で刷られた印刷物のチャートをターゲットとして測色を行う。印刷用のチャートは、概ね数百からのパッチで構成される。このパッチは、掛け合わせの平網(CMYK%)で構成され、その測色(L*a*b*値)結果が、色の変換の照合表になる。また、このパッチ一つひとつが、参照点(色空間を表すポイント)と呼ばれ、ICCプロファイルの生成する上での重要な要素となる。この平網の取り方や点数がそのプロファイルの精度に大きく関わってくる。本来、この参照点は、多ければ多いほどそのICCプロファイル精度は向上するが、あまり多いと実用レベルで扱いにくくなる。実際に参照点にない間の部分は、アプリケーションの補完式によって再現されるが、この補間のやり方もそれぞれのアプリの実力となる。
また、チャートの平網の数(重要な部分の参照点)を多くしてその部分の精度を上げる工夫もあり、2000~3000点の平網を測定してプロファイルを作成する仕組みがある。モニターでは、測色器をモニター画面に当てて基準となるいくつかの発色(RGBの掛け合わせた光)を測定して、RGB値とL*a*b*値を照合表が、モニターのプロファイルとなる。ICCプロファイの評価は、まずそのマッチング精度が挙げられるが、そのほかにも階調再現の滑らかさや、色相の変化するところでのつながりなども重要なポイントとなる。
ICCプロファイルの運用は
精度の良いプロファイルがあって、反映させる機材やアプリが必要になる。印刷機では標準印刷を実現して、モニターやプリンターではキャリブレーションをできることが必要になる。アプリでもそうしたプロファイルを踏まえて表示できたり、演算処理ができたりすることが必要となる。
例題 デバイスプロファイル
次の文の[ ]の中の正しいものを選びなさい。
色を扱う装置はそれぞれ固有の色再現域があるので、一貫した色再現をするにはCIE L*a*b*など共通のカラースペースを使ってカラーマッチングする。カラーデバイス固有の色再現域を[1 : ①ガモット ②分光分布 ③スペクトル ④ガンマ]という。共通のカラースペース上で各デバイスのカラー属性を定義したものが[2 : ①プロファイル ②カラーパッチ ③カラーターゲット ④ガモットマッピング]である。デバイスプロファイルの標準化を推進する団体として[3 : ①ICC ②PANTONE ③CIE ④TAGA]がある。
カラーマネジメントシステムのデバイスプロファイルは、機器メーカーから供給されたり、利用者が自ら作成することもある。この作成には、実際に200~1000パッチ程度の色を測色して、計測したL*a*b*値とRGBあるいはCMYK値の[4 : ①対照表 ②色名表 ③計算式 ④マンセル表]を作り、この表にない部分は計算で補完する。
プロファイルでは、デバイスのカラーとデバイスに中立なカラーの変換テーブルが作成され、そこから様々な[5 : ①ビットマップ ②タグ ③アウトライン ④コード]の形式にする。また、通常の入出力プロファイルは、[6: ①CMYK→L*a*b* ②L*a*b*→CMYK ③L*a*b*→L*a*b* ④CMYK→L*a*b*とL*a*b*→CMYK]のような変換が定義されている。
色再現域の異なるデバイス間で色の合わせ込みを行うことを[7: ①ガモットマッピング ②カラーパッチ ③プロファイリング ④カラーターゲット]という。三次元の色空間のどの方向を優先してマッピングするかについては、[8 : ①ICC ②TAGA ③CGAT ④PANTONE]で変換の方法である[9: ①レンダリングインテント ②リッピング ③ラスタライズ ④マッピング]として定められている。例えば、自然画像では一般に[10: ①知覚 ②絶対 ③相対 ④彩度]が、CG画像のように鮮やかさを保ちたい場合は[11 : ①知覚 ②絶対 ③相対 ④彩度]が用いられる。
色再現環境について日々の管理作業であるキャリブレーションを行うのは[12: ①メーカー
②専用スタッフ ③出力センター ④利用者]の務めである。 (教育サーポート部)
解答
1:① 2:① 3:① 4:① 5:② 6:④ 7:① 8:① 9:① 10:① 11:④ 12:④