JAGAT Japan Association of Graphic arts Technology


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創業90年の技術を活かした新展開「2Dと3Dのコラボレーション」

掲載日: 2011年11月23日

次世代の印刷の姿を追求する一環として、業界初の2次元・3次元グラフィックアートを展示したギャラリーを開設。

乗車券印刷で90年の歴史を誇る
山口証券印刷 は、鉄道・バスの乗車券などの有価証券印刷の分野で、大正10年の創業以来90年の歴史を誇る。特に乗車券では、硬券印刷から軟券印刷、感熱式磁気印刷まで、あらゆる乗車券を印刷している。
硬い厚紙の乗車券(硬券切符)は、現在でも一部の鉄道と記念乗車券などに使用されている。「出没!アド街ック天国」の秩父 長瀞の回(2011年7月2日放送)で紹介された「秩父鉄道 長瀞駅」の硬券切符は、山口証券印刷が手掛けているもので、1921年から使用されている硬券専用印刷機によって印刷されている。一部の鉄道ファンは切符の地紋にも注目しているが、昭和初期に同社で制作された切符には「PJR」(JAPAN PRIVATE RAILWAYの略)の地紋がある。ちなみに、1951年ごろからは、当時の国鉄の許可のもと私鉄用に進化した「てつどう」の文字が加わった新地紋が使用されている。

同社では、1956年に自動券売機用ロール紙印刷を開始し、1982年には電子組版システムを導入しデジタル化にもいち早く対応し、紙以外の媒体への企画・デザイン制作・印刷・加工も積極的に推し進めてきた。現在では、乗車券だけでなく、ギフトカード、ICカードや社員証・会員証などを手掛け、偽造防止・番号・ミシン・抜きなどの加工、UV印刷などにも対応している。また、グリーン購入法に適合したバイオマスプラスチックを素材にしたカード類や、ストーンペーパーなどの環境配慮型の素材を使用した各種商材のデザインや印刷なども行っている。

「クリエイティビティ」を基軸に新事業部を発足
2003年に本社を発祥の地でもある千代田区外神田に移転し、企画・デザイン・編集・商品開発を行うINCENX(インセンクス)事業部 を発足させた。INCENXとは、Incentive(人に行動を起こさせる動機、刺激)とWorks(良い仕事)を合体した名称である。全方位的ではなくセレクトされた顧客に対して、「クリエイティビティ」を基軸に、印刷物だけでなく、2D/3D、動画、Web、サイン、ノベルティーなどを提供している。同事業部Creative & Printingディレクターの山口誉夫氏は、「顧客の差別的・戦略的意図を十分に理解し、優良で価値の高いコンテンツを提供するためにはプロデューサー、ディレクター、マーケッターが社内にいることが重要である」という。

2D/3Dのポスターやパッケージを数多く手掛けてきた同事業部では、2011年8月に神宮前に立体グラフィックアートギャラリー「XYZ(エキシズ)」 をオープンした。切削メーカー永大と共同して、世界に冠たる日本の精密機器の切削技術とのコラボレーションを実現した。また、従来から技術提携している村田金箔、アロー企画の全面協力もあり箔押しのアート作品を交えて紹介している。

①切削技術+印刷技術+素材特性+デザイン=Bright3D Sign(ブライト3Dサイン)
アクリル樹脂の切削技術とデザインを組み合わせ、素材の透明度の高さから、厚手の高級ガラスに凹凸デザインを施したような、アート性と高級感を実現。バックライトとしてのLED発光を組み合わせ、屋内空間での存在感も演出できる。

②光造形技術+印刷技術+素材特性+デザイン=立体原型
3Dスキャンデータがなくても、3~4方向の平面写真から3次元の型を起こすことが可能。ガラス・プラスチック、金メッキ、コーティング、シルバー、チョコレート型、ブロンズ型などの硬質ウレタン・透明ウレタンによるバリエーション製造も可能。

③三次元彫刻技術+箔押し技術+印刷技術+素材特性+デザイン=立体彫刻版
平面写真を元に、専用ソフトから3次元立体データに仕上げ、精密3次元切削機と高度なオペレーションにて彫刻型を作成し、浮き出し印刷や、立体感ある箔押しにする。

④アルミ蒸着技術+印刷技術+デザイン=立体ホログラム
2Dでありながら、立体感とホログラムの輝きを併せ持つ3D印刷技術。

⑤レンチキュラーレンズ技術+印刷技術+デザイン=立体レンチキュラー
かまぼこ型のレンズを使用することで、高精細な立体印刷物を作成。

⑥金型技術+バキューム成形技術+印刷技術+デザイン=立体ポスター
凸金型で平面の樹脂素材から、デザインを浮き出させることで、2Dポスターから3D状に浮き出すポスターを作成。

印刷技術に様々な加工技術をプラスさせたアートな製品に「見て、触れて、感じる」機会となることから、クライアントからの引き合いも多く、立地条件も手伝い、ファッション業界の方なども訪れるという。ただ、山口氏によれば「クリエイティビティと技術力の成果を公開することだけが目的ではない」という。数年来の印刷業界の動向に危機感を持っていたことが根本にあって、「次世代の印刷の姿を追求する一環として取り組んでいる。今後も印刷産業の発展に力を注いでいきたい」との意欲を語っている。


XYZ(エキシズ)ギャラリー
東京都渋谷区神宮前3-6-28 半地下1F
見学は要予約

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