JAGAT Japan Association of Graphic arts Technology


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ネット時代に色の差別化で生き残りを図るために

掲載日: 2011年10月25日

TG色管理ツールのMacOS10.7(Lion)対応版のプロトタイプを公開しました。本日より2週間程度お試し版とした後、正式リリースしたいと思います。競合他社との品質差別化、印刷の安定化のために是非お使い下さい。

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今のところは紙の便利さが抜きんでているので、不便さの方が目立つ電子書籍も、手軽さや使い手側の意識が(新聞も文庫も読まないが、24時間スマホを手放さない若者のように)変わってくれば、新しいメディアというのがスマホ中心に展開されるに違いない。

電子書籍といっても、日本の出版は権利関係とかしがらみとか障害が多すぎるで、むしろカタログ・チラシ・パンフ類の商業印刷の方が進むのではないかと思われる。それもiPadというよりはスマホ中心に普及は進むのだろう。
今の若者は昔のようにお金が余っているわけではなく、ギリギリの生活をしている人が多い。そんなギリギリの生活でも切り詰めないのは携帯代金、いまならスマホの通信料金だからである。

スマホで見るiカタログをWebやSNSとリンクしたり、位置情報やらネットゲームとリンクして福引きしたり、ジャンケンファイトで値引率が決まったりと、今では考えられないような斬新なことが考え出されるに違いない。
フラッシュマーケティングのように画期的な広告手法が生まれてくるだろう。(少なくとも私はSNSをこのように使うとは考えもつかなかった)

そんな時代になると印刷はどのように見られるのだろう?
もともとマスに向いている印刷だからマスの価値は持ち続けるに違いない。問題は通販カタログなどの場合だが、評論家の人に尋ねると決まって「紙は不滅です。あの手触り感とか、雰囲気は絶対無くなることはないと思います。」という返事が返ってくる。しかしコレでは、現在の印刷常識から考えれば全く儲からないビジネスになってしまう。

手触り感に味がある紙というのは、印刷適性の悪い紙というように相場は決まっており、JapanColorのような印刷標準で印刷すると似ても似つかないような色で印刷されてしまう。各紙ごとにICCプロファイルを作らないといけない。JAGATが主張している印刷の標準化とは違うじゃないか?と思われるかもしれない。

確かにインターネットメディア等と戦っていくためには、印刷標準規格による短納期化やコストダウンが必要だが、このように印刷の魅力が嗜好品のように思われるのだったら、コレはコレで目を瞑るしかない。カラーマネジメント技術を活かして、デザイナーご希望の紙で楽々色合わせをしてしまうのも生き残りのアイテムである。色に関して自信がある会社はむしろこちらの方が差別化しやすいかもしれない。

マス的なビジネスではなく、嗜好に合わせたニッチ印刷である。しかし、これをかつての職人技でやっていたらコストがいくらかかるかわからない。ICCプロファイル作りをノウハウ化して、トラブルの出にくいプロファイルにまとめるワークフロー確立が必要だ。こんなノウハウに役立つのが、JAGATが提供しているTG色管理ツールだ。

TG色管理ツールでJapan Color 2001 UncoatedのCMYKカーブをチェックしているものを掲載しておくが、 コートしていない紙というのは普通では信じ難いグレイバランスをしているものなのだ。コレだとプロファイルを個別対応しないとやってられないのが理解いただけると思う。画像の色域チェック、CMYKカーブの繋がり、墨の入り方、分版によるトーンチェックくらいは、印刷会社として最低やっておかねばいけない常識と心得るべきである。

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しかし、現在のTG色管理ツールのMac版ではMacOS SnowLeopard(10.6)までが対応で、MacOSのLion(10.7)が発表されると動かなくなってしまったのだ。
まだまだDTPにLionを使うのはどうか?というのが現状だろうが、自分用の個人的なMacだけでもバージョンアップしてみることをオススメする。Windows Vistaでもタッチパネル的な運用が宣伝されていたが、あれは完全にマウス主導型のオペレーションだった。

しかしMacOS Lionはマウスが完全に邪魔になるという全く新しいインターフェイスを持っている。2007年1月10日、Appleはアップルコンピュータからアップル社になったわけだから、とっくにマウスを捨てていたのかもしれない。Microsoftは現在もコンピュータソフト会社だが、AppleはApple社でありながらコンピュータも売っている会社なのである。

是非一台のMacにLionを入れ、iCloudも試していただきたい。きっとこれからデジタルが目指すものが見えてくるような気がする。例え見えなくとも自分で体験すべきである。Lionの評価に関して、DTP仲間とは意見が合わないのだが、オペレーション感覚といい、私個人的には結構気に入って使っている。

(文責:郡司秀明)

 

追伸)現在TG色管理ツールを使っていただいている方も、Lion版をダウンロードしていただけば問題なく使っていただける。その場合には旧いTG色管理ツールを別のフォルダを作って退避しておけば、より安全だ。その際にはDocのリンク等は外れているので、再度取り直さないといけない。

プロトタイプをダウンロードして、zip圧縮を解凍、Mac特有の.dmgの圧縮ファイルが現れるので、それを再度ダブルクリックすればTG Toolsのディスクが現れる。そのディスクを開いてTG ColorCheckerをアプリケーションにドラッグすればインストールOKである。初めてお申し込みの方はパスワード申込みから行っていただく必要がある。

 

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