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人材教育の費用は、コストではなく投資である。投資は、短期的なものもあるが、企業で長く働く社員という人材への投資と位置づけ、有効な長期投資と考えるべきだろう。
印刷産業の出荷額が落ち込む厳しい経営環境のなか設備力の効果は薄れ、営業力・企画力が求められるなど、人材が果たす役割、重要性は高まっている。企業が求める優秀な人材の確保と、早期戦力化のための教育、ステップアップの仕組みの良し悪しが今後の業績を左右する。
■1人当たりの教育研修費用36,797円
教育には、OJT(On the Job Training、仕事上指導)、OffJT(集合研修など)がある。OJTは、上司の力量に左右されやすく、思うような結果が得られない場合、OffJTによる集合教育が重視されるようになる。指導者は、内部、外部講師に分けられ、それぞれメリット、デメリットがある。これらは、社員の能力向上、業務を適正にこなす目的として行われる。しかし、現在のような経済環境では教育研修予算は削減されるが、逆に必要な知識・スキルは増加する。
2009年度にOffJTを実施した事業所割合は67.1%である。業種別では、電気・ガス・水道業、金融・保険業などが高く、複合サービス事業、生活関連サービス業・娯楽業、宿泊業・飲食サービス業が低くなっている。企業規模別にみると、100人以上の企業において7割を超え、1,000人以上の企業においては8割を大きく超えている(厚生労働省 能力開発基本調査)。
また、人材育成に関して「問題がある」とする事業所は67.5%である。問題点の内容(複数回答)は、「指導する人材が不足している」(48.1%)、「人材育成を行う時間がない」(46.6%)の割合が高く、以下「人材を育成しても辞めてしまう」(35.8%)、「鍛えがいのある人材が集まらない」(27.4%)と続いている。
2010年度従業員1人当たりの教育研修費用は、36,797円(2009年度実績34,633円)となり、前年度比6.2ポイント上昇した(株式会社産労総合研究所 教育研修費用の実態調査)。
■人材教育は末長く働く社員への投資である
OffJTの内容をみると、「マネジメント」関連が高く、「品質・安全」、「ビジネスマナー等のビジネスの基礎知識」が続いている。具体的にマナー研修などは、直接売上や利益に結びつかないように思われがちであるが、社外や顧客に対するマナーが向上すれば、いろいろな場面で評価され、売上に貢献する。また、コミュニケーションスキル研修は即効性こそ乏しいが、社内の活性化や業務効率アップにつながり、生産性向上の基盤になる。
一時的な目先の売上増ではなく、研修・教育の効果が社内に定着した上で、次第に成果が現れてくることが企業として大きな効果がある。
現在のように厳しい経営環境では、教育コストの抑制と効果的な教育が求められる。しかし、教育に対する効果測定は容易ではない。教育投資が減少し、人材の質が下がり、企業力が低下するという悪循環に陥るケースも多い。ある企業では、他社との差別化を目標に効果が期待できるものについて、積極的に教育に投資している。
研修効果の測定ツールは、アンケート、チェックシート、レポート、報告会などがある。報告会は、人前で発表することから研修内容を振り返り、明確にまとめる必要がある。また、人前であらためて説明することで研修効果をより高めることができる。結果的に、研修内容と目標を再考するので効果がある。
最後に、人材教育の費用は、コストではなく投資である。投資は、短期的投資もあるが、企業で長く働く社員という人材への投資と位置づけ、有効な長期投資と考えるべきだろう。