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マーケティング手法の変化

掲載日: 2011年11月22日

従来クーポン市場にリアルタイム性と位置情報を組み合わせたこととスマートフォンの爆発的な普及が後押しし、ニッチな市場を切り開いたフラッシュマーケティング。マーケティング手法の変化を捉えつつも、ビジネスモデルについて注意しておく必要がある。

フラッシュマーケティングサイトの特徴として、「消費の前にチケットを購入する必要がある」「購入のための期間が限定されている(1日から数日)」「取引成立のための最小人数が決まっている」「割引率が高いものが多い」「特定の業種に限った紹介ではない」などがある。しかし最近では、取引成立のための最小人数については曖昧になっているケースもある。

ビジネスモデルとしては、ユーザがフラッシュマーケティングサイトに代金を支払い、フラッシュマーケティングサイトは手数料を引いて店舗等に支払う。そしてユーザは店舗等でサービスを享受する。この手数料については、グルーポンが50%と高額なのは有名だが、ポンパレなどはもっと下げていると見られ、実態は30%ほどではないかという。

このビジネスモデルは、ユーザにもクライアントにも双方に価値をもたらすものである。ユーザにとっては、今までに無かった形で、新しい消費経験を得られる。これは本来雑誌やテレビが担ってきたものだが、さらに自分にぴったりでタイムリーな要素を付加して情報が提供される。クライアントにとっては、新規顧客の集客を従来にないインパクトで、従来にない成功報酬型の価格体系での提供が得られる。また副次的な広告効果では、検索連動広告と同様にインプレッションも広告効果と考えることができる。

このようにユーザとクライアントを双方とも満足させる必要があるのだが、問題はいくつか生じている。期待したサービスの質や、既存顧客が離れていくことなど様々である。これまでにない集客手法であり、問題を起こしやすいデメリットもある。

市場規模は拡大している。2010年12月までは堅調だったが、2011年早々の「おせち事件」で若干落ち込んだ。さらに震災の影響もあった。しかしながら、4月以降は持ち直し、昨年以上に盛り上がっているのが実情である。各社サービスは乱立しているが、やはりグルーポンとポンパレの圧倒的な2強状態に変わりはない。他社は、旅行に特化するとか主婦向けに特化するなど差別化をして知恵を絞っている。共同購入型クーポンの拡大が示したことは、向く業種と向かない業種があるということである。飲食業のように原価がしっかり発生するところでは、大幅な割引は苦しい。逆にホテルやイベント施設など、稼働率が重視されるところは向いている。また集客にストレスが生じていた業態にも有効である。

USライス大学の調査では、共同購入型クーポンに対する評価として、「利益が出た」と回答したクライアントは55%もいた。「利益を失った」と評価したのは27%に過ぎなかった。クーポン客に占める新規顧客の割合は80%弱にもなり、クーポン価格以上の支出をした人は35.9%いた。その後リピートに繋がったのが19.9%もいる。なお、クーポンの未消化率は21.7%となった。
その他の調査でも、クーポンの再利用意向は高いクライアントが多い。しかしながらリピートするかとなるとそうでもない。それぞれのフラッシュマーケティングサイトを相見積もりするようなものであり、熾烈な手数料競争が予想される。

(Jagat infoより)(JAGAT 研究調査部 木下智之 )

 

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