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大阪を舞台に活躍・開花した企業家105人を紹介した「大阪企業家ミュージアム」があることを知る人は少ないでしょう。「知らない大阪の顔」「恐るべき関西の底力」を発見でききます。ぜひ足を運んでください。【西部支社だより(13)】
大阪商工会議所の創立120年を記念して2001年に設立された「大阪企業家ミュージアム」という記念館があります。地元の小中学生や関西地区の企業に就職した新入社員、あるいは関西(大阪)転勤となったサラリーマンの定番見学コースともなっています。明治以降に大阪を舞台に起業や活躍をした105人の企業人を紹介しています。ユニークな人や企業が多く何時間いても飽きることはありません。今回の西部支社だより⑬は、この105人から独断と偏見で6人の企業家の言葉を紹介します。
『世の中すべてヘイ、ヘイ、ヘイのガンでやれ』とは、かつての総合商社・安宅産業創業者の安宅弥吉の言葉。ヘイとは先に進むために一歩譲ったり相手の言い分を聞き入れることで、ガンは自身の主張や行動を多少強引でも通すことだそうです。なかなか面白いことばです。ヘイとガンの上手な組合せがビジネスのコツということでしょう。ところが創業者の言葉を忘れたのか、1977年新規事業をガン、ガン、ガンとやりすぎて破綻、70余年の歴史を閉じました。この安宅産業を合併吸収したのが、安宅産業創業からから遡ること46年、1858年創業の伊藤忠商事でした。1858年とは江戸末期の安政4年~5年で、ご存知「安政の大獄」の始まった年です。この年にはもう一つ重要なできごとがあります。日米修好通商条約の調印です。矢継ぎ早に日蘭、日露、日英、日仏の修好通商条約が調印され、海外との取引が始まろうとしていました。このような時、近江商人の伊藤忠兵衛(初代)が麻布の行商を始め、当時、高貴な色とされた「紅」を「紅忠」という商号として使い、のれんや半纏に入れていました。これが伊藤忠商事の誕生であり、商号「紅忠」のマークは後の「丸紅」となりました。両社の発祥は同で、関西を代表する総合商社となります。伊藤忠兵衛は利益三分主義をとり、店員への配当により勤労意欲を高め、多くの人材を育てることが商売繁盛の基本であるとしました。まさに近江商人の作法であり、今に通じる重要な哲学といえるでしょう。二代目伊藤忠兵衛も『商売人はいかなることがあっても嘘を言わぬこと』という言葉を残しています。
『鶏口となるも牛後となる勿れ』とは、有名な「史記」の一説です。これを信条として会社のマークにしてしまったのが、香取線香を発明した、大日本除虫菊創業者・上山英一郎です。若い人にはKINCHO(金鳥)といった方がいいかもしれません。あのユニークで面白い数々のコマーシャルを思い浮かべる人も多いでしょう。しかし同社はもう直ぐ130年を迎える老舗企業です。あのお笑いの「よしもと」も敵わないようなCMからは想像もできない伝統と歴史を持つ企業です。有名な鶏マーク「金鳥」は、なんと1910年に商標登録されています。
お笑いとくれば当然「吉本興業」の出番です。来年で創業100年を迎えます。誰もが知る
日本一のエンターテイメント企業であり、今風な言い方をすれば日本一のコンテンツビジネス企業といえます。それを物語っているのが、今の吉本興業の株主群です。同族・オーナー企業ではありません。創業家の資産管理会社が保有している株式は約8%です。株主のほとんどはフジ・メディア・ホールディングス(12.1%)を筆頭に、日本テレビ TBS、テレビ朝日、京楽産業、BM総研(ソフトバンク子会社) テレビ東京 電通 朝日放送、ヤフー、毎日放送、シーエスロジネット、ドワンゴ 、 松竹、KDDI 、関西テレビ、讀賣テレビ、東宝 角川グループホールディングス、タカラトミー 博報堂、博報堂DYメディアパートナーズ等々のメディア、ゲーム、ケイタイ関係の企業です。まさに時代の寵児です。
『時代は先取りです。誰の意見でも拝聴して、実行するせんはアンタが決める。失敗は何にでも付きもんで、恐れてては何もできまへん』とは創業者の一人・吉本せいの言葉です。
常に時代のメディアをうまく活用して成長してきた吉本興業のビジネス視点は大いに参考にすべきではないでしょうか。
さて、昨今注目される「デジタルサイネージ」ですが、サイネージ(看板)といえば本家は大阪。かに道楽の「動くかに」、グリコの電飾、食い倒れ太郎・・・・。中でも道頓堀川・戎橋脇にある巨大なグリコのネオンサインの初点灯はなんと1935年だそうです。現在は5代目。その江崎グリコ創業者・江崎利一の言葉が。『商売は2×2=5(二二が五)』。2×2=4は当たり前で、人一倍努力と工夫をすれば、5にも6にもなるというのが「グリコ精神」だそうです。
大阪のサイネージ(看板)で忘れてはいけないのが、創業118年になる森下仁丹です。誰もが知る「軍服姿凛々しい軍人?」の看板です。全国津々浦々、どこへ行っても見かけた看板です。創業者・森下博は明治の広告王とも称される企業人です。