JAGAT Japan Association of Graphic arts Technology


本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

DTPエキスパートのための注目キーワード -16-

掲載日: 2011年12月11日

カラーマネージメントの取り組み方(4)

カラーマネジメント全般、標準印刷、ICCプロファイルについて開設してきたが、今回はカラーマネジメントが重要になる色校正について取り上げる。Japan Color認証制度でもプルーフ認証(プルーフ運用認証とプルーフ機器認証)が設けられるように校正の標準化が求められてきている。

色校正の目的は
色校正は最終印刷物の仕上がりをあらかじめ確認するためで、その機器で綺麗に出すことでないことを改めて再認識してほしい。したがって、その校正の機器の再現色領域が、ターゲットとなる印刷物の色再現領域より大きくなければならない。その上でいかにカラーマッチング(ガモットマッピング)を正確になされているかがポイントとなる。いろいろな種類の色校正があり、あくまでその精度、用途に応じて使い分けられなければならない。

校正の種類
校正の種類としては、本機校正、校正機、DDCP、インクジェットなどがあるので、それぞれの特長/用途を理解する必要がある。その要求度は、印刷物の色確認のほかにも、いかに実物の印刷物に近いかもポイントになり、最終的には印刷機による本機での校正が望ましい。インクと用紙が同じであり、刷り出し確認、印刷立会いまでに至る。実際の印刷機を使うので工数とコストがそれなりにかかってしまう。
DDCP(Direct Digital Color Proofing)は、基本的には、印刷と同じ網点を形成して校正出力するものを指す。用紙では本紙を用いるものから印画紙を用いるものがある。本紙タイプでは、白色度や厚みも印刷物と同じになる。印刷物と同じ網点を仕様すれば、カラーマッチングに加えてモアレや階調のつながりなどがより実際に近い出力ができる。
最近多く用いられるものにインクジェットプリンターを使用するものがあり、イニシャルコスト、ランニングコストの面で導入しやすく、さらにカラーマッチングの精度も向上している。RIP済みデータの運用が出力保証の点から多く用いられている。主に連続調データあるいは1bitデータを使用するものがあり、通常、1bitデータにはDDCPと同様に印刷物と同じ網点が使われる。DDCPと同じレベルの精度が期待できるが、プリンター自体の出力解像度が実際の出力解像度には満たないので印刷物と比較してモアレと階調の再現が全く同じにはならない可能性があることも理解しておく必要がある。しかし、連続調データとの出力精度の比較では、モアレや階調、細線や小さい文字の精度はかなり向上した機器が登場しており、品質面での向上が期待できる。またインクジェットプリンターの場合は通常は専用紙が必要となるが、校正用途として印刷用紙にインクの受容層をコーティングした専用紙やインクの総受容量の高い用紙もリリースされている。

プルーフ認証(参考)
プルーフ運用認証:
プルーフ運用認証は、個々のプルーフ機器を実際の現場で正しくメンテナンスし、適正に運用することにより、印刷用途に使用できる信頼性の高いプルーフを安定的に出力することができる能力等を認証する。原則として、プルーフ機器認証を取得した機器を使用して運用認証を申請することになる。
プルーフ機器認証:プルーフ機器が、印刷用途に使用できる信頼性の高いプルーフ(出力物見本)を安定的に出力できる機能があるかどうかを認証する。審査にあたっては、プルーフ機器、RIP(出力のためのソフトウエア)、プルーフ用紙の3つの組合せで判定します(http://japancolor.jp/ より引用)。


例題:校正の目的
[ 1 ]インクジェットの色校正の色再現の特長について述べたものとして正しいものを以下の説明文の中から選びなさい。
①インクジェットのインクの色再現領域は、通常のオフセット印刷の色再現領域より大きいが、わざわざ色を印刷物に合わせてしまったらインクジェットでの校正の特長がなくなってしまい、色見本としての意味がなくなってしまうのであえて合わせ込む必要はない。
②インクジェットのインクの色再現領域は、通常のオフセット印刷の色再現領域より大きいが、単に出力しただけでは印刷物とは色再現が合わない。さらにオフセットインキとは色材が異なるので、ベタ濃度やトーンカーブだけでは合わせ込むことは難しいので、ICCプロファイルなどを利用して変換するしくみが必要になる。
③インクジェットのインクの色再現領域は、通常のオフセット印刷の色再現領域より小さいので完全なカラーマッチングをすることはどんな方法を用いても困難であるので、その特長を踏まえた上での校正用途として使わなくてはならない。実際の印刷物より鮮やかに出力されてしまうので、そのまま色校正として使用するとトラブルになる。
④インクジェットのインクの色再現領域は、通常のオフセット印刷の色再現領域より大きいので簡単にカラーマッチングを行うことができる。6色、7色のインクを使用しているプリンターでは、色再現領域がかなり印刷物の再現領域より大きいので、ほとんど色調整せずに印刷物の色再現と同じものが出力される。

[ 2 ]インキ校正について述べたものとして誤っているものを以下の説明文の中から選びなさい。
①カラーマッチングを行うには、必ずICC プロファイルでデータ変換して合わせ込みを行う。その基準カラーとしては標準印刷であるJapan Color 2001 に合わせておけば校正としての品質基準は保証される。
②同じ種類の機械を使用するにしても機械の調整、インキ・用紙などの材料、使用環境・条件を管理しないと同じ色再現は得られない。また同じ機械であっても、それらの管理をしていないと同じ色再現はできない。
③平台校正機・印刷本機で行う校正のカラーマッチングは、同じ種類のインキを使用しているので、ベタ濃度とドットゲイン調整だけでおおよそ合わせ込むことができる。
④平台校正機・印刷本機で行う校正は、実際の刷りと最も近い。同じシステムなので完成度・品質はかなり高いが、それなりに時間もコストも掛かるので用途に応じて使用しなければならない。

[3 ]DDCP の出力について述べたものとして誤っているものを以下の説明文の中から選びなさい。
①DDCP のシステム中に印刷物と同じSPM( screen pattern memory:網点形状)がなくても、受け取るデータが印刷で出力した時に使用した網点での1bit TIFF データであれば、印刷物と同じ網点で出力でき、モアレのチェックも可能である。
②DDCP の出力解像度とシステムに搭載されているSPM( screen pattern memory:網点形状)が印刷物と同じであれば、印刷上と同じ網点形状が得られ、モアレのチェックも可能になる。
③DDCP の色材は印刷インキを考慮して作られているが、全く同じ色には再現しないのでカラーマッチングをすると、同じ網点%にならない。したがって、色合わせを重視するのか、網点%を同じにそろえるのか、目的を明確にしておかなくてはならない。
④DDCP は、印刷物と全く同じ網点、同じ再現カーブで出力することにより、必ず同じ色再現にすることを目的にしている。

[ 4 ]インクジェットプリンタやDDCP の出力について述べたものとして誤っているものを以下の説明文の中から選びなさい。
①DDCP タイプの中には印刷の本紙に転写するタイプがある。これを使用すればより紙白の白色度、厚み、手触りなどが印刷物に近づき校正物としての精度が向上する。
②DDCP の色材やインクジェットのインクでベタ濃度や単色での濃度再現カーブを印刷インキに合わせたとしても、重なり合った時の透明度、透過度が印刷インキとは異なるので2 次色、3 次色の発色が異なる。
③インクジェットの印刷物と同じ1bit TIFF データを出力しても、インクジェットプリンターの出力解像度がCTPやイメージセッタとは異なるので全く同じ網点再現はできない。リアルドットではあるがある程度のモアレの再現の予測として扱わないとトラブルが発生する。
④インクジェットの印刷物と同じ1bit TIFF データを出力することで、印刷物と全く同じ網点再現ができる。それによって印刷物上で発生するものと同様のモアレを再現することができる。(教育サーポート部) 

***************************************

解答
1:② 2:① 3:④ 4:④ 

(C) Japan Association of Graphic Arts Technology