本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
page2012カンファレンスでは「価値観を根底から変えなくてはいけない」という刺激的なエッセンスが満載だ。予習の意味で今までの道徳観念を再考する必要もある。
「良かれと思ったことが良くなかったり」「正しいことと思ったことが、実は違っていたり」等々、インターネットの世界は難しい。例えば著作権や個人情報は守るのが当たり前ということに対して、日本だったら「こうしてはいけない」「これは個人情報的に問題だ」ということで、否否否という行動パターンが出てくるはずだ。
しかし北米では個人情報の大切さや、著作権をキッチリ教えてはいるのだが、内容がどうも異なっているようである。
例えば個人情報だったら「こういう風に利用すれば個人情報には引っかからない」「こうすればこのデータは利用できる」「この段階でサインインしてもらえば大丈夫」等々、「これは駄目だ」ではなく、こうすれば利用できる的な教育をするのである。
その代わり著作権等はキッチリ運用・管理している。しかし、海のモノとも川のモノともわからない段階で著作権の主張など絶対にしないのである。そしてメジャーになるとキッチリやり始めるということである。
かつて日本のカメラメーカーがターゲットにされたオートフォーカスの特許などがこの好例で、いわゆるサブマリン特許というものだ。お金がないところにいくらお金を請求しても始まらないので、特許を不当使用させておいて儲かったところで訴えを起こすという日本人から見ると「?」な手法である。
インターネットの場合はグローバル世界が前提になるので、著作権にしても世界で通用する常識が必要不可欠である。ビジネスにしてもクリス・アンダーソンが提唱しているようなFreemium(フリーミアム)という普通の常識では理解できない概念を学問としてMBA等で勉強する時代なのだ。
ここには「著作権は大事なのでこの写真は使ってはいけない」「このサイト、無断で俺の写真を使いやがって」ではなく、高品質の無料写真はネットで探せば必ずあるのでそれを使い、自分の写真に価値が付くまでは、無料の広告目的を明示した写真としてWebにアップしてしまうことなどが、世界常識として存在している。
写真サイトとして有名なFlickr(フリッカー)をご覧いただきたい。コマーシャルで通用する写真がゴマンと掲載されている。
こんなビジネス世界を凝縮したのが2月8日の基調講演1「Google・Yahoo! JAPAN・TSUTAYAの考える電子書籍世界戦略・国内戦略」 である。
Googleが何を考えているのか?Yahoo Japan!はGoogleとは少し温度差があるだろうし、TSUTAYAは日本独自の戦略を提示してくれる。そしてモデレーターの井芹氏はインターネット・ITのご意見番として印刷業界への適切な助言をくれるはずである。
2月10日の基調講演3「デジタル印刷成功の法則—印刷のいま、あしたを考える」 では、電通オンデマンドグラフィックの輿石社長から、印刷業界への提言というより「こうでない印刷会社は要らないよ」という辛口の本音がいただけるはずである。
対して錦明印刷の塚田社長はいままでの苦労話を背景にした印刷業界代表という感じで受けてもらう予定だが、単なる社長の「やります」「出来ます」話で終わらせないためにも、現場を預かっているマネージャーの方に出席いただき、身のある議論をしたいと思っている。これは中々オススメのセッションだ。
そして2月8日グラフィックスカテゴリ1「事例に学ぶCG・AR・動画ビジネス」 も価値観という意味では興味深いセッションである。
まず動画から話をさせていただく。この新しいビジネスに挑戦したのが広告製版業界の株式会社日庄であり、個人的に強く興味を引かれたのである。広告製版業界とはいわゆる新聞向けの広告製版を専業としている会社で、少し前ならものすごく儲かった業界である。例えばT社のクラウンの全面広告など単価が高いところに日本全国へ掲載するので、販売会社名などを変えるだけで同じ単価がいただけるという割の良いビジネスだったのだ。昔は紙型という鉛版用の製版が必要だったので各新聞社微妙に設定数値が異なっていたのも幸いしていた。
しかし、そんな時代もデジタルと共に消え失せてしまい、新しいビジネスを模索しなくてはいけないということで、株式会社日庄 はN-Base という動画スタジオを別会社として立ち上げたのだ。
この辺の詳しい話は別の機会にさせていただくが、同時にARで講演いただくピップス の方達と、新しい価値観の中でのビジネスということで盛り上がってしまった。代表に出てきた人物がLady GAGAで、「彼女は根性が違う」という内容だったが、この話も詳しくは後ほどにさせていただく。
とにかく価値観が異なっているんだということが体感できるカンファレンスなので是非受講いただきたい。