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「長い間自社を支援してくれた地域のために何かしたい」、「街の魅力を発信したい」、「住む街を面白くしたい」、「自社オリジナルコンテンツを開発したい」、「新しいビジネスの軸がほしい」など理由は様々だが、地域をテーマにした新しい取組みが増えている。
「企業が長く存続するためには、いいモノをつくり、地域の人々の喜ばれる存在でいなければならない」と答えるのは、(株)文伸の川井信良社長だ。文伸は、1962年に東京・三鷹で設立された。千駄ヶ谷に住んでいたが両親の事業が上手くいかず、一家で三鷹に引越し、全くのゼロから印刷会社をスタートした。
当時は「都落ち」と感じた三鷹への転居だったが、井の頭公園や太宰治など、三鷹が持つたくさんの魅力を知るにつれ、いつしか「おもしろいこと、楽しいことをして、自分が住む街を誇れる街にしたい」という意識を持つようになり、青年向けミニコミ新聞や地域ミニコミ新聞を創刊し、地域住民への情報提供を行うようになった。
川井氏も含め、三鷹市や武蔵野市は市外からの移住組が多く、自分の街を知る機会が少ない。その状況に問題を感じていた川井氏は、街の魅力を伝えるため、1995年から「みたか市民ネットワーク」に参加して太宰治など三鷹の財産を伝える市民観光ガイド養成講座を開設、また、1999年には紙以外のコミュニケーションツールを模索し、街の情報を伝える「むさしのみたかテレビ局」設立に参加した。
2009年11月、それまで約10種類あった観光マップやガイドを1つにまとめ、「統一観光マップ」を作るプロジェクトが持ち上がった際には、地元・三鷹の魅力を知りつくす川井氏のもとへと依頼が舞い込み、エリア別・テーマ別に7つのお薦め観光コースを掲載した「みたか散策マップ」をつくり上げた。
■「みたか散策マップ」が反響を呼び、武蔵野市でも「むさしの観光まっぷ」を作成
「地元のことは地元の業者が一番よく知っている」と、地域の魅力を詰め込んで作った「みたか散策マップ」は増刷を重ね、当初の3000部から、現在では既に2万部近く刷っている。観光客だけでなく、地元住民も手に取り、自分が住む町の魅力を再発見し、市内観光地に足を運ぶツールとして多くの人に利用されている。
■図は「太宰治の足跡コース」。手書きイラストマップには、知る人ぞ知る観光名所と案内が書かれている
川井氏は、活動を通して多くの人と付き合うなかで、印刷会社にしかできないことがあると感じたという。何か新しいモノを作り出すとき、ディレクション、プロデュースできる人は少ない。しかし、普段からモノを作り、問題解決のノウハウを持っている印刷会社は、人と人、人と地域をつなげる架け橋になることができる。
自分が生き、暮らす地域を大切にする気持ちを持つ仲間とともに、街を知り、街を考え、街を伝えて、街を作っていける絶好のポジションにいる印刷会社。地域の課題をともに解決し、パートナーとなって取り組むことで、地域から信用され、長く存続する企業となっていけるのだ。
カンファレンス「印刷会社と地域活性 ~東北・東京・大阪、各地の事例から~」では、福島・いわき市 、東京・三鷹市、大阪・堺市で 地域の課題に取り組み、成果を残しているスピーカーをお招きして各社の事例をご紹介いただきながら、印刷会社が取り組む地域活性化ビジネスや課題解決のノウハウについて議論する。
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■page2012カンファレンス 印刷マーケットカテゴリ
PM2 地域密着から拓く新ビジネス~東北・東京・大阪、各地の事例から~
日時:2月10日(金) 15:15~17:15
【スピーカー】
(株)いわき印刷企画センター 常務取締役 鈴木一成氏
(株)文伸 代表取締役社長 川井信良氏
ホウユウ(株 ) 専務取締役 田中幸恵氏
【モデレーター】
JAGAT 研究調査部 シニアリサーチャー 藤井建人