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閑散期はどの加工会社へも発注しやすいが、繁忙期はそうはいかない。納期遅れなどの事故を回避するため、印刷会社の発注部門は閑散期でも協力会社とコミュニケーションを取る必要がある。繁忙期を乗りきるための対策を普段から考えることが重要だ。
協力会社の仕事状況を常に把握する
繁忙期における製本後加工会社の受注状況はパンク寸前まで膨れ上がる。多方面から仕事が集中し、初めての印刷会社から頼まれることもある。また、綴じはできるが折りはできないなどの理由により一貫して発注してもらえない状況も発生する。さらに、納期対応のため2次3次外注があたりまえになり、トラブルが発生しても責任の所在が不明確になる等いろいろな問題が発生する。
都内の中堅印刷会社では約50社の協力会社と取引があり、中綴じ、無線綴じ、上製、折本、箔押し、パッケージ等の専門部門ごと細分化している。そこでは毎朝一週間先の生産計画表をFAXで送ってもらい、どの会社で仕事が何%埋まっているのか一覧表にしてワイトボードに貼りつけている。仕事の状況について発注担当者はもちろん誰でも把握できる。これにより無作為に発注するのではなく空いている会社にピンポイントで発注できる。
また別の方法として、印刷営業が受注した時点で協力会社の機械取りをする。下版が決まっていなくても仮発注ということで機械を押さえる。ただし、下版や仕様が変更する場合は、一度外すこともある。しかし、その仕事が近いうちに入る可能性があることを協力会社に意識しておいてもらい、改めて発注する際のスムーズなやり取りや、短納期への作業対応をより容易にすることに役立つ。
割り振りに苦労する発注担当者
加工設備を持っている印刷会社の加工部門にも売り上げやノルマが課せられている。しかも、協力会社に出すより社内で作業したほうが利益率もよく短納期対応もでき品質管理も容易である。そのため、社内方針で閑散期はできるだけ内製化するケースも多い。しかし、閑散期は協力会社に発注せず、繁忙期のみ協力関係を維持することが困難なこともある。従って、その時々の仕事量に応じて協力会社に配慮することも必要になる。
印刷会社の発注担当者は、協力会社との関係を維持するために割り振りを工面しながら板挟みになることが多い。
お互いの技術知識を習得する
加工の種類は様々な物があり、CDを挟み込むにも中綴じの機械に特殊な装置をつけたり、2丁製本したりすることもある。特殊な作業に関しては専門の協力会社に発注しなければならない。
また、印刷会社の発注者は協力会社にいろいろな要求をする。そのためには手配するときに加工の手間や難易度を理解した加工知識を持たなければならない。ベテランの発注担当者は指示書を見れば作業の流れをイメージできる。しかし、なかには中綴じと無線綴じの区別もできない発注者もいるようだ。
加工知識を得るのに有効な手段の一つとして、時間を作りやすい閑散期に協力会社を訪問し、工場を見学することだ。いつもどの機械で作業しているのか発注者の目で確認することで勉強になり、それが相互の利益になる。印刷会社と協力会社である後加工会社の双方がこうしたコミュニケーションを取ることができれば、繁忙期の仕事をスムーズに処理できトラブルも回避にもつながる。 (伊藤禎昭)