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FSC認証制度のさらなる普及に期待

掲載日: 2012年03月10日

世界の森林は違法伐採でその面積は減少しているといわれている。これに対し、日本の森林面積はほぼ横ばいだが蓄積量は年々増えている。森林を持続可能な経 営ができるようFSC(R)(Forest Stewardship Council)認証制度が設立されているが、この制度は一般消費者にはあまり知られてない。いかに認知度を高めるかが今後の課題だ。

■紙は2つの循環で成り立っている
紙は木材を使って製造されており、循環する材料とよばれている。原料には古紙パルプとバージンパルプの2つが循環している。国内では年間約2500万トンの紙が製造され、そのうち古紙パルプが6割でバージンパルプが4割使用されている。古紙パルプはそれだけで紙の強度が弱くなるので新しいパルプと混合させることも必要になる。ここでポイントはバージンパルプをつくるにしても持続可能な森林経営をしないといけないことが製紙メーカーに課せられていることだ。その対策のひとつがFSC森林認証制度で、FM認証とCOC認証の2つがありチェーンで繋ぐとラベリングができるルールだ。

■日本の取得事業社数は世界7位
国別の森林認証取得事業社数では日本は7番目だ。国内では約1100事業所が認証をもっており、このうち約7割が紙関係で残りの3割が製材、木工関係だ(Global FSC certificates:type and distributionより2012.2現在)。
日本でFSC認証制度が注目されたきっかけのひとつにリサイクル用紙の偽装問題がある。また、印刷後加工現場からも再生紙よりFSC認証紙のほうが印刷事故の発生比率が再生紙に比べて低い。バージンパルプを使ったFSC認証紙だと紙粉も少なく価格も再生紙とほぼ同じだ。ならばFSC認証紙を勧めなさいということである。製本現場でも同じようなことがいえる。まず断裁刃にかかる負荷が違うため、古紙を断裁していると断裁刃の交換頻度が高くなる。品質管理の面からも再生紙を加工していると不良率が高い。再生紙は切り口にザラザラがでやすいが、FSC認証紙ではそういうのが少なく品質の安定にも繋がる。

■一般消費者の認知度を高めるための課題
リサイクルマーク・プライバシーマーク・SOYマーク等がいろいろな印刷物に表示され一般消費者間ではある程度の認知度がある。一方、FSCマークは企業が使う印刷物に表示されているものが多いので一般の消費者には目に付き難い。
こうしたことから、紙の調達に関してFSC認証紙の採用がいろんな業界で始まっている。自動車産業、家電メーカー、化粧品業界や銀行で使用する印刷用紙にFSC認証紙を調達しているところがある。出版業は本という紙を大量に使った製品を扱うので参加している。
最近では、大手製菓メーカーのアイスクリームのパッケージにFSCラベルが付いている。また、コーヒーメーカーの詰換え用コーヒーパック、ティッシュペーパーや車のカタログに採用されているものもある。徐々にではあるが最終の消費者でも目に付くようなものが出始めているが、まだまだ一般消費者の認知度は低い。
日本は世界で7番目に認証取得事業社が多いことから、FSC本部も日本は重要な市場と考えており、今後FSC本部から資金を出してマーケティングを強化することになっている。いかに一般消費者の認知度を高めるためにはどうしたらいいかも検討される予定だ。同時に製紙メーカーもバージンパルプをいかにうまく使い、かつ環境の側面から負荷のかからないものであることをいかにPRしていくのかを考えていかないといけない。 
そのためには製紙メーカー単独でPRしても限界があるので、FSCジャパンやFSC本部と協力しなければならない。もうひとつ、認証料が高価という指摘もある。これについても各関連団体の意見をとりまとめて解決することも普及を拡げる鍵になる。(伊藤禎昭   取材協力:三菱製紙(株) )

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