本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
2011年、印刷業界最大の関心事の一つは単価の下落だ。オフ輪、枚葉とも単価の下落が続くにもかかわらず材料コストの値上げがあった。会社によってはその差額だけで月に数百万円になるところもあるが、その差額分を単価に反映できないという厳しい状況がある。
2011年、印刷業界最大の関心事の一つは単価の下落だ。オフ輪、枚葉とも単価の下落が続くにもかかわらず材料コストの値上げがあった。会社によってはその差額だけで月に数百万円になるところもあるが、その差額分を単価に反映できないという厳しい状況がある。一方震災後、社会の生活様式が変化するなかで、これからは消費者目線でのモノづくりについてより一層考えていかなければならない。今回は2011年末にうかがった各地の声をまとめてみた。
オフ輪機の台数が減退
オフ輪を所有する会社の経営者によると、4年前に比べ単価が約3割落ちているという。とくに2010~2011年にかけての落ち込みが大きい。皮肉にもワンパス1円であった時代が懐かしいくらいで、チラシについては7銭という場合もある。刷版代も印刷会社が希望する価格ではとれず、なかなか利益を出せない。
2011年はオフ輪機の保有会社の倒産が多くあった。西日本の会社では、台数が減っているのでもうこれ以上安い値段の受注をやめようとする動きもある。それで価格が安い仕事は東京の会社に発注する傾向があるようで、逆に東京の会社も関西納品のものが増えたという話もある。オフ輪は「回さないより回す」ことが今までの印刷業界のセオリーだったが、2011年秋ころから回さないという会社が増えてきた。それだけコスト高と単価の下落が深刻ということだ。
枚葉機でもオフ輪ほどではないが、材料コストの上昇と単価の下落傾向がある。枚葉機の小ロットについては、印刷の通信販売関連企業が台頭している。これは中小の企業や商店がカラーの小部数のチラシやパンフレット等を作りたいというニーズに応えるものと思われていたが、発注件数の多くは印刷会社からの発注のようだ。したがって、自社ができない仕事をできる会社に発注するように、相互の長所を噛み合せてうまくお付き合いしている印刷会社もあるようだ。
近年の注目はLED-UV乾燥システムだ。この乾燥システムも多くの企業が導入した。一方で導入を見送った企業は、その理由として油性インキと比較した品質やコストの問題があるという。また、輪転でもLED-UV乾燥が検討されており、今後の実用化が期待されている。
環境、安全、安心への配慮
東日本大震災以降、市民生活も変化した。世の中の節約志向により消費が縮小する懸念もある。一方、震災復興について環境に対する危機や、消費者の安全安心を担保するものは何かについて、企業はいろいろなアプローチを試みている。例えば、ある家電メーカーの宣伝も以前は製品のメリットを強調したが、今では「省エネ」や「みんなの力で」というライフスタイル全体を提案しながら情報を発信していくようになっている。
環境問題は印刷業界も含めた市民生活の課題なので避けて通れない。製品AとBが購入の検討するときも、消費者はこれを作るための廃棄物や消費エネルギー、排出されたCO2が低いのはどちらか等、企業の社会的責任を観る。それは新製品だから必ずしもよい製品とは言えないという目線で見られるようになったということだ。その延長で考えると、印刷物も同じような目線で見られるようになる。例えば「この印刷物は安いけど臭うね」というようなことへの対策も考慮しなければならない。
多くの印刷会社は機械や仕事本位で印刷物を製造してきた。これからはその先にある環境問題、安心、安全というものを先読みする必要がある。(伊藤禎昭)