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印刷後加工分野は印刷事業と同様、震災以降、厳しい経営状況にある。中堅レベルの会社でも廃業している後加工業者もあった。一方でロットも減少し単価も厳しい中で廃業した会社の仕事を引き継いで、逆に仕事の件数は増えたところもある。今回は2011年の動向と今後の課題について、各地の声をまとめた。
節電と製品の品質管理
2011年夏は節電対策があり、小さな会社でもデマンドモニターなどを導入せざるを得なかった。後加工業者も事務所のエアコンの設定温度を28度Cにするなど機械自体を稼働させながら、それ以外の細かなところで節電を行った。
印刷後加工の工場・倉庫内の空調は常に一定に保つ必要がある。その理由として、単にページの表紙に表面加工されていればよいというのではなく、毛抜き合わせのような高い精度が要求される仕事が多くなったことがある。そうなると、例えば全判の紙に絵柄が多面付けされている刷り本を空調が保たれていない倉庫にしばらく置くと、紙が伸縮して後加工(箔押し等)見当が合わないことがある。
数年前から書店でよく見かけるが、有名ブランドのバッグ等が付録についている雑誌がある。付録を入れるためのケース(業者間では製缶といっている)作りに追われる業者もあった。
新たに検討すべき方向性
IGAS2011でも、デジタル印刷機と後加工の組み合わせが話題となった。デジタル印刷機は実用段階に入ってくると見られている。これは、後加工といっても決して複雑なものではなく、ニス引きや中綴じ、無線綴じなど簡易なものだ。これからはデジタル印刷機の無線綴じ三方断裁などが必要性を増してくるだろう。
オフセット印刷機で5000部刷ったものに、50部や100部という少ない単位で部分的な名入れなどの差し替え部分をデジタル印刷機で印刷するケースも出てくる。それらに表面加工を施す必要もある。この場合、オフセット印刷用のインキとデジタル印刷用のインキとでは後加工のしやすさは変わる。言い換えれば、インクを弾く可能性もあり、同じ材料では支障がでる可能性もある。今後、後加工業者にはこのような細かいノウハウの蓄積が求められる。
後加工機は、いまだアナログ部分は多いが、これからはデジタル化に対応する必要がある。従来、後加工はオフラインのケースが多いため、急な仕様変更など即座の対応が困難だ。ワークフローのフォーマット化が重要ポイントになる。印刷物の仕様は、設計段階で後加工からのフィードバックがなされて正確なものになる。ここがうまく機能されていれば、社内作業は効率よく進行できる。
しかし、外注管理には必ずしもうまく機能するとは限らない。後加工業者と印刷会社との間でいかに連携を密にとれるか大事になるとともに、今後リアルタイムに情報が伝わるようなシステム構築が期待される。
箔押しは意匠性を高めることに加え安全性確保が注目されている。クレジットカードに使われている2D、3Dの本格的なセキュリティホログラムでなくても、箔に関する版の制作も細かくできるので、既存のパターンホログラムでも偽造防止に使えるようになった。例えば500円硬貨は斜めにすると500円の文字が見えてくるが、これを潜像(せんぞう)加工と呼んでいる。箔押でこの効果を出すことも可能になった。今後、そうした組み合わせによって、セキュリティ面で高い安全性の確保が進んでいくことが予想される。 (伊藤禎昭)