本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
2012年3月試験の結果を5/19Webにて先行公開しました。試験講評を課題試験を中心に掲載します。
筆記試験と実技課題を合わせた最終合格者は138名(合格率39.8%)
今回の最終合格率は、前回36期より合格率で10%ダウンであり、 ここ数年では、32期(35.8%)に続く低い合格率となった。
筆記試験の合格率は、44.1%と前回より約10%ダウンで、ここ数年でみるとかなり低い合格率であった。新問題の傾向も特に多かったといったこともなく、また全くはじめてと言ったような新しい項目はなかった。デジタル印刷を中心としたワークフローやDTPアプリケーションの基本操作、DTPアプリケーションの運用など実際の仕事のシミュレーションをテストで実践するといったビジネスの場を想定した出題がいくつかあった。全体の出題構成の割合も従来の割合と大きくは変わらず、デジタル印刷、電子書籍、デジタルサイネージといった多様なメディアの展開から、多様なワークフローなどの設問が多くなっている。
今回のカテゴリー別の正答率の傾向もここ数年の中で全てのカテゴリーで多少低かったようで、カテゴリー1、3、5で受験者全体の平均点が合格ラインを下回った。カテゴリー別の合格率はカテゴリー1で58.5%、カテゴリー3で58.5%、カテゴリー5で50.1%と低い数値となっている。
ただし、学科不合格者の中で一つのカテゴリーだけで不合格になった割合は、今回特に低いわけでなく、不合格者の多くは複数でのカテゴリーで不合格となっている。
【概要】
第37期の課題合格率は提出者ベースで例年より上回った(89.3%)。提出期間が4週間になり1年程経過したが作成期間が特に短いといった意見は聞かれなくなった。提出率は、78.4%(学科受験者ベース)と高くなく学科試験の結果を自分なりに見切ってしまい取り組みをされなかった方が多々いると予想される。やはり中には学科合格にもかかわらず課題の不提出で不合格になられた方が若干名はいるので、是非課題試験にも取り組んでいただきたい。種別はA課題が15.5%、B課題が83.0%、C課題が1.5%を占めた。この比率は、ほぼ従来通りである。やはり端物であるB課題の選択が多い。自由課題のC課題の提出の増加を期待したいところであったが、実際の状況を見るとかなり低い提出率で推移している。課題合否の内訳は、総受験者347人、課題合格243人で課題だけの合格率89.3%(不提出者75人を除く)となり、提出者中の不合格29人、うち条件違反/不備10人であった。今回の条件違反の内容は、やはり作品サイズ違い、設計図に作品のキャプチャーを使用するものであった。作品と制作指示の片方だけの不提出はほぼなく、時間切れで片方だけをやもを得ず提出したものや、その内容が白紙であったりしたものはごく少数であった。
【作品】
作品は概ね前回同様に合格基準にほぼ達している。極端に印刷物として全く通用しないものはほとんどなくなった。アプリケーションや制作環境の進化とともに全体のボトムアップの影響であり効果であると考えられる。デザイン性ユニーク性から見れば実際の印刷物としてはまだまだレベルとしてもの足りないものもあるが認証試験としては概ね問題の無いレベルである。
AB課題ともに原稿増減への対応も満点とはいかずとも各作品で何かしら工夫のあとは見受けられた。 PDF/X-1aでの提出に関してもほぼ準拠したものであった。
A課題では、版型を横長の要件にしたが、ほぼ指定通りに作成された。数ページのマニュアルにもかかわらず改ページの処理、基本的な組版処理が十分でなかったものがいくつか見受けられた。B課題は従来の「ロンドン」のリメイクであった。提供するイラストの図も従来通りイラストではCSでの透明効果を含むものであるが、特に大きなトラブルもなく大部分の方が適切に処理を行なっている。但し適切なアプリケーションを使用しないとバージョンが異なると不適切な変換をされてしまうので注意してほしい。ただし、アイキャッチの使い方、問い合わせ先の訴求など実際のパンフレットと比較するとまだまだ不十分な項目もあるのでその辺りも踏まえて是非全体のレベルアップを期待したい。C課題は、実際に仕事とした物を対象にしたものであるが、こちらで期待した程の提出作品の点数はなかった。その中でも作品レベルとしては概ね問題ないものであった。あまりに要件からかけ離れるものにはそれなりの採点を行う予定である。今回のC課題の全提出課題に対する比率は、1.5%にしか満たなかったが、今後是非C課題を活用していただきたい。
【制作指示書】
制作指示書自体のレベルは、ほぼここ数年と同じである。制作指示書自体がテンプレート、もしくは統一された書式を用いて作成されているものがやはり大部分を占めた。機会があって以前の制作指示書を参考にすることは特に問題になることではないが、それが十分なものなのか不十分なものかは是非精査はしていただきたい。特定の書式を使用しても問題はないが、記述して内容詳細を書いていなかったり、大部分を自由裁量(例えば、スタイルの基本事項:フォントの種類・文字サイズ・行送りなど)にしているものは減点の対象とした。レイアウト設計図に関しても個々のパーツとの整合性がとれていないものや、パーツ寸法・配置指定が不十分なものがまだいくつかあった。その中にはその程度によって再現不能と判断せざるをえないものもあった。 作品のキャプチャーを設計図として使用する指示書もまだあったことは残念なことであった。
(資格制度事務局)