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オンデマンドでビジネスニーズにあう印刷物を提供するデジタル印刷

掲載日: 2012年07月01日

デジタル印刷は、前準備の省略とイニシャルコスト削減を実現し、必要な時に、必要なものを、必要なだけを供給できる。さらに従来の印刷ではできない仕組み、展開が考えられる。【DTP エキスパートのための注目キーワード1:デジタル印刷】

デジタル印刷とオンデマンド印刷(≠ POD:Printon Demand:「要求があり次第に」)は、現状では明確に区別されることなく使われている。オンデマンド印刷は、注文があり次第にすぐに印刷できる印刷機もしくはそうした仕組みを指す。紙面データを直接印刷機に送り込み無版で出力するもので、カラープリンターの延長線であるとも言えなくない。短納期・小ロットに対応する仕組みであり、実際にそれを実行できる印刷機がデジタル印刷機ということであり、オンデマンド印刷とデジタル印刷は同じような意味で使われる場合が多い。

デジタル印刷の品質面は、オフセット印刷と比較すると多少の優劣はあるももの、対象となる印刷物によってはデジタル印刷でも全く問題のない品質である。
デジタル印刷は、オフセット印刷が印画紙・製版フィルム・CTPなどで版を作成するのに対して、無版印刷であるため、前準備の省略とイニシャルコスト削減を実現し、必要な時に、必要なものを、必要なだけを供給できる。さらに従来の印刷ではできない仕組み、展開が考えられる。

従来の印刷方法との比較においては、版材のコストがかからないので1 枚からでも出力ができるために、出力部数当たりの単価の比較がよく示される。どの程度の部数までならデジタル印刷のコストが安く、どの部数以上だとオフセット印刷の方が安くなるといったような比較である。

従来の印刷で見ると、一定部数以上を印刷すればその後は部数が上積みしても印刷代自体には大差ないので、余分に印刷して在庫するといったことがよく行われていた。しかし、昨今の環境問題に関わるムダ(使用しないで廃棄)、ストックエリアの確保(未使用分の保管スペース)、紙面の更新の必要性(時間経過に伴う改訂)などの多くのデメリットがあり、最初の必要なロット数は慎重にならなくてはならない。したがって、デジタル印刷を使って最小限の必要部数をオーダーごとにデリバリーできることの方が、今のビジネススタイルに合っている。

一方では、両方の印刷の特徴をうまく活用して納期やロット数、コストによって出力機の使い分けを行うハイブリットワークフローも提案されている。そのためには、出力機の色合わせも含めた品質差がほぼ同じであることが要求される。

デジタル印刷の特徴の一つにバリアブル印刷がある。この機能を利用することによって効率のよいOne to Oneマーケティングや顧客に対するきめ細かいサポートが実現できる。バリアブル印刷は、一括大量かつ同一なコンテンツの生産方式に向く従来の印刷方法と比較して、ダイレクトメール、開封率の高い請求書などで、性別・年齢・業種、販売履歴などによってセグメントした個人の情報をもとにデータの可変印刷を行い、個別に的確な情報(印刷物)を伝えることができる。

バリアブル印刷も出力機に対してはフレキシブルな対応が必要になることがある。相手に合わせた訴求対象の絞込みを、顧客データベースやバリアブル編集ソフトを組み合わせてシステム構築して対応する。これらを利用することで相手からのレスポンス率を高めたり、印刷物自体の価値、有用性を高めたりしている。

例えば請求書自体の発行が減少する現状で、トランスプロモによって紙の請求書の訴求力をどの程度上げられるのかがポイントになる。一方、従来のコロタイプ印刷の代表格である卒業アルバムに対しても、個人ごとに特化して、付加価値のある印刷物の展開も図られている。

デジタル印刷機では、生産性やスピード、製本をはじめとする後加工ができる機能がオンラインされたものなどがラインアップされている。また、従来のオフセット印刷機にインラインでインキジェットヘッドを搭載して可変データに対応する製品も開発されている。

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