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印刷会社の色校正は、インクジェットプリンターを活用したものが一般化している。
コスト削減に向けて
色校正に対する精度の要求具合に応じて各出力手法がある。
本機校正や平台校正など刷版を要する高精度・高品質の手法が少なくなる中で、DDCP(direct digital color proof)と称されるデジタルプルーフが、品質も上がり主流となっていた。DDCPには、専用機による本紙転写タイプ、印画紙タイプ、インクジェットプリンターを使用したタイプがある。専用機による印画紙タイプは、1991年に初めて市場に出されて、用途に応じた高品位な色校正として主流となった。その後、品質要求とコスト削減の兼ね合いの流れの中でDDCP専用機は販売を終了する製品も出始めた。
ランニングコストの比較では、概ね本紙転写タイプ>印画紙タイプ>インクジェットプリンターであり、現在では、インクジェットプリンターによる色校正が多くなってきている。
インクジェットプリンターの変遷
インクジェットプリンターが校正用途として活用されたのが1980年代後半からである。当初、海外ではグラビア印刷用の色校正として使われ、日本では水性染料インクの大判タイプのインクジェットプリンターが利用された。しかし、染料インクは出力後の色が安定するまでに時間がかかり、校正用途として運用しづらい点があった。
2000年代の半ばから、専用機によるDDCPに替わってインクジェットプリンターを使い出す動きが高まった。染料インクと比べて経時変化の少なく安定した水性顔料インクが使用された。色材の改良やプロセスインク以外にライトシアン/マゼンタ、グリーンやオレンジなどのインクの採用で、オフセット印刷の色再現領域を十分に網羅できるガモットを有している。出力条件によっては、広色域4色印刷にも対応できる領域を持っている。
その他、吹付けられるインク粒子の微細化による画質の向上、キャリブレーション機能による安定した再現性、測色機の搭載、ノズルチェックをはじめとしたメンテナンス機能の向上、出力スピードの向上などが実現して、インクジェットプリンターの性能が格段にアップした。同時に色校正をサポートするカラーマネジメントの精度を上げるアプリケーションも充実してきた。
インクジェットプリンター色校正の今後の期待
インクジェットプリンターで今後期待される点に、網点と文字の再現性がある。オフセット印刷では、高解像度の出力機であるCTPで刷版に網点を形成している。現在のインクジェットプリンターでは、これらと同等の出力解像度を持たないため、同等の網点出力はできない。
そこで、RIP上でオフセット印刷と同等の網点イメージ(1bitTIFF)を生成し、そのデータを受け取り、マージしてCMSをかけてインクジェットプリンターから出力するアプリケーションも登場している。
このような網点イメージの出力によって、インクジェットプリンターでの階調再現、モアレの再現の精度、文字再現などのレベルが向上し、オフセット印刷に近似することが可能となった。
出力スピートもインクジェットヘッドを大きくしたり、用紙の搬送系の改良でかなりアップした。また出力品質との兼ね合いで、いくつかの出力スピードに対応できるようになっている。
校正用途では、印刷本紙での提供が望まれるが、インクジェットプリンターでは基本的には専用紙での出力となる。専用紙の中でも印刷本紙を支持体としてその上にインクの受容層をコーティングしたものも製品化されている。また、コート系、マット系、新聞用途の専用紙もリリースされている。
一方、印刷の本紙に印字できるように水性顔料インクを改良して熱で固着させるインクジェットプリンターも展示会などに出展されている。出力媒体の選択肢を大きく広げたUVインクによるインクジェットプリンターでは、パッケージ印刷やグラビア印刷の校正としても実用化されている。