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UIはユーザー・インターフェースの略である。製品やサービスと人間との橋渡しをするデザインを指す。対してUXはユーザー・エクスペリエンスの略である。製品やサービスに対して、ユーザーが感じたり、反応する行為を指す。
製品やサービスを食事に例えると、その目的は食欲を満たすことである。そのためにどういう道具が必要かというと、フォークであったり箸であったりする。その料理によってフォークが使いやすかったり箸が使いやすかったりする。食事と食欲を満たす目的の橋渡しをしているフォークや箸がユーザー・インターフェースであると考える。
対して、その食事が大変おいしかったという満足、豪華であるとかコストパフォーマンスが良かったという感動、などの反応は、単に食欲を満たす目的以上のものをユーザーに与えている。これがユーザー・エクスペリエンスであり、ユーザー・インターフェースと区別されるところである。
アプリUIをなぜ意識しなければいけないかというと、良いUIであることが結果的にダウンロード数やインストール、稼働率に繋がるからである。このゴールの部分に意識が欠落していると、目的が達成できない。
優れたインターフェースデザインには5つの原理がある。
1.ユーザーにフォーカスしている
アプリを使うユーザーを知ること。年齢やスキルレベル、文化などの属性、そのアプリで何をしたいのか、どういうデバイスを使うのか、といったことである。
2.正しいものを可視化する
Webデザインでも同様のことだが、画面左上部分に一番目がいきやすいといったことである。そのアプリでごく一般的な操作、頻繁に行われる操作はすぐ目に入るところに置かれるべきである。
3.適切なフィードバックを示す
ユーザーが起こしたアクションに対して、反応してあげることが重要である。すべてのインタラクティブなUI要素は少なくとも4つの状態(default, disabled, focused, pressed)をもつ。
4.予測可能にする
適切なアフォーダンスを使う。アフォーダンスとはここでは「モノに備わった、人が知覚できる、行為の可能性」という意味をさす。ドアがあり、ドアノブがついていれば、引けばドアが開くことを人間は予測できる。説明をつけなくてもよい。そうでない複雑な操作が必要なのであれば、デザインを再考する必要がある。
5.fault-tolerantにする
フォールト・トレラントとは冗長性であるが、ここでは「意味があるものだけ操作可能にする」ことをさす。UI要素を適切に見せたり隠したりする。
スマートフォンアプリ開発において、UIという捉え方が未成熟であったことで、人によって曖昧な主観で評価が左右されがちである。
サンプルUIをつくり、修正依頼があり、を何度も何度も繰り返している現実がある。ここではUIがユーザビリティとデザインの両方が混ざって考えてしまうことにより起こる。
何らかの指標や数値化をしないと開発コストが膨大にかかる。そして良いUIや良いUXとは何なのか、その本質を見極める必要がある。そうしてクライアントを説得できるロジックが必要となる。
そういった結論から、ネオス社は千葉工大と産学協業でスマートフォンUI研究プロジェクトを立ち上げた。
これには一年以上の期間をかけて以下のようなプロセスを経て行った。
・対象ユーザーを設定
・調査
・分析
・コンセプト抽出
・アイデア展開
・プロトタイピング→ブラッシュアップ→評価(ここを何度も繰り返す)
・最終提案
対象となるユーザーを調査するには、「シャドウイング」「フォトダイアリーで整理」「グルーピングをして傾向を探る」といった手順を踏む。
シャドウイングとは、被験者にぴったりと張り付いて起きてから寝るまでを観察するものである。この手法の特徴と効果は、観察される側の発言や行動・場合によっては感情までも観察して学べるところにある。
フォトダイアリーとは、対象ユーザーの日常生活の様子と身の回りにあるモノ、設定テーマとの接点を明らかにすることである。短い間隔で写真を撮影し記録する。
グルーピングとはフォトダイアリーをクラスター分類することである。
その後フォローアップインタビューを行い、提供価値分析を行う。これから作成するアプリに対するニーズを掴んだ段階ということになる。
ここからは、ニーズをもとにアイデアを具体化する段階である。そのためにはいきなりアプリを開発するわけではない。デザインによるプロトタイプを作成し、元々のニーズに合致しているか検証を繰り返す。この試行錯誤を何度も繰り返し、ようやくアプリデザインに至る。
タッチ操作やグラフィカルなアイコンを活用した直感的な操作性は、これまで携帯電話やPCを敬遠していた層をも取り込む効果があった。多く説明する必要がなく経験的に理解できる操作感を提供する必要があり、そのうえで操作することの気持ちよさが重要となる。
そういった、インターフェースを利用した際の楽しさや心地よさを価値として重要視するのがUXの考え方である。スマートフォンやタブレットでは、今後もUIとUXを意識したサービス設計が重要となってくる。