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2012年10月25日に、とうとうKindeストアがオープンした。同時にKDPも始まり、自主出版の機運が高まる。
iPadの登場以来アプリによる電子書籍が先行したが、2012年になって楽天Kobo、Amazon Kindleがスタートしたことで、一般的にイメージしやすい電子書籍ストアが具現化された。国内にこれまで電子書籍ストアはいくつも存在していたにも関わらず、KoboとKindeはインパクトあるニュースとして迎えられた。低価格の専用端末を同時に投入することが理解しやすかったのだろう。
現在、Kindleストアでクリス・アンダーソンの「フリー ―<無料>からお金を生みだす新戦略」のKindle版を表示したのが以下の画面キャプチャである。
この「フリー」をセットにしたセミナーを企画したのが2010年5月のことだった(電子出版の状況整理と無料経済の関係 )。当時はiPadが上陸することで何度目からの電子書籍元年と呼ばれた年であった。そこから2年半も経過している。
Kindleストアにおける「フリー」をよく見ると、価格が75%オフであることがわかる。クリス・アンダーソンの最新作「MAKERS」が発売されていることと、Kindleストアへの商品提供をあわせてのプロモーションである。
最新作にあわせて旧作をリセールすることは、アプリ、ゲームの世界でよく行われる手法だ。75%オフという価格にはかなりのインパクトがある。いよいよ価格と在庫から解放されるマーケティングが本格化し、販売することの難易度が高くなる。
この一般的にイメージしやすい電子書籍ストアの世界では、価格はどんどんゼロに近づき、ゲームや音楽、ビデオと同じ土俵で戦うことになる。
参考:回答者の約8割「電子書籍の価格は50%以下が妥当」、無料リーダーには期待感
しかし現時点であらためて検討したいことは、「電子書籍の可能性」である。単なる電子化では、販売先チャネルが増える話である。これはこれで読書人口の増加という課題を残している。専用端末の投入で可能性を模索していくことになる。
一方で、電子書籍の可能性として当初言われたのは、タブレット端末(つまり主にiPad)における、リッチな表現やソーシャルリーディング、そして紙版の書籍との連携であった。これは、根本的には読書の新しい楽しさという体験の提供である。読書というサービスの再設計であるといえる。
それがなぜ今なのかというのは、スマートフォンの普及が進んでいることに他ならない(アメリカでは携帯電話ユーザーの半数がスマートフォンになった)。
実際のところ、端末普及台数という母数で考えるならば、スマートフォンでどのような読書体験を可能にするかということと、Kindleなどの電子書籍ストアの競争がこれからスタートしたといえる。
(JAGAT 研究調査部 木下智之)
2012年12月10日(月) 14:00-16:00(受付開始:13:30より)
Kindleストアがオープンした今、ここで発表できる電子書籍の表現力と、どういった販売手法が有効なのかを考察する。