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電子化された書籍がどの様に流通し始めているかは、皆さんご承知の通りである。
即ち夫々の出自のベンダーが「当店へいらっしゃい・・」とばかりに、囲い込みを展開している。その出自はというと、インターネット事業者、機器メー カー、出版社、その他と色々である。もともと今回の「電子書籍」の流れは言わば外国のインターネット事業者から仕掛けれれたものであり、その2社と国内各 社の三つ巴の状態で展開されつつある。この外国2社の片方は音楽コンテンツを中心にネット市場を支配し、もう一方は本など物品の流通市場でこれまたネット 市場に広く食い込んだ存在である。当然、自分たちの独自規格で囲い込みを進められる有利な立場に居る。それを迎え撃つ国内勢はと云うと、これまた同じよう に夫々が、これしか無いと言わんばかりに、独自の方式で囲い込もうとしている。一番かわいそうなのはターゲットとなっている我々読者=客ではないだろう か。曰く、この本が欲しければ、A社の会員登録が必要で、あの本はB社・・・と云うわけである。
電子書籍の販売サイトを握るという事は、書籍フォーマット、その暗号化方式、代金決済手段、ダウンロードの仕方、場合に因っては再生装置まで握れ る可能性がある。事実外国2社はそのように陣取り合戦を繰り広げている。それに対する勢力はと云うと、A出版社は自社の商品だけの販売サイトを立ち上げ、 Bメーカーは自社製のデバイスでのみで再生できる商品を販売するという状況である。要するに、誰もが今自分が所有している再生デバイスで、どこの出版社の 本でも読めて、購入も日常使っている決済手段で可能という状態からは程遠い。さらに厄介な事には、現状では著者名、書名、出版社名が決まっていれば、その サイトを訪問できるが、「本を買いたいが、何にしようか・・・」と云う人には何らの手段も提供していないという事なのだ。本編の冒頭でも資料と共にお話し たが、現在わが国における書籍の購入行動で圧倒的に多いパターンはこの「ぶらりと書店を訪れて、そこで気に入った本を買う」ことなのである。現在の電子書 籍販売サイトでこの機能に代わるものを提示しているところは存在しない。
これは単なる検索サイトとは違うと思うが、そもそもこの検索機能にしてからが、全出版社を横から串刺しにしたような検索サイトってあるのだろう か?企業名を出して恐縮であるが、例えば書籍の通販で成長したAmazonの書籍サイトを覗いてみよう。そこには確かに商品=書籍の説明が載っているが、 何を買おうか決まっていない購入者が、あの説明文程度で、購入の意思決定をするとはとても考えられない。おそらく購入者は別の情報源で何を買うかの意思決 定をした後に、「何処から買うか」の意思決定だけをサイトで行っているのではないだろうか。先の資料に依れば、その情報源は書店と云う事にならないか。そ れってどこかおかしくないか?ネット販売が、読者の購入行程全てを自ら補償せず、その一部(つまり検索やら内容確認行程)をリアル書店に依存している、即 ち書店機能にただ乗りしている事になる。またまた脱線してしまうが、書籍に限らずネット販売の多くが同じ事をやっている。即ち商品の確認は実店舗で行った 客が、実店舗より価格の安いネットショップで物だけ購入するという事である。彼らは実店舗が消滅した瞬間にネットショップも成り立たなくなる事に気が付く べきである。
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◆著者
代表取締役 太田明 ( このメールアドレスはスパムボットから保護されています。観覧するにはJavaScriptを有効にして下さい )