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Kindleストアでどうやって見つけてもらうか

掲載日: 2012年12月03日

AppleのAppStoreでは65万本のアプリが売られていてダウンロード数は300億である。

電子書籍コーナーの追加、というわかりやすさ
Amazon Kindleストアが10月下旬にオープンして、約一か月が経過した。同時期にKDP(Kindle Direct Publishing、Kindleストアにおける自主出版)もスタートし、そして11月に入って電子書籍専用端末であるKindle Paperwhiteも出荷。しかし品薄状態で現在は年明けの到着待ちという状況。12月下旬にはAndroidタブレットのKindle Fire HDも出荷される。それにあわせて年末商戦のテレビCMも始まるという、まさに数年前から言われていた「黒船」Amazonが上陸する電子書籍サービスの姿がここに、といった感じである。

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ストアを先にオープンし、iPhoneなどでアプリで読書できるということを一般の読者が知った。電子書籍専用端末Paperwhiteはフロントライト搭載で意欲的なデジタルガジェットではあるが、その端末のお届けよりも先に、PC上のAmazon Kindleストアで購入し、iPhoneやiPadへ転送して読むということを先行した意味は大きい。
これまで通販で利用し慣れていたAmazonにおいて、電子書籍コーナーがオープンしたというのはユーザーには理解しやすい。これまでと同様、Amazonサイトに行ったときの感触、「何か探すぞ」「何か買うぞ」という気持ちにさせてくれる、平積みの本が色々と置かれた大型店舗という雰囲気がそこにはある。

Kindleストアで1Clickオーダーで購入し、iPadやiPhoneに転送しておく。移動中や待ち時間にiPhoneのKindleアプリで読み、就寝前にiPadのKindleアプリで同タイトルを開くと、ちゃんと読んでる途中の箇所から再開してくれる。これを一度体験するとしないでは大違いである。
一時間ごとに更新されるベストセラーランキングをチェックして、何か面白そうな本を自分は見逃していないか、何かタイムセールされていないか、といったことをチェックする機会も増えるだろう。

どうやって見つけてもらうか、目立つか
いまKindleストアのベストセラーランキングを確認すると、メジャータイトルに交じって自主出版タイトルが売れているのがわかる。人々のKDPへの興味関心はかなり高いようで、「KDPでどうやって電子書籍をリリースするか、売るか」というハウツー本が人気になっているのは興味深い。これまでEPUB分野で情報収集・実践を進めてきた人々以外で、ブロガーやエンジニアなどがいちはやく飛びつきKDPを試している。

この裾野が広がっていくのは明らかだ。2013年には大量の自主出版電子書籍がこのストアに投入されるのは間違いない。AppleのAppStoreでは65万本のアプリが売られていてダウンロード数は300億である。電子書籍も玉石混淆状態は加速し、そうなってくるとDiscoverability、どうやって発見してもらうか、目立つかの方向性としては二つあると思っている。

一つは、Kindleストアのプラットフォームに載りながら、ややリッチに目立つクリエイティブが出来ないかということだ。iPadなどの電子書籍アプリとまでいかないが、一般の消費者が想像する電子書籍ストア(大型リアル書店がそのまま電子になった状態)と、アプリストアの間にあるギャップを埋めるものだ。
JavaScriptを使ってゲームブックを再現する試みなどもある。EPUB3の表現力とKF8の仕様、電子書籍専用端末の実機確認などをおさえていく必要がある。

もう一つは、読者の顔が見えるマーケティングだろう。コミュニケーションの基点をFacebookに置いて、そこから自分の都合の良いストアで購入してもらう。書籍もアップデートされ、シェアされる。アプリ市場で行われてきたようなメカニズムがKindleストアにも持ち込まれる。自主出版に興味を持つ人が増加するのにあわせて、そこへ的確にアドバイスできる状態になっている必要がある。


Kindleの表現力は?儲かるのか?を考える
Amazon Kindleストアにおける電子書籍の仕様とマーケティングについて
http://www.jagat.jp/content/view/3937/395/

(JAGAT 研究調査部 木下智之)

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