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独自の工夫と日々の積み重ねが印刷事故を撲滅する

掲載日: 2011年05月09日

印刷会社の不具合の内容を分析するとヒューマンエラーが多い。製造現場では独自の工夫した検査体制を徹底して品質管理、事故撲滅を図っている。

■いまだに多い入稿データの不具合

印刷会社の品質管理と事故防止について、サンエー印刷、三浦印刷、石田大成社の現場を指揮、管理している方に、自社の実際のトラブル事例を始め、事故防止への具体的取り組みをお話を伺った。プリプレスの現場では、不具合データの発生をいかに撲滅するかが各社の課題である。

現場で発覚する不具合といっても、その原因は様々であり、主なものは以下のとおりである。
  ・顧客支給データに不具合がある
  ・印刷会社内でミス・トラブルになる

顧客から支給されるデータに不具合があるケースはいまだに多く、印刷会社でも頭を痛めている。不具合の種類は、センターが合っていないデータやサイズが違いなど基本的な誤りを始め、ブラック(スミ版)のオーバープリントなど色に関するものも後を絶たない。

■考え工夫することで効果を上げる

これらの対策として、各印刷会社ではそれぞれ工夫を凝らし事故撲滅を図っている。例えば入稿データは専門部隊で確認し、不具合の度合いを2種類に分類してカードを作成、営業に差し戻している。この情報を営業が顧客にフィードバックすることにより、以降の不具合を改善する。

また、印刷会社内の不具合ではその内容を分析すると、やはりヒューマンエラーが多い。現場ではデジタル検査(システム)を駆使しするなど、独自のチェック体制やルールを作り徹底している。
しかし、これらを運用、実践するのは人間であり、いかに人間が間違えないような環境を作ることができるか、モチベーションを保てるか、オペレータ自身のスキルを向上させることができるかが鍵になる。

さらにオペレータ教育にも注力している点が特徴の一つである。例えば、スキルテストを月1回定期的に行うことにより、各自のスキル明確化と結果を踏まえたスキルアップ、オペレータ自身の意識向上に役立てている。さらに、スキルマップや個別の作業分析指導も行っている。

このような、地道な活動は即効性がないように感じられるが、オペレータ各自の品質管理に対する問題意識を高め維持することなど日々の積み重ねが事故撲滅に近づく最短距離であり、確実に効果が上がる手法であるという。

また、最近ではPDFによる入稿も増加し、中には原稿類(出力サンプルや印刷見本)が一切存在せず、確認と品質管理の必要性を含め課題が多いことも顕在化した。

最後に、「社内の人材教育はもちろん実行しているが、製版スキルが低い顧客の教育も実践している(せざるを得ない)」という。しかし、顧客の製版スキルのレベルが向上し、どの印刷会社にも出せる印刷データを作成できるようになると、いつの間にか他の印刷会社に乗り換えてしまうケースもある。それでも、「社内外ともに教育は継続して行わなければならない」という熱意が印象に残った。

JAGATでは、印刷会社の品質管理、事故防止における工夫点や事例を収集し、ビジネスのヒントに役立てるよう主にセミナーの場で提供しています。品質管理、事故防止について情報提供していただける方は、ぜひご一報ください。

(教育サポート部 大沢昭博 このメールアドレスはスパムボットから保護されています。観覧するにはJavaScriptを有効にして下さい )


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