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管理職に必要なコミュニケーション能力

掲載日: 2012年09月04日

職場のコミュニケーション不全、部下とのコミュニケーション不足に悩む管理職は少なくない。

 

 マネジメント力向上=コミュニケーション力
JAGAT教育コンサルティング部では近年、営業、制作を問わず、管理者のマネジメント力アップについて、相談を受けることが多い。マネジメントには、内外のコミュニケーションが欠かせない。そもそも、コミュニケーションとは、何だろう。辞書には、「表情やメディアを通じて、情報を伝達し、共有すること」とある。では、管理者にとって、何のために情報の共有が必要なのか。当然、「自分(または組織)の考えを相手に伝え」→「理解して、動いてもらい」→「仕事を進め」→「結果(成果)を出す」ためである。管理者の重要な仕事が、成果を出すことであるならば、コミュニケーション力は必須である。

しかしながら、厳しい経済環境が続く中、職場に成果型人事制度が取り入れられ、少ない人員で短期的な数字を求められることが多くなった昨今、大多数のプレイングマネージャーは、部下の一人ひとりを細かく指導できるほど、心理的、時間的余裕がない。また、山積する業務と業績へのプレッシャーを前に、部下への関心も低く、若手育成の重要性を「意識」していない管理者も多く見受けられる。管理者は、①部門(チーム)メンバーの一人ひとりが有機的に動いてこそ目標達成できること、②企業を継続的に成長させるには、若手の育成が不可欠であることを、まずは十分に理解しよう。

部下との信頼関係構築
そんなことはわかっているけれど、「うまく伝わらない」「報告も連絡もあがってこない」「ちょっと注意するとすぐに落ち込む」等々、困っている管理者は多い。携帯世代といわれる現代の若者は、同質の仲間づくりの中で育ち、ストレス耐性に欠けるとも言われる。経団連が毎年実施している「新卒採用に関するアンケート調査」で、企業が採用選考時に重視する要素の第1位は、9年連続で「コミュニケーション能力」であった。それだけ、若手との意志の疎通が難しく感じられているということだろう。しかし、コミュニケーションは双方向のものだから、批判ばかりしていても始まらない。JAGATの「2012年度新入社員意識調査」では、「理想の上司・先輩」の1位は「何でも相談しやすい」25.3%、2位「目標・やり方を明確に指示してくれる」23.8%、3位「自分の意見をきいてくれる」14.45%だった。少々甘えているようにも聞こえるが、まずは上司の方を見ているということだ。
管理職は、コミュニケーションスキルの前に、まず、できるだけ早い時期に部下との信頼関係を構築しよう。そのためには、相手を知ること=毎日部下を観察(監視ではない)する。具体的には、毎朝、部下の顔や様子を見て、一声をかけることから始めよう。挨拶しない者には、するようになるまで根気よく、上司の側から声をかける。

コミュニケーションを深めるために
①業務指示を出す前には、目的と意味が明確か、説明が分かりやすいか、一方的でないか、自問する習慣をもつ。②相手のレベルにもよるが、指示した内容の途中チェックを的確に行う。この「的確に」が難しいが、細かすぎる口出しも、まかっせぱなしの放任も好ましくない。③チーム内の決め事は、誰もが参加して自由に意見が言えるようなオープンな雰囲気づくりを心がける。④管理職がいつも忙しいがっていては、部下は遠慮して近づいて来ない。カタチだけでもよいから時折は「余裕」を見せること。⑤報告・連絡・相談を受けるときは、できるだけ相手の目を見て、例え多少要領を得ない話でも、話の腰を折らない、一方的に決め付けない。⑥質問はできるだけ、「はい」「いいえ」だけで答えられるものを避け、話の細部を埋めていく。⑦部下と上司にも相性の良し悪しががあるけれど、管理するのは仕事であり人ではないから、人の好き嫌いで態度を変えない。上司は部下に見られていることを忘れずに。「公平性」は管理職のコミュニケーション能力の重要な要素のひとつだ。⑧部下に少しでも成長が見えれば、必ず褒めること。逆に問題点は指摘、注意、時には叱る勇気をもつこと。信頼関係さえあれば、「感情的な怒り」と「相手の成長を促す叱り」の違いは、必ず相手に伝わる。そして、これが最も大切な点だが、⑨これらのことを根気よくあきらめずに続けること。3ヶ月後、半年後には、少しずつ、チームメンバーに変化が見えてくることだろう。それを部下が自覚したなら、相手の方から、上司にコミュニケーションを求めて来る。なぜなら、人は自分にプラスになること=自分を成長させてくれる人の方へ向くからだ。

JAGATでは、「管理職のコミュニケーション能力」に関するセミナーを10月に実施する。ぜひ、多くの管理職の方々にご参加いただきたい。 

(教育コンサルティング部 泉 聡子)

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