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変化は新たなニーズを生む - メディアの中身から顧客本来の目的に迫ろう。

掲載日: 2013年06月19日

昨今、大学の受験情報にも、アプリやLINEを活用するところが増えてきているようだ。受験生がスマホ世代ともなれば、取り組まざるを得ない。多様なメディアの活用は今日にあって自然な流れではあるが、それ以上に注目すべきは「大学情報の中身」が急速に変化していることだ。

その要因は、ご承知のように、ここ20年の進学率の右肩上がり、四年生大学の増加、出生率の低下による少子化、大学入学希望者全入時代という環境の一変である。大学が受験生を選別する時代から受験生が大学を選別する時代になり、大学からの情報発信が必要に迫られたということである。

大学も保守的な業界の一つである。伝統校、有名校になるほど実は大学自体は何も発信していないのが実態で、予備校や塾、受験企業からの情報が大半で、その典型が大学ランキング情報である。受験生の努力の賜物である、合格偏差値情報であるが、ここには大学自体の情報はまったくない。受験生の評価であって、大学の評価ではない。かつてはほとんどの受験生が大学の中身を知らないまま、入学していたのが実情であった。

ところが90年代から始まり、2000年から本格化したオープンキャンパス(オープンスクール)など大学自体をもっと知ってもらおうと大学が情報発信を熱心に始めた。これは新設大学だけでなく有名校や国公立校なども同様である。

大学にとってコストのかからない収入源の一つが受験料である。これは受験者数で決まる。経営上できるだけ多くの受験者を確保することが求められている。一方、入学者についは、一定の数を安定的に確保することと、できるだけ優秀な学生を確保すことによって企業からの評価を高める必要がある。

また地方の大学にとっては学生の確保イコール地域活性化も担っており、私立大学であっても自治体が全面支援をすることも珍しくない。かつての昭和3-40年代の人口ボーナス期の大学進学率20%以下のような時代の大学環境とは雲泥の差である。

数年前から始まった読売新聞社の「大学の実力」調査は社会に大きなインパクトを与えた。大学自体を正しく評価するため、退学率、講師比率、就職率、カリキュラムなど詳細情報を公表した。これには大学側の抵抗やショックもかなりあったと聞く。高校の進学担当教諭も受験生の親側も知らないことばかりで、読者からどう大学を評価していか分からない、読み解くことができない、ABCランクを付けてほしい、といった意見が寄せられたという。

偏差値情報しか知らされなかった受験者側も戸惑っている。大学は高校とは違う、「生徒」と「学生」の違いを認識すべきだ、といった理想論(ひっくり返せば放ったらかし)では済まされないのが、少子化で進学率50%を超えた環境下での保護者側ニーズと大学側経営がある。

新しい現象はこれだけでなない。以前はほとんど見られなかった大学での学問分野の解説や魅力を教授自身が執筆をしたり、高大連携事業、広報活動として講義をすることも珍しくなくなった。例えば、高校生が持っているスマホにはどのような技術が使われ、それはどのような基礎研究から発展したものか、その研究はどのような学問分野属し、どのような学部・学科になるのか、といった「まず何に興味・関心があるかを喚起する」するための情報誌を発行する学校も増えている。

かつての偏差値→大学→学部選びから、関心のある学問分野・仕事→受けたい授業・先生→学部→大学→偏差値という逆流(本来の)情報の作り方が始まっている。

大学広報でもOBとの連携を目指し、会報誌や電子版コーナーの設置などを積極的に展開するところが増えているという。子弟の確保だけでなく、記念行事への関心を高め寄附を募るといった狙いがある。在学生やその父兄に対する情報発信として「フリーペーパー」の発行に力を入れている学校もある。学校生活を上手に過ごさせるために学生が取材・執筆を行う一方、授業参加、就活準備への関心を高めるため、学校と教授が連携し、三位一体で情報発信をしている。

これらは大学での事例であるが、このように、かつての環境とは一変したことによる新たなニーズの誕生や変化が起きている。その本質に迫る対応・提案ができれば見えなかったビジネスが数多く顕在化するであろう。

これからのビジネスには、変化(ニーズ)の本質を掴むこととそれに応えるためのストーリーを描く能力を身に付けなければ成功しない。こういった能力は大きな案件をイメージするものではなく、小さな「チラシ」「DM」づくりであっても同じことである。

日々の小さな案件の中でノウハウやコツコツと勉強を積み重ねることが実力への王道である。言われたことに応えるのでなくニーズを汲み取り、顧客本来の目的に応えるためにトコトン考え抜く姿勢こそビジネスの基本といえよう。 

(JAGAT CS部 通教教育担当 杉山慶廣)

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