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オフセット印刷やインクジェットプリンタではUVインキがその特徴を活かして使われている。その効果と新ビジネスの可能性を考えてみる。
オフセット印刷でUVインキの使用目的は、インキを強制的に乾燥させることで納期の短縮、印刷トラブルの軽減、品質向上や印刷媒体(用紙)の選択肢の拡大などがある。
UVインキは、紫外線硬化型インキと言ってUV光を照射して硬化(乾燥)させるインキである。印刷と同時に紙の上でインキを強制的に乾燥させるため、時間を置かずして反対面の印刷もでき、その後の加工にもすぐに取りかかることができる。裏付き防止のためのスプレーパウダーも不要である。パウダーレスの環境のため製版機器や後加工機を印刷機の近くに設置することができ、作業効率のアップや省力化にもつながる。また、どんな媒体であってもインキを強制的に乾燥して硬化させる。そのため用紙の選択の拡大、例えば薄紙やペットフィルムなどへの印刷も可能になる。また強制的に乾燥させるため薄紙のようなインキが乾燥しにくく、油性インキでは対応の難しい印刷用紙にも印刷が可能となる。
UV光源としてLEDが使用されるようになったため光源装置が小さくなった。印刷機上に光源を追加でき光源の強さも調整できるようになった。また乾燥時に発生していたオゾン(オゾン臭が発生するので排気装置が必要であった)がインキ成分の改良で発生せず臭いもしなくなった。一方で印刷会社にとってはインキの価格が油性インキに比べて割高であったり、製紙メーカーにとっては再生利用で脱墨性が悪いなどのデメリットも残る。
しかし、それ以上に数多くのメリットが挙げられるため、導入されるケースが増えている。
インクジェットプリンタでは専用用紙(吹きつけられるインクの粒子が付着しやすくするための専用のコート層を塗布した用紙)が必要である。そのために現在ではUVインキを使用する汎用の大型プリンタや業務用のプリンタで普及してきている。
インクジェットプリンタは、インクジェットヘッドよりインキを出力媒体に吹き付けるために直接出力媒体にヘッドが触ることがない。そのために出力媒体に厚みがあったり表面に凹凸があっても印刷できる。UVインキを使用することで紙以外の媒体にも対応できペットフィルム、金属、アクリル板などにも印刷できる。
インクジェットプリンタのUV光源もオフセット印刷と同様にLEDが使われ始めている。そのためオゾン臭が発生しない。またLEDのUV光源では照射時に発生する熱を抑えられフィルムなどのように熱の影響(媒体の伸縮)を受けやすい媒体にも印字できる。インキを強制的にすぐに乾燥させるので何回もインキの吹き付けができる。それによって色数を増やして色再現領域を広げることができる。透明インキを使うことでニス塗りもできる。ニス塗りの応用として透明インキを何度も吹き付けることで厚塗りができエンボスの効果も得ることができる。またカラーのインキの他に白インキを使えば透明の媒体に印字ができる。
UVインキとインクジェットプリンタの組み合わせで出力媒体の種類の拡大することができる。凹凸面への印字、厚塗りの印字などで新しい商材の制作も考えられる。UVインキを使用することで出力媒体の種類が多くなり、それによってインクジェットプリンタの使用用途が広がり新しい商材の可能性が広がる。
UVインキを導入することでオフセット印刷では、速乾印刷の対応や印刷媒体の種類の拡大ができる。それによって短納期や品質安定が可 能となる。インクジェットプリンタでは、印刷媒体の種類の拡大、厚みや凹凸のある媒体への印刷が可能となる。それによって新しい商材ができビジネスの拡大の可能性がある。
UVインキのメリットを見出して新しいビジネス展開を考えてもらいたい。
(JAGAT 研究調査部 福原節寿)
UVインキがもたらす効果
-UVインキでの新しい事業の展開を考える-