JAGAT Japan Association of Graphic arts Technology


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緻密な標準作業時間の策定による生産管理の精度向上

掲載日: 2013年04月02日

一段と進む小ロット短納期に対応し利益を生み出すためには効率的なワークフローの構築が不可欠であり、要となるのが生産管理/工務である。

 

総売上額を落とさずに小ロット対応するとなると、自ずと受注点数は増加し、受注一点あたりの売上高は減少する。このときに大きな課題となるのは、営業から生産管理/工務の間接業務である。
たとえロットは少なくとも、見積書作成、受注登録、作業指示書作成、校正のやり取り、生産計画(段取り)、進捗管理、納品書作成、配送手配などの業務については受注一点あたりの手間は変わらない。
中期的には、Web活用が進み、見積り/受注受付/校正のやり取りなどは自社のWebサイトが営業担当者の役割を担うことになるだろう。裏を返せば、営業担当者の業務は、より本質的な営業活動すなわちお客様の課題を解決する提案型営業にシフトせざるを得ない。細かい仕事を足で稼ぐというようなスタイルでは営業経費を賄うだけの付加価値が得られないからだ。
同様に生産管理/工務の業務についても見直しが必要となる。

ビデオ、ストップウォッチを活用した標準時間策定

竹田印刷(本社:愛知県名古屋市)では、印刷予定組み(枚葉/輪転)のシステム化に取組み、非常に完成度の高い生産管理システムを構築している。「Process Edge」という名で外販もしている。
2013年3月12日に開催したセミナー から同社の取組み内容を紹介する。
同社の一番のユニークな取り組みは、印刷予定組みの精度を上げるために、自社の標準作業時間の策定を徹底的にやり抜いたことである。まず、過去1年間の作業日報からデータ抽出して大まかな作業時間を把握した。つぎに3交代で稼働している輪転機の3チームそれぞれの動き、仕事のやり方をビデオ撮影した。ある程度の期間、撮影を継続すると、生産性の高いチーム、いわばチャンピオンチームが明確になってくる。その段階でチャンピオンとそれ以外で何が違うのかを細かく分析した。生産性の違いを数値で明確に示すことでチャンピオンではない機長も自分と何が違うのかを自ら知ろうとするようになった。
こうして仕事のやり方を高いレベルで標準化したうえで、作業時間をストップウォッチで時間計測した。ビデオ撮影からストップウォッチの時間計測を経て、標準時間を設定するまでに二カ月間掛けた。
標準時間は版替え枚数別、印刷通し数別、用紙の厚さ別、折り機の設定別など条件別に細かく設定するとともに見直しに備えて、根拠をきちんと定義し文書化した。
また、継続した業務改善につなげるために、作業実績を非常に細かい項目で時間記録している。生産管理システムはJDF/JMFに対応しているが、取得したい作業項目が細かすぎるためにJDF/JMFではなくタッチパネルで実績データを収集している。
日々の運用では、機長は標準時間に対しての勝ち負けを常に意識しており、月次の稼働実績集計表を自らの成績表として一喜一憂している。
日程計画・進捗管理業務のシステム化、緻密な標準作業時間の策定、それらによる精度の高い印刷計画、そして計画された一点ごとの予定時間が目標時間として機能し、さらに業務改善(生産性向上)につながっていくという好循環が生まれている。

(JAGAT 教育コンサルティング部 花房 賢)

 

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