本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
総合カタログの役割とは?
総合カタログは、かつてはある種のデータベースとして利用されていた。
全国の販売代理店でもメーカーの社員でも、問合せや相談に応じて、総合カタログで型番や材質・色などのバリエーション、他の部品との接続の可否などを調べ、在庫確認や発注するなどの業務をおこなっていた。
例えば、会社の総務部門には、必ず文具・事務機メーカーの総合カタログが置いてあり、それを見て必要な文房具などを発注していた。
また、工務店には窓のサッシやドア、キッチン、トイレなど建築部材メーカーの総合カタログがあり、新築や補修の際にはそれを見て相談するなどしていただろう。
つまり、総合カタログさえ見れば、企業内のある分野の製品に関する、もっとも信頼性の高い情報が得られるという暗黙のルールがあったとも言える。
商品の画像や色など、商品マスターにも反映されていない細かい情報でも、総合カタログには反映されている。何万部、何10万部も印刷することを前提としているため、何度も内容チェックがされているなど、信頼性の高い情報が掲載されているのである。
文具・事務機の分野では、今や取引自体がネット通販に置き換わってしまった。ネットで調べて注文すれば、商品は1-2日で配送される。文具・事務機の総合カタログがなくなったわけではないが、すべての情報が総合カタログにあるとは言えない状況である。
むしろ、Web自体が総合カタログに相当し、データベースの役割を持つようになった。このような企業では、社内のコンテンツデータの一元化も進んでいるだろうと思われる。
Webに製品情報を集約することが実現されているなら、電子カタログの導入やiPadカタログの導入も容易である。
電子カタログの最大の利点は、アクセスログを解析して人気商品、不人気商品とカタログの関係を判別できることである。
もしも、不人気商品があったなら、対策を講じなければならない。より注目を集めるように、ページ構成やレイアウトを再検討し、新たに特集記事を追加するなどの仕掛けが必要である。場合によっては、紙のカタログや特集版を提案することも必要となる。
このような状態にあること、またはそれを目指すことをWebファーストと呼ぶことが多い。元々はWebファースト、ペーパー(プリント)レイター程度の意味だが、その本質は情報発信の順序やコンテンツ制作の効率化だけではなく、Webを中心としたコンテンツの一元化、ワンソースマルチユースの実践、さらには電子カタログやタブレットの活用を表すと考えてよいだろう。
Webでの情報発信は、企業によって温度差、取り組みの差が大きい。すべての企業がWebでの情報発信や取引を実現しているわけではない。従来型の総合カタログを優先して製作し、総合カタログによる受発注を中心としている企業も多い。大掛かりな変更を避け、前年のデータを再編集する方法を取り続けていると、コンテンツの一元化やマスター化は困難である。
しかし、将来を見据えてWebファーストを実現し、コンテンツを活用している企業と、従来の手法を変革することができず、非効率な作業に追われている企業とでは、徐々に業績の差が大きくなるのではないだろうか。
(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸)
■関連セミナー :4/23(火)「Webファーストの実現と電子カタログの有効利用」