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DITA to EPUBと多言語展開

掲載日: 2012年07月09日

ネクストソリューション株式会社 中野 賢 氏

■DITA for Publishers

DITA for Publishers(D4P)は、アメリカ人のEliot Kimberを中心に、開発、メンテナンスされているオープンソースのプロジェクトである。DITA Open Toolkitのプラグインになっている。

このプラグインの目的は、DITAはテクニカルマニュアルの利用を主体に考えられたが、もう少し軟らかい内容のコンテンツ、一般書籍でも、DITAソリューション、DITAを扱うツールやシステムを使うと便利にできるのではないかと開発が始まった。

D4Pは、出版で必要とされるモジュールやボキャブラリ、article、chapter、part、sidebarなどの情報タイプも提供している。また、ruby、verse、epigraph、formattingなどの、出版で使うようなタグセットも提供している。これらはDITAの拡張部分なので、今日は出版をサポートするツールを紹介したい。

DITAからの出力先としてEPUB、Kindle、HTML5、InDesignを、執筆環境としてはdocからDITAに変換するコンバータを提供している。

■DITAからEPUBを作成する方法

作成方法は2つある。1つはDITAファイルを用意して、DITA Open ToolkitでXHTMLに変換する。それをEPUBの作成ツールでEPUBにまとめる流れである。
XHTMLからEPUBのところは、EPUB cafeサイトに「日本語文書作成チュートリアル」が出ている。
もう1つの方法は、DITA for Publishersを使ってDITAから直接EPUBを作る方法である。(図1)

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▲図1

デモンストレーションとして、まずDITA Open Toolkitの中のstartcmd.batバッチファイルがあり、それを起動する。「お好み焼き」のサンプル、先ほど加藤氏が作って並木氏が翻訳したものが、この中にある。
日本語版があり、英語版、ロシア語版、中国語版と、フォルダごとに分けて管理している。

日本語ファイルもトピックも同じようにXMLファイルになっていて、ロシア語版や他の言語もXMLファイル、DITAファイルになっている。
今回、antツールのbuildファイル、一連の処理を行うバッチファイルの設定ファイルのようなものだが、それを使ってDITAファイルからEPUBへの変換を自動的に行うようにしている。今、この中に日本語版、英語版、ロシア語版、中国語版の4ヵ国語分ができた。
EPUBファイルを見るにはいろいろなビューアがあるが、Firefoxの上のEPUBReaderで表示したもの(図2)や、iBooksに入れて表示したものがある。(図3)
日本語版の構成は変わらずに中国語版、ロシア語版、英語版にも訳されて表示される。構成は何も変わらずに作ることができる。
ビューアによって、表示が少し異なる場合がある。

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▲図2

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▲図3

■WordからDITAの生成

Wordを利用して、DITAのトピックとマップを作成できること、XMLタグを入力しなくても気軽に使えることなどのメリットがある。
ただし、課題として、Word上でのスタイル付けをうまく行わないと良い結果が得られない。WordとDITAのタグの対応付けはまだ実験レベルで、これからもう少し手を入れる必要がある。
Wordを使うときの注意点として、文書の表題が標準で使えるスタイルでなくてはいけない。サポートしているのは、見出しは1~4までで、見出しの後は文章でないとエラーになってしまう。見出しの下へ、また見出しのステップはエラーになる。
その他、対応しているのは箇条書きと、その次のレベル箇条書き2である。番号付きの段落番号と、その次の段落番号2まで対応している。あとは、簡単な表も変換することができる。まだ簡単なものしか対応していないが、今後もう少し手を入れていけば、もっと使えるようになっていく。
このようなWordファイルを用意して、startcmdの中で自動的に生成するスクリプトを書いたものを実行すると、アウトフォルダの中に作ったDITAファイルとそれを変換したEPUBとHTMLファイルが作成される。
DITAファイルはWordファイルから変換したマップファイルだが、見出しのレベルでトピック単位に分割される。個々の分割されたトピックはコンセプトタイプ、一番汎用性のあるタイプに変換され、それらをまとめたものがマップファイルとしてできる。

■拡がるDITAの利用シーン

DITA制作システムが各社から出ている。これはコンテンツ管理が主だが、フルシステムがいくつかある。今回MS-Wordを使って作ったDITAファイル、簡単に作ったDITAファイルも使えるようになれば、DITAを使う場面が広がり、その特徴である再利用性が享受できるようになるのではないか
また、DITAでフォーマット管理、中間的に通すことで、PDF、HTMLやEPUBなどクロスメディアのパブリッシングにも対応できるのではないかと考えている。(図4)

 

2011年5月31日TG研究会「電子書籍時代のマニュアル制作とDITA to EPUB」より(文責編集)

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▲図 4

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