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印刷会社のおもてなし経営

掲載日: 2013年05月15日

3月、経済産業省より、「おもてなし経営企業選」の発表があり、おもてなし経営を実践する50の事業者が選定された。今回、印刷業界からは、水上印刷(東京都)と北四国グラビア印刷(香川県)の2社が選ばれた。

経済産業省では、「(1)従業員の意欲と能力を最大限に引き出し、(2)地域・社会との関わりを大切にしながら、(3)サービスの高付加価値化や差別化を実現する経営」を「おもてなし経営」と称し、地域のサービス事業者等が目指すビジネスモデルの1つとして普及することで、経営改革の促進や地域経済の活性化を目指しており、発表された「おもてなし経営企業選」は、地域のサービス事業者が目指すビジネスモデルの1つとして普及を図り募集をし、その中から優れた取り組みを行う50社として選ばれたものである。

今回選ばれた50社についてはWeb上で各社ごとに紹介されているが、各社各様の苦労話や成功体験などのストーリーが綴られていて読み応えがある。印刷会社2社についてもそれぞれ紹介されており、それぞれの受賞企業の「おもてなし経営のポイント」が紹介されている。

■おもてなし経営企業選(経済産業省)

水上印刷については、

  • 付加価値の源泉となる、すべての工程を担当する「ワンストップサービス」
  • 顧客が感動する「日本一きれいな工場」
  • 社員の成長を願って行なわれる年200回の研修

北四国グラビア印刷については、

  • 自社一貫製造体制だから実現できる、要望への的確で素早い対応
  • 全員参画型で、働きがいにもつながるQC活動
  • 社員を大切にしていることが伝わる、多様な活動と施設、制度の整備

が評価ポイントとして紹介されている。

それぞれ読んでみると、「お客様第一の目線」「働く環境の整備」「社員を大切にする思いやり」などがしっかりと実践されており、継続されている。おもてなし経営は、経営者の思いだけでは実現できないし、社員の努力だけでも成功しない。両者が一つになり「お客様のために」「何が必要か」といった進むべき方向が明確にビジョンとして見えていないと実現できない。経営者を信じ、社員を思いやる気持ちが非常に大事だという事が改めて実感できる。

また、おもてなし経営の概念には地域・社会との積極的な関与も重要な要素としてある。地域を大事にすることによって、既存顧客との関係強化を図り、潜在顧客の掘り起こしを目指すためのようだ。

おもてなし経営に関わらず、地域密着は印刷会社にとって重要なキーワードである。真に地域コミュニティーの一員としてあろうとした場合、イベントや情報発信ツールの制作などでは企画段階からメンバーに入っている必要がある。これはステータスとしての意味だけではなく、ビジネスの上でもパートナーとして認めてもらうことによって得られるチャンスが拡大することに繋がり、地域密着の必要性はますます高まってくるだろう。

それぞれの地域性や特性があり、また業種も違う企業が並んでいるのでそのまま真似るというわけにはいかないが、今回発表された50社の話はとても参考になる。共通することは多いし、企業の社員や地域に対する思いが伝わってくる。こういった会社が増えてくれば、幸せを感じる人が日本に増えてくることにもなる。印刷業界には幸せを感じる社員が多い、そんな将来が見える方向へ進んで行ってくれればと願っている。

(JAGAT CS部 岡田俊昭)

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