本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
森裕司のデジタル未来塾(10)
2012年秋にiPad mini のWi-Fiモデルが発売され、筆者もさっそく手に入れた。噂されたRetinaディスプレイにはならず、サイズがこれまでの9.7インチから7.9インチになっただけだという意見も聞かれたが、実際に使ってみるとまったく別物だということに気づかされる。とにかく軽く(308g)て持ちやすく、片手で長時間持っていても疲れないのだ。
また、画面サイズが小さくなったことで見やすさが損なわれるといったこともなく、まったく快適。筆者はiPad 2も持っているが、iPad mini 購入後はiPad 2 をまったく使わなくなってしまった。実際に触ってみていただけば、見た目の印象以上に欲しくなる製品だと分かるかと思う。
一見サイズが小さくなっただけのように感じるiPad miniだが、ただ単に液晶のサイズが小さくなっただけでなく、左右のベゼル(枠)の幅をかなり小さくしている。技術的にかなり大変だったと思うが、ベゼルを小さくしたことで、片手で掴めるほどの大きさに仕上げられており、とても持ちやすいサイズとなっている。
しかし、ベゼルを小さくすると片手で持った時に指が画面に触れてしまい、通常の製品であれば、誤った操作をしてしまうといった問題が起きる。しかしアップルは、ユーザーの指の動きを観察して、それが本体をつかんだ際に指が画面に触れてしまっただけなのか、それとも操作しようとしてタッチしたのかを認識する技術を開発して、盛り込んでいるそうだ。これにより、ベゼルをできるだけ小さくしつつ、持ちやすさも損なわないつくりになっている。ちなみにベゼルのサイズは、iPadが18mm、iPad mini が6mmとなっている。
また、画面解像度は1024 × 768ドットで、9.7インチのiPad と同じ4:3 となっている。これにより、iPad 2で動くアプリもきちんと動作する。縦長のタブレット端末と比べると分かりやすいが、特に電子書籍を読む場合には、この比率が非常に最適だと感じさせられる。持ちやすさ、見やすさや、操作のしやすさなど、非常に快適に使用できるのがiPad mini といえる。現在、外出時には常に持ち歩くツールと なってしまった。
Kindle Paperwhite 3Gが届き、さっそく開封して電源を入れたのだが、そのスタートアップの簡単さにはびっくりさせられた。購入時の筆者のアカウントがあらかじめ設定されており、実際に使い始めるまでに登録したのは、Wi-Fi に繋ぐためのパスワードだけだった。kobo Touchを購入した時と違い、驚くほど簡単に使い始めることができた。これならば、パソコン操作に疎いお年寄りでもすぐに使えそうだ。
また、E-inkを使用しているため文字もとても読みやすいが、内蔵ライトを備えているのも大きな特徴だ。通常、電子ペーパーの端末は、暗いところでは読むことができない。しかし、内蔵ライトのおかげで暗いところでも読書できる。ベッドの暗い明かりで読書なんてことも可能だ。太陽の下でも、また暗いところでも読書できるのはありがたい。もちろん明るさの調整も可能となっており、バッテリーの持ちもよ い。iPadなどのタブレット端末とは異なり、「ライトをつけても8週間使える超長寿命バッテリー」とのことだ。ちなみにフォントは、明朝とゴシックの2種類が選択可能。
現在、筆者は読書中心ならKindle Paperwhite、Web やメール、その他の作業中心ならiPad mini を持ち歩いている。もちろん、2 台持ち歩くこともあるが、どちらの端末も今の自分にとってなくてはならない物になりつつある。残念ながら、以前購入したkobo Touch はまったくといっていいほど、使わなくなってしまった。やはり、端末の持ちやすさや、使いやすさといった要素は非常に重要であると感じさせられる。
筆者は、iPad mini とKindle Paperwhite の両方を使用しているわけだが、読書という行為を考えた場合、端末自体の使いやすさもさることながら、購入から読書までのスムーズな体験がもっとも重要だと思う。
Amazonで購入したコンテンツは無料でクラウドに保存され、何度でもダウンロード可能となる。kindleの端末だけでなく、iOSやAndroid 搭載のタブレットやスマートフォンにkindleアプリをインストールしておけば、どの端末でも購入したコンテンツを読むことができる。
さらに、いずれかの端末で途中まで読んだ書籍は、その続きを別の端末で読むこともできる。購入したコンテンツは、それぞれの端末をPC に繋いでコピーしておく必要もない。ネットに繋がる環境でkindleを立ち上げたり、kindleアプリを起動すれば、自動的にダウンロードされるというわけだ。
一度、体験していただくと分かるが、このシステムは非常に快適だ。もちろん端末の使いやすさも重要だが、ストア自体の利便性がもっとも重要だということが分かるだろう。Amazonで電子書籍を購入したからといってkindleを購入する必要もないのだ。既に持っている、タブレットやスマートフォンで読むことができる。
(JAGAT info 2013年1月号より 一部抜粋。※記載情報は誌面掲載当時のものです。)
森 裕司[もり・ゆうじ]
名古屋で活動するフリーランスのデザイナー。
ウェブサイト「InDesignの勉強部屋」(http://study-room.info/id/ )や、名古屋で活動するDTP 関連のデザイナーやオペレーターなどを対象にスキルアップや交流を目的とした勉強会・懇親会を行う「DTPの勉強部屋」を主催。DTP やInDesign に関する著書も多数。アドビの『AdobeInDesign CS4 入門ガイドBack to Basic』の執筆も担当している。