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LINEは、スマートフォンの通信機能を利用して無料通話やメッセージ送信ができるアプリだ。ユーザー同士であれば、異なるキャリアであっても通話料が掛からずに通話やチャットができる。
ガラケー離れが進み始めた2011年6月に登場し、スマートフォンに特化した操作性や絵文字の進化版ともいえるスタンプの人気から若い女性を中心に利用者が急増、リリース後わずか1年あまりで登録ユーザー数が4000万人を突破した。その後も日本を中心にアジア地域、スペイン語圏などでユーザー数を伸ばし、2013年5月には世界で1億5000万人、国内で4500万人以上となった。
国内で大手ソーシャルメディアのmixiやFacebookをはるかに凌ぐユーザーを獲得したことで、LINEは単なる無料通話サービス以上の役割を果たすようになった。2012年6月から開始した企業公式アカウントは、ユーザーに対して限定情報やクーポンを配信することができるため、企業にとって魅力的なプロモーションインフラとなっている。
牛丼チェーンの「すき家」を運営するゼンショーでは、公式アカウントから新メニューやトッピングのクーポン券を配信するサービスを開始し、2 カ月余りで100 万人の「友だち」(公式アカウントを自身の友だちとして追加したユーザー)を獲得した。日清食品ではチキンラーメンのキャラクター「ひよこちゃん」の無料スタンプを配布し効果をあげている。ほかANA(全日空)や首相官邸、最近ではネット選挙解禁を受け政党でも公式アカウントを開設しており、若い世代をターゲットとする企業だけではなく、幅広く企業に認知・活用されている。
2012年12月からは、新たにLINE @(ラインアット)という小規模店舗向けのO2Oサービスも開始した。
地域の店舗が友だち登録してもらったユーザー向けにメッセージやクーポン、セール情報などを直接配信できるサービスだ。公式アカウントよりも格段に安価なコストで利用できることに加えてプッシュ通知で情報を届けることができることから、地域における新たな集客手段として期待されている。
LINE@の最大の特徴は、リアル店舗への集客に限定している点だ。ネット通販など実店舗を持たないオンライン事業者は利用できない。またLINE@のメッセージから直接会員登録やカートがついたWebページへのリンクを張ることもできない。
利用店舗は、クーポンやオススメの情報を友だちに配信し、誘客する。メールマガジンと内容は近いが、コミュニケーション時間の多くを占め、企業からのメッセージ開封率も高いLINEを利用することにより、リアルタイムでのプロモーション効果が期待できる。あるレコード店では、Twitterでのクーポン配布告知や登録用のQRコードを印刷したポスター・POPと組み合わせてLINE@を活用することで、非常に高い販促効果を得た。
弱い部分もある。店舗のLINE@アカウントを自力で告知する必要がある。アカウントを掲載する公式サイトもあるが、ユーザーがわざわざ店舗名から検索することは少ないだろう。そもそも名前を知らない店舗のアカウントを見つけてもらうことは難しい。実際に店舗を訪れたときに直接QRコードから登録することが多いようである。
レジ横にPOPを置く、レシート裏に告知を印刷する、店舗の目立つ場所にステッカーを貼る、チラシを配るなど、リアルな場所で販促物が必要になる。ある飲食店では「いま登録すれば1割引します!」と書かれたQRコードを首から下げて接客し、登録を促していた。友だち登録者を増やすためには印刷物が欠かせない。オンラインとオフラインをうまく組み合わせた販促ができる印刷会社は強い。
(JAGAT 研究調査部 中狭亜矢)
LINE@のO2O、東急ハンズのソーシャルメディア活用事例
クロスメディア時代の販促手法