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昨年末の政権交代からの劇的な経営環境の変化を好機と捉え、多くの日本企業が成長戦略への道を走り始めている。3月期の久方ぶりの好決算を見極めて、今期の事業計画から目標設定に強気でチャレンジングな姿勢で臨む組織が目立って増えてきた。
今期の事業計画・戦略・目標設定場面の風景はかなり異なってきて、ズバリ言うと「ポジティブな雰囲気」に変わってきている。海外投資家などからの日本経済への「期待感」と同様に、顧客・市場・株主・社員などからの「久々の期待感」が目に見えるようになってきた。特に最近の経営人事コンサルティング現場で感じることは、経営トップ層だけでなく、部門長・部長・課長などのミドル層にも笑顔や明るさ、そして何となく、やればできそうだ、面白くなりそうだ、という自信や期待が蘇りつつあるように皮膚感覚で感じられる。
始めは反発、期末に感謝、3年後にはハグされる目標管理の定着を!
今年の3、4、5月の3カ月は例年以上に目標設定のコンサルティング、研修、目標管理シート類の添削指導などで忙しかった。その過程で見えてきた最近の目標設定場面の特徴と課題を先行企業の事例を参考にして考え、整理してみよう。
最近の「100%目標達成の目標管理コンサルティング」の肝になるところは、制度設計の過程よりも四半期ごとの部門長・管理職に対してのワークショップの場面である。1年間に目標設定場面、実行過程の進捗管理場面(2回)、目標達成評価場面、の計4回ほど、各社の一騎当千のミドルたちとワイガヤ方式でかなり突っ込んだ真剣勝負での立会いが多くなる。この方式で粘り強く指導を継続していくと、各社の部門長・管理職のマネジメントレベルは数段向上し、遅れてスピード感にバラツキが出るものの部門業績も上がってくる。このバラツキがくせ者なのだが、私は今までの多くの体験を通じて、「始めは反発、期末に感謝、3年後にはハグされる!」という原則を信じて経営人事コンサルティングに臨んでいる。
初年度の初めはとにかく今までの古い目標管理のイメージが残っていて、反発や異論・反論、不信などを避けては通れない。むしろこれらの傾向や悩みなどに真摯に対応していくことが大切で、期末になれば成果に結び付き、感謝されるのである。そして3年間程継続すれば、ミドルそれぞれの個性や事業の特性にも詳しくなり、社内とは異なった視点からの助言・アドバイスは極めて貴重になり、まさにハグされる関係にまで深まっていくケースが多い。それだけに事務局とコンサルタントは抑えたり、怯んだり、困惑しないで、お互いに連携しながら、「むしろ、経営やマネジメントの成熟化への絶好の好機」と捉えて対応することが重要である。
チャレンジングな目標設定にはビジョン・戦略・目標の順にシナリオを描け!
「100%目標達成の目標管理コンサルティング」では、期初に必ずストレッチングな目標設定の場づくりが不可欠になるが、この際にいきなり今期の部門目標や管理者目標を考えるのではなく、まず部門としてのミッション(果たすべき使命)、ビジョン(こう在りたいという夢・理想の姿・構想)、戦略(保有している資源やノウハウ・ナレッジなどの整理と配分の作戦ストーリー)の順にじっくりと考えて整理し、メンバーに伝わりやすいように工夫して、シンプルにまとめ、熱く語れ!と強調している。
5月上旬にユニフォーム専門のアパレルメーカー・株式会社トンボ(本社岡山・売上高242億円)で課長層、約50名が全国から結集し、「100%目標達成のマネジメント研修」が2日間開かれた。プログラムは25名ずつ、来期のチャレンジングな目標設定について、参加者全員の体験や知恵を集め、悩みや乗り越えるべき課題解決に向けて、講義を挟みながら現在の課長としてのマネジメントの実践度点検、次期目標設定(部門と個人)の演習を中心に、相互学習・グループ研究・発表とフィードバックなどで熱い討議が繰り広げられた。
「事業成長型目標管理」では「現状維持型のダメな計画、甘い計画」をトコトン指導する
同社は創業明治9年(1876年)で来期は105期、3年後には140周年を迎える歴史と実績を誇る老舗製造業でありながら、平成時代からは介護ウエアの企画・製造・販売に新市場を求め、時代の流れを敏感に捉える経営でリーマンショック後もたくましい事業成長を続けてきた。
中期3カ年経営計画の初年度になる来期の経営指針は「ファーストコールカンパニーの実現」とし、事業戦略の強化から新組織体制などが発表され、指針キーワードには“トンボイノベーション”が強調された。
このような背景で経営陣からは、今回の課長目標設定研修では、来期のビジョン・戦略・目標設定に指針キーワードの「イノベーション=改革」をどう捉え、現場感覚を盛り込むのかに、高い期待が示されていた。
ミドル層は仕事経験や業界経験が豊富なだけに、今までの固定化した考え方から抜け出せず、イノベーションには向かない、弱い、とよく言われてしまう。だから企業や業界でイノベータ―(革新者)になれるのはこうした経験が少ない「若手社員、女性社員」が多い。従って課長の重要な役割は、部下・メンバーなどを今以上に「認めて褒める」「期待する」「眠っている力量を発揮させて仕事を任せる」ことだ、とあらゆる機会に強調している。
この研修の場面でも、部門のビジョン・戦略・目標の発表とフィードバックで、現状維持に近いものには私だけではなく、他部門や同僚からも厳しい指摘が飛び交った。
今回は全社的課題である「攻めのマーケティング課題」「守りの在庫問題」「多様性マネジメントへの女性活用」―ともに長年に渡る難題であるだけに、そう簡単にイノベーション=改革に結び付くものではないこともあり、重苦しい雰囲気に包まれることもあったものの、ある課長の発表・発言を契機にして雰囲気が随分と変わっていった。
変革は常に辺境からやってくる…トンボのエプロンショップ事業が示唆してくれるもの
新市場で業績を伸ばしている女性課長がヘルスケア事業の発表で、孤軍奮闘しながらネットショッピング事業に全力投球している若き女性社員の事例(エプロンショップ事業)を紹介してくれた。それは今回の全社的課題の「攻めのマーケティング=O to Oマーケティング」の典型的な事例であり、既存の枠組みから一歩外に出て、新しいイノベーションにつながる可能性を示唆してくれるように、進行役である私には感じられた。だが残念なことに参加者の全国の課長で、このエプロンショップについてのサイト内容、業績推移、担当者の孤軍奮闘ぶりなどを詳しく知っている人は少なかった。こういうミドル層が多いのが今の日本企業の実態、弱みであり、今後の伸び代ではなかろうか?
この後、ワークショップではさまざまな「イノベーションへのヒント、閃き」が出てくるのだが、ミドルの目標設定の具体的方法とともに次回に報告しよう。
現代マネジメント研究会 小松勝
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小松 勝 株式会社エムデーシー取締役
(現代マネジメント研究会 経営人事エキスパートコンサルタント) 都市銀行から信用金庫に至る金融機関、製造業全般、百貨店・専門店などの小売業から出版社、病院、私立大学、生協関係、広告代理業とあらゆる業種・業態の人事考課制度から賃金制度、目標管理制度を中心とする企業改革、個人のキャリア開発の支援に従事。 ◆主な著書:『日本型経営システムの構造転換』(中央大学出版部)、『担当者が独力でできるこれからの賃金・人事考課・退職金制度』(政経研究所)『業種別・職種別人事考課表実例集』(日本法令)など。 |
■関連情報
JAGATでは、小松勝氏を講師として招聘し、業績向上の好機に恵まれている印刷企業に、今までの人事手法型による目標管理から競争力強化に直結する経営手法型目標管理へのモデルチェンジとその活用の方法・具体的なノウハウの実践的な指導を目的とした下記講座を開催いたします。
印刷業のための競争力強化セミナー
「先行企業から学ぶ100%目標達成の目標管理の進め方」
2013年8月20日(火) 10:00~17:00