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クロスメディア考現学 (3)イーシングルでクロスメディア読書を

掲載日: 2013年06月25日

「クロスメディア」というキーワードから想起されるビジネスやサービスの「現在(いま)」を毎月再考していく。

 

クロスメディア考現学(3)
イーシングルでクロスメディア読書を


通勤時に電車の中で新聞や雑誌、書籍などの紙媒体を読んでいる乗客の数よりもスマートフォンやタブレットの画面に目を通している乗客が多くなっているように感じています。

紙媒体でもデジタルメディアでも通勤時間という隙間の移動時間に人びとは何を読み、どんな情報を摂取しているのでしょうか。

まだ発展途上の電子書籍において私が注目しているのは、短時間で安価に読むことができる「イーシングル」です。電子書籍の先進国のアメリカでは、イーシングルはポピュラーな存在となっています。

アマゾンでは「キンドル・シングルズ」、アップルでは「クイック・リード」、バーンズ・アンド・ノーブルでは「スナップス(短編)」としてサービスを展開しており、大きな市場を形成しています。

電子書籍というと紙の書籍を分量もそのままで一冊分電子化するのがまだ主流のようだが、一冊分の紙の書籍のコンテンツを分割し、安価な値付けで販売することも電子書籍では容易にできてしまいます。

アメリカには、書籍や雑誌をスライス(分割)し、リミックスを代行し、新たなコンテンツとして提供するslicebooks.com(https://slicebooks.com/ )というベンチャー企業まで存在しています。

日本でもこのようなイーシングルのサービスが続々とスタートし始めました。「朝日新聞デジタルSELECT」は、「長すぎない、短すぎない すきま時間に読めるマイクロコンテンツ」として朝日新聞や週刊朝日、AERAなどの特集記事が電子書籍サイトから購入できます。

また、「週刊ダイヤモンド特集BOOKS」は週刊ダイヤモンド誌で過去、人気を博した特集やレポートを電子書籍化したものです。週刊ダイヤモンドの特集はいつも読み応えがあるものが多いですが、紙の週刊誌では基本的に一週間しか書店に置かれません。

電子化されることによって再びコンテンツが読者の目に触れることとなります。
ビジネス誌では「週刊東洋経済eビジネス新書」もサービスを開始しています。ライバル社同士がサービスをはじめることでイーシングルという市場自体が形成していけると、各社とも他社の参入に歓迎のようです。

朝日新聞やダイヤモンド社が既存の紙媒体の電子化による再販売であるのに対して、角川グループのブックウォーカーによる「カドカワ・ミニッツブック」は電子書籍オリジナルのグループ横断レーベルであり、30分前後で読み切れる分量コンテンツをラインナップしたものです。

こうしたイーシングル、マイクロコンテンツが読書習慣の中に浸透していくと、読み手側は時間を有効に使え、紙の書籍、雑誌も含めた豊かな読書体験が実現します。

さらに書き手、作り手からすると自分たちが作ったコンテンツがより多くの人びとに読んでもらえる機会を得ることができます。クロスメディアに読書を楽しめば、読み手にとっても書き手にとっても理想的な読書空間が構築できると確信しています。(次回は7/12です)

参考
Kindleストア:マイクロコンテンツ特集
http://www.amazon.co.jp/gp/feature.html?ie=UTF8&docId=3077708726

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一般社団法人 電子出版制作・流通協議会
池田 敬二

1994年東京都立大学人文学部卒業後、大日本印刷に入社。入社以来、出版印刷の営業、企画部門を歴任。2010年より一般社団法人 電子出版制作・流通協議会 事務局に勤務。趣味は弾き語り(Gibson J-45)と空手。JAGAT認証クロスメディアエキスパート。日本電子出版協会クロスメディア研究委員会委員長。JPM認証プロモーショナルマーケター。
Twitter : @spring41
Facebook : https://www.facebook.com/keiji.ikeda


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