本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。
ギャンギングはアナログ印刷の救世主だが、デジタル印刷はWeb to Printをフル活用すれば小ロットの仕事を束ねて中ロットの仕事にすることが出来る。これこそ、時間的ギャンギングである。
■研文社は新工場(本社工場移転&新築)のオープンと共にオンデマンド工場というコンセプトを打ち出した。アナログ印刷機をすべてハイブリッドUV機にし、乾燥の問題(パウダレス&乾燥時間ゼロ)から切り離すことで、ポストプレス機をワンフロアに、それもすぐ隣に置くことでワンストップサービス&オンデマンドサービスを実現しようとするものだ。
またデジタル印刷機も同様に、ワンフロアにハイブリッドUV機、デジタル印刷機、ポストプレス機を置くことでオンデマンドブックビジネスに対処している。
■研文社のオンデマンドブック戦略の大きな柱になっているのが、電通オンデマンドグラフィックが中心となって推進しているPPO(Promotion Process Outsoucing) である。研文社は、PPOの製造一拠点として重要な役割を果たしている。
PPOは単なる仕事の外注先の組合という事ではなく、Web to Printシステムやロジスティックシステムを共有することで、有機的にビジネスメリットを上げていくというグループである。PPOについて詳細に説明していては、かえって分からなくなってしまうので、研文社に関係しているPPO事例を解説しながら、実態を説明していきたい。
まず、研文社が関係しているPPO案件の筆頭が「日本ケアサプライ(福祉用具レンタル及び販売)」が取り扱っている福祉用具カタログである。全国に日本ケアサプライの商品を扱う福祉関連業者が何百といるわけで、それぞれで値段設定が異なるなど、典型的な多品種小ロット印刷物である。
■ここでポイントになってくるのが、PPOで使用されるDOP(Dentsu Ondemand Platform)と呼ばれるWeb発注システムだ。
いわゆるWeb to Printシステムなのだが、ベースデザインや値付けの基本デザインは電通側(PPO側)が責任を持って作りこむ。その先の個別デザインに関しては、日本ケアサプライが責任を持ってデザインするという仕組みになっている。
日本語Web to Printシステムというと、縦組みとか組版機能ばかりが語られるが、大事なのは「責任所在の明確化」や「基本デザインの完成度」にあるのかもしれない。
DOPを使うことで最少発注ロットを50部にしても何とかなるということなのだが、実際PPOの“最少発注ロットは50部から”ということになっている。印刷通販が市民権を得て以降、アナログ印刷でも100部が発注単位として定着してしまったため、デジタル印刷では、それを何としても下回らないといけないのだろう。
アナログ印刷の場合はギャンギングすることでコストをドラスティックに落とせるので、100部のロットを実現できたのだが、デジタル印刷の場合はWeb to Printを活用することで、効率を上げることが出来るのだ。
分かり易く言うと、可変印刷・バリアブル印刷が可能なデジタル印刷で問題になるのは、PPOの仕事を50部、そのすぐ後にまとまったマニュアルの仕事を2,000部、そしてPPO150部、・・・というように、ごった煮的に仕事が入ると効率がガクンと落ちてしまうのだ。
同じ50部でもまとまって100事業所分の仕事が入れば、PPO向けに製作ラインをまとまった時間当てられて効率がグンとアップする。これはデジタルもアナログも同じことで、DOPを使うことで印刷通販的に浅く広く集めることも可能で結果的に3,000部くらいの仕事量として製作していくことが出来る。PPOに充当する時間が確定すれば、あとはバリアブルでもOne to oneでも、何でもゴザレがデジタル印刷のメリットである。
DOPでこの仕事を始めた時には対象事業社数が100社を切る数だったのが150社、250社と増え、現在では400社、600社を狙えるところにいるらしい。
印刷のシステム構築というとコストを絞ることばかりに目が行ってしまうが、このようにPPOが日本ケアサプライの取り扱い事業社数アップに繋がるというのはPPOの効果といえる。社数が倍になったとはいえ、売上数字が倍になる訳ではないが、売上額がアップすることは確かだ。
■ネットで構築されたPPOの生産拠点である研文社として、生産物の品質が一定以上であることは言うまでもないが、絶対にやらなくてはいけないことは、各事業所に納品日に確実に最終生成物を届けることである。この命題に取り組むために、研文社ではオンデマンド部という新部署を立ち上げ、入稿からロジスティック部分まで一部門で責任を任せたのである。
この一年間ハイブリッド印刷でカタログをやってきたのだが、一回もミスなくやって来られたのは、ワンストップでオンデマンド部が全責任を持つ生産システムが、功を奏したといえる。
クレジットカード関係の仕事を長年手がけてきた研文社の面目躍如というところである。
こんなことを説明しだすとスペースがいくらあっても足りなくなってしまうが、ページ節約のため最後にポイントを箇条書きにしたいと思う。
しかし、問題なく仕事をこなしていくには「紙の問題」や「ポストプレスの問題」「組織の問題」、特に「配送の問題」等々大きな問題や細かな問題が山積みであった。問題解決にはやはり苦労はつきものなのである。
この辺のことを発注者や代理店、印刷会社、機械メーカー、材料メーカーを集結してセミナーを実施する。
2013年8月30日(金)14:00-17:30の予定で「オンデマンドカタログを可能にするPPO -多品種小ロットの福祉用具カタログの受発注・印刷・発送ソリューション- 」を開催する。
大小関係なく全ての印刷会社、メーカーやベンダーの方にとって貴重な話だと確信しているので、ぜひご参加いただきたい。
(JAGAT 研究調査部長 郡司秀明)