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顧客から指名され、相談される会社になるためには、顧客とのコミュニケーションをより深めていく必要がある。しかし、そのためには「互いに共通認識できることば」をもっていることが前提になる。
コミュニケーションに共通言語が不可欠なのは当たり前ではあるが、ここで言っている“共通言語”とは日本語、英語といったLanguageのことではなく、専門用語、業界用語、あるいはもっと狭い範囲で使われる符牒などの、言わば“その世界で共通認識できることば”のことである。
たとえば「CMS(シーエムエス)」と聞いた時、同じ言葉であってもおそらく印刷業界では最初にColor Management Systemを思い浮かべるであろうが、IT業界やむしろ一般的にはContents Management Systemと捉えるはずである。印刷人が普通に使っている「ゲラ」「網点」「オフ輪」・・・といった言葉も、一般の人には理解し難いであろう。
また、「クロスメディア」といった必ずしも意味が定まっておらず、様々な解釈が可能な言葉が発せられた時に、ほぼ同様の概念で共有できているかという問題である。
もし、ことばの意味がわからなかったり、お互いが違った意味で捉えて使っていたら、そもそもコミュニケーションが成立しない、あるいは深まらないということである。
我々は国語という日常的に相通ずる言葉だけでなく、こうした共通言語を持つことによりコンセンサスを得て、互いの障壁を取り払い、よりスムースに、スピーディーにコミュニケーションが図れる局面が多々ある。それは意識せずともそのように対応している場合もあり、究極の姿が「阿吽の呼吸」や「暗黙の了解」であったりするのかもしれない。曖昧ではあるが、なんとなく言っていることはわかる気がするということもあるであろう。
しかし、グローバル化、多メディア化、パートナーシップ、コラボレーションといった今日の時代背景、キーワードを思い浮かべると、特にビジネスで深くコミュニケーションしていくためには、かなり自覚的に共通言語を学び、使いこなしていく必要性を感じている。
例えば、何かの資格を取得しようとすることは、その世界、業界、専門分野の共通言語を学ぶ一つの有効な手段であるといえる。JAGATのDTPエキスパートも“DTPでよい印刷物を作る”ために必要な知識をまとめた“共通認識としてのカリキュラム”の啓蒙が主たる目的である。そのため当初はメーカー・ディーラー系の人が、印刷業界とコミュニケーションをとってものを売るために効率的に業界を学ぶ手段として大勢取得した。
また、業界未経験でビジネススクールで学ぶ人が、資格試験の勉強をすることで、ビジネスキャリアのスタート時点で業界用語などのひと通りの知識をマスターできていたという側面は、その後プロフェッショナルへと成長していくために大きな財産となった
近年、印刷会社にとってもマーケティングの必要性が叫ばれているが、マーケティングはある種学問的に確立された分野でもあり、マーケティング用語という共通言語を学び、実践するということは顧客と同じ認識に立つということに他ならないのである。
共通言語、すなわちことばがわからないとビジネスの上でも同じ土俵に立てない。
とある大きなイベント開催に向けたプロジェクトに各業界から人が集められ、丁々発止の議論が戦わせられ、各々が提案を持ち寄ったが、そのプロジェクトに参画した印刷会社の営業が発した唯一の言葉は、「では早速お見積をお持ちしましょう」であったという笑えない話がある。もし、そのことしか言葉が発せられないのであれば、結局価格競争に陥るしかないであろう。
今、印刷会社は過去のビジネスモデルから、新たな領域に打って出ようとしている。JAGATでもこの間様々な場を通じて印刷会社の進むべき方向性として、商業印刷においてはコミュニケーション支援企業へと事業ドメインを再定義することを提唱してきたが、多くの経営者がお客に呼ばれないと営業が動けない、という点を課題に挙げる。
待っているのではなく、顧客の課題解決に向けた提案活動を通じて指名される、すなわち相談される営業マンの育成が急務である。そのためには外に出てクライアントの懐に飛び込み、クライアントのビジネスの世界を学び、共通言語を用いてコミュニケーションしていくことが必要不可欠となった。
印刷物を収めた先に、クライアントは何を見ているのか、何を求めているのか、まずはそこに興味をもつことがスタートであろう。
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